"頂く"の意味/使い方。例文&類語"戴く"との違い|ビジネス敬語ガイド
「頂く」の意味/読み方とは?
「頂く」とは、自分をへりくだって相手へ敬意を表す敬語として、「食べる・飲む」「もらう」の謙譲語の意味も持ちます。
また、「頂く」の「頂(いただき)」は、元々山などの高い部分を指す言葉で、「頂上」といえば、ある場所や物にとって一番高い位置を指します。
「頂く」は動詞として「何かを頭の上に乗せる」「何かを高くかかげる」、「(目上の立場にある方を)お迎えする」という意味でも使用可能です。
他にも、ビジネスシーン以外での使い方として、古語として「叱られる」という意味や、さほど苦労もなく手に入れることを指す場合もあります。
【頂くの使い方】目上に使える丁寧な例文一覧
ビジネスシーンで「頂く」を使用するタイミングは、目上の方と飲食を共にする時や、何かをもらう時に、「ありがとうございます、頂きます」のように謙譲語として使用します。
「食べる・飲む」の謙譲語としては、飲食を与えてくれる人へ敬意を払って「おいしい食事をたくさん頂きました」と言ったり、「もらう」と同じように自分が何かを食べる・飲むことをへりくだって、例文として「こちらの飲みものを頂いてもよろしいでしょうか?」のように使用します。
また、謙譲語としてではなく動詞として、自分より上の立場の方を迎える、という意味もあり、例文として「A社の元管理職の方を顧問として頂く」と使われる場合もあります。
「頂く」を使った例文一覧
- つきましては、打ち合わせの場を設けたいと存じますので、どこかで半日ほどお時間を頂くことは可能でしょうか。ご都合の良い日時をお知らせください。
- 課長から北海道出張のお土産を頂きましたので、皆さまにこれからお配りいたします。
- 先月の営業成績が良かったので、部長からお褒めの言葉を頂きました。
- この前息子に誕生日の贈り物を頂きありがとうございました。息子もとても喜んでおりました。
- 昨日は課長のお宅にお邪魔し、奥様が用意してくださった、おいしい昼食を頂きました。
- 「社長は宴会に1時間ほど遅れるそうで、先に始めていて欲しいそうです」「では、先に頂いていましょうか」
「頂く」と「戴く」の違いとは?
「頂く」は「戴く」と表記されることがあります。
「戴く」も、動詞としては「何かを持ち上げる」などの意味がありますが、「頂く」よりも重みのある、うやうやしさを込めて「何かを上に掲げる」といった意味となります。
また、「頂く」と同じように「食べる・飲む」または「もらう」の謙譲語として、敬語表現としての使い方もありますが、こちらも「頂く」よりも敬意や重みを気持ちに込めて、重要な物品や地位をありがたく受け取る、もらう場合に使われます。
しかし、「戴く」は常用漢字ではないため、ビジネスシーンを含め文書では「頂く」と表記されますので気を付けましょう。
「戴く」を使った例文
- 義父より先祖代々伝わる家宝の刀を戴いたので、今度は私が息子に渡すまで大切に保管しておこう
- 本社の管理職という、大変名誉な地位を戴いた
- まさか五つ星レストランの食事を戴ける機会があるなんで、夢のようです
- 人間国宝が作ったと言われる由緒あるお皿を戴いてしまいました
「頂く」と「いただく」の違いとは?
ビジネスシーンで使用する「いただく」は、動詞の連体形に接続して使用する補助動詞「~していただく」と使用しますが、この場合は漢字の「頂く」ではなくひらがなの「いただく」と表記します。
そのため、「頂く」と「いただく」で表記も使い分けできるようにしましょう。補助動詞としての「~していただく」を使うタイミングは、目上の方から恩恵や厚意ある行動を受け取った時です。
「お褒めいただき光栄です」や、自分がある動作をする前に、相手に対して許してもらいたい気持ちを伝えたい時「~させてもらう」の「もらう」の丁寧な言い換えとして使います。
例文として、「申し訳ありませんが、お休みさせていただきます」のように敬語として使用します。
「いただく」を使った例文
- もったいないお言葉です。お褒めいただき大変光栄に存じます。
- 明日は月末棚卸しのため、午前中のみの営業とさせていただきます。
- 本日は、お足元の悪い中弊社説明会にお越しいただき、ありがとうございます。
- いつも気にかけていただき、大変感謝しております。
「頂く」と言い換えできる類語一覧
頂くの類語① 賜る
「賜る(たまわる)」とは、類語として「頂く」と同じく「もらう」の謙譲語として使用しますが、「頂く」よりもより重みのあるうやうやしい表現です。
ビジネスシーンでは、よりフォーマルな場や、さらに目上の方から何かをもらう際に使用し、「頂く」よりも「戴く」に近い使い分けができます。
また、目上の方が目下の者に対して物を与えることを「下賜(かし)する」と言いますが、「下賜する」の尊敬語が「賜る」です。謙譲語、尊敬語両方の敬語の使い分けができるようにしましょう。
「賜る」の使い方
- ここでご来賓の皆様より、ご祝辞を賜りたいと存じます。
- 天皇陛下が今年の受賞者へお言葉とともに褒章を賜りました。
- この度は私どもにはもったいない、大変なお品を賜りまして、息子ともども感謝しております。
【参考記事】「賜る」の意味から