"賜る"の意味/使い方。例文&類語"承る"との違いとは【ビジネス敬語ガイド】
「賜る」の意味とは?
「賜る」とは、「もらう」「与える」の謙譲語表現で、いただくよりも丁寧な敬語になります。日常会話だけではなく、ビジネスシーンや結婚披露宴のスピーチなどかしこまったシチュエーションでもしようされています。
「賜る」は、敬語の中でも謙譲語に属し、上司や目上の人にも使用できます。
使い方はさまざまで、「目上の人が何かを与えてくれた際のお礼」としてや「自分が目上の人に言葉を頂戴したい、指導してほしいことを伝える表現」などが挙げられます。
─「賜る」の読み方とは?─
「贈る」は、「たまわ・る」と読みます。「たま・わる」と間違えやすいので、送り仮名の付け方に注意しましょう。謙譲語として使用されることが多い表現ですが、尊敬語としても使用でき、どちらの場合でも読み方は同じです。
「賜る」の正しい使い方とは?
「賜る」という言葉は、対面やメール、文書などビジネスシーンで良く使われている敬語です。
「賜る」には、「もらう」「与える」といった意味が込められているので、「言葉を賜りたいと存じます」「記念品を賜りました」という風な使い方ができます。「賜る」や「賜ります」という言葉は、とても丁寧な表現方法です。
しかし、その一方で堅苦しい印象もあるため、親しい間柄の上司や同僚に使うと、かえって嫌みのようにとらえられてしまったり、失礼にあたる場合もあるので注意が必要です。使い方だけではなく、使い過ぎも過剰な敬語使用とみられる可能性があります。
「賜る」を使った敬語一覧
「賜る」がビジネス文書に使われる時は、以下4つのフレーズになって使用されるケースが一般的になります。
- 賜る。
- 賜りました。
- 賜りたく、
- 賜りまして、
どのフレーズも賜るの使い方を知る上で大切な例文になるため、必ず覚えておきましょう。
賜るの使い方①「賜る。」を使った例文
- ご愛顧を賜る。
- ご指導とお力添えを賜る。
- 先生のご意見を賜る。
- 陛下が受章者にお言葉を賜る。
「賜る」は、もらうの謙譲語で、厚意や物に対して使用します。例文にあるように、上司や先生など目上の人からの意見や指導をもらうことに対して使用できる丁寧な表現方法です。
その他にも、「ひいきすること」や「目をかけて引き立てること」を意味する「ご愛顧」を使って、「ご愛顧を賜る」という使い方ができます。この例文は、ビジネスシーンでも顧客や取引先など目上の人に対して、よく使用される言葉ですので正しい使い方を覚えておきましょう。
【「例文」で使われている敬語】
・「お力添え」の正しい使い方|類語"ご尽力"との違いとは?
賜るの使い方②「賜りました。」を使った例文
- 定年祝いとして社長より記念品を賜りました。
- ありがたい話を賜りました。
- 〇〇様よりご紹介賜りました。
- 感謝状を賜りました。
ビジネスで使用することが多い「賜りました。」という敬語は、「賜る」と同様に謙譲語になります。
謙譲語は、自分を下にして相手に敬意を示す表現方法なので、自分の動作に対してのみ使用できます。
他人に対して使用すると、相手を下にみなすことになり、失礼になってしまうため、目上の人に対して使う場合は注意が必要です。
使い方は、「ご紹介」や「感謝状」、「お言葉」「お話」などと組み合わせて、丁寧なフレーズを作ります。例文を参考にして、使い方を練習してみましょう。
賜るの使い方③「賜りたく、」を使った例文
- 何とぞご協力を賜りたく、折り入ってお願い申しあげます。
- 今後ともいっそうのこ高配を賜りたく、重ねてお願い申し上げます。
- 〇〇の件について、ぜひ貴殿よりご意見賜りたく存じます。
- 今後も、ご指導ご鞭撻を賜りたく願っております。
ビジネス文書やメールなどで目にする「賜りたく、」という敬語は、相手に何かをお願いしたいときに使用します。
「ご高配」や「ご協力」、「ご意見」、「ご指導」などと組み合わせて使われることが多いようです。
「賜りたく、」を使うことで、自然に他の文章とつなげることができます。目上の人や上司に対して丁寧にお願いや頼みごとをしたいときには「賜りたく、」を使い、「願い申し上げます」や「存じます」「願っております」と組み合わせましょう。
【「例文」で使われている敬語】
・「ご高配」の意味とは?正しい使い方を例文付きで解説します
・「お願い申し上げます」の使い方|目上の人に使える丁寧な例文をまとめました
賜るの使い方④「賜りまして、」を使った例文
- ご光臨を賜りまして、誠にありがとうございます。
- 先日は誠に結構なお品をご恵贈賜りまして、心より感謝申し上げます
- 本日はご出席を賜りまして、誠にありがとうございます。
- 早々にご丁寧な賀状を賜りまして、誠にありがとうございます。
ビジネスシーンで良く目にする「賜りまして、」は、相手が何かをしてくれたときにお礼の言葉として使用されます。
「ご光臨たまわりまして、誠にありがとうございました。」や「ご出席を賜りまして、誠にありがとうございました。」という例文は、上司や目上の人が結婚式や祝典などに出席してくれた際、お礼の言葉として使うことができます。
目上の人から何かを与えてもらった、品物を受け取った際の感謝の言葉としては、「ご恵贈」を使います。
「賜る」と「承る」の違いとは?
─「賜る」の類語として、「承る」という敬語があります。
「承る」は、対面だけではなく、文書やメール、伝言、注文などにも使用できる敬語で、幅広いビジネスシーンに使われます。どちらもビジネスシーンでよく使用されている敬語なので、違いを把握し、使い方をしっかりとマスターしておきましょう。
「賜る」は、「もらう」や「与える」といった意味合いがあり、目上の人から物をもらうときや何かをお願いするときなどに使用されます。一方、「承る」は、「引き受ける」や「了解する」という意味があり、「伝言」や「注文」を受けるときなどに使えます。「承る」は、厚意や助言などに対して使うのが一般的で、品物には使用しないので注意しましょう。
「承る」を使った例文
- そのようなご注文は当社の規定に反するため、承ることはできません。
- ご注文承りました。早速、発送いたしますので、商品到着までしばらくお待ちください。
- あいにく〇〇はただいま外出しております。よろしければ伝言を承ります。
【参考記事】「承る」の使い方を分かりやすく解説します▽
「賜る」と言い換えできる類語一覧
「賜る」は、「もらう」「与える」の意味を持ち、類語となる敬語表現も存在します。
ここからは、「賜る」と言い換えできる類語を4つご紹介します。
- いただく
- 拝受する
- 授かる
- 頂戴する
各類語の使い方、賜るとの違いについて確認していきまそう。
賜るの類語① いただく
「賜る」の類語「いただく」は、「目上の人を敬って迎える」「あたまにのせる」という意味を持つほか、「賜る」と同じく「もらう」の謙譲語としても使用されます。
「いただく」がひらがな表記になっているのは、漢字の「頂く」とは意味が異なり、それぞれ別の意味があるからです。漢字の「頂く」は、「食べる」「飲む」「もらう」などの謙譲語として使用します。
一方、ひらがなの「いただく」は、「お届けいただく」「お休みさせていただく」など補助動詞として使用します。
「いただく」の使い方
- 昨日までにお届けいただくお約束でしたが、いまだに納品されておりません。
- けっこうな品を賜りありがとうございました。さっそく使わせていただくことにいたしました。
- 本日は、お休みさせていただきます。
【参考記事】「いただく」と「頂く」の使い分けまd解説▽
賜るの類語② 拝受する
「賜る」の類語として、「拝受する」という敬語があります。「拝受する」は、日常会話ではあまり使用することがなく、主にビジネスシーンで使われます。
「拝受」という言葉には、「受領する」という意味があり、品物やお金など、大切なものを受け取ることを表します。「拝受」は「賜る」と同様に、謙譲語の意味をもっているため、相手にへりくだって話す丁寧な表現方法です。
例文の「拝受いたしました」は、目上の人から書類が届いたかどうかの確認メールが届いた際に使用できます。
「拝受する」の使い方
- プロジェクトの資料、確かに拝受しました。確認の上、改めてご連絡いたします。
- 拝受します。(「書類を送付しました。」というメールの返信として)
- 拝受いたしました。(「ご査収ください」の返事として)
【参考記事】「拝受」の正しい使い方|例文付きで解説▽
賜るの類語③ 授かる
「授かる」は、お金では買えない大切なものを目上の人や神仏などから与えられることを意味します。
大切なものとは、「子ども」や「勲章」、「称号」など尊いものや苦労して手に入れた何かなどを指します。
使い方は、「子どもを授かる」「勲章を授かる」など。「授かる」は、主に子どもが出来たときに使用されることが多く、「子どもが出来た」というよりも「子どもを授かる」という表現のほうが丁寧なので、上司への報告などにもこちらを使用します。
「授かる」の使い方
- 県条例によって、〇〇(市名)の名誉市長の名誉称号を授かりました。
- 〇〇氏は、勇敢な行いで勲章を授かりました。
- 私事ですが、このたび新しい命を授かりました。上司にはまた改めて直接ご報告に伺いたいと思います。
賜るの類語④ 頂戴する
何か品物を受け取る際には、「賜る」の他にも「頂戴する」という表現方法があります。
「頂戴」という言葉は、資料や書類をもらうときや名刺交換などに使用することができるほか、気持ちや言葉をもらうときにも使用可能です。
「賜る」も「頂戴する」も「もらう」の謙譲語なので、同じ場面でも使用することができますが、「頂戴する」よりも「贈る」のほうが相手を敬うという意味合いが強く、より堅い場面でで使用されることが多いのが特徴的です。
「頂戴する」の使い方
- この度は、ご丁重なるお中元をお贈りいただきまして、誠にありがとうございました。
- ご丁寧に賀状を頂戴いたしまして厚くお礼申し上げます
- せっかくお申し出いただきましたが、お気持ちだけありがたく頂戴します。
「賜る」の英語表現
- Thank you very much for your continuous support.(毎度、格別のお引き立てを賜り、ありがとうございます。)
- Thank you very much for your continued support.(日頃はご高配を賜り、誠にありがとうございます。)
- I hope you will be able to attend.(ご来臨賜りますようお願い申し上げます。)
- I hope you will understand the purpose of this facility maintenance.(設備点検の趣旨をご理解賜りますようお願いいたします。)
- I'd like you to attend this event.(ぜひご参加賜りますようご案内申しあげます。)
- Thank you for your continuous support.(今後も変わらぬご愛顧を賜りますようお願い申し上げます。)
ビジネス英語で「賜る」を表す場合、シチュエーションによってそれぞれ表現の仕方が異なります。たとえば、イベントなどに参加してほしいという意味を込めたい場合、「I'd like you to attend this event」という表現ができます。
「〇〇をしてもらえたらありがたい」という気持ちを込めて表現する場合、「Thank you for~」が使われることが多いです。
「賜る」の正しい使い方をマスターしましょう!
ビジネスで多く使用されている「賜る」の使い方を紹介してきました。
「賜る」と間違えやすい敬語として「承る」がありますが、こちらは「伝言」や「注文」を受けたときなど、目上の人からの支持を了承した際に使用されることが多く、目上の人から品物や言葉をもらう意味を持つ「賜る」とは異なります。
伝言などに「賜る」と使うと不自然になるため、例文を参考にしながら、類語との違いやそれぞれの使い方をマスターしましょう。
【参考記事】「お詫び申し上げます」の正しい使い方を例文付きで解説▽
【参考記事】「ご返信」の意味/使い方|目上に使える丁寧な例文とは▽
【参考記事】「ご厚志」との意味とは?正しい使い方まで詳しく解説します▽
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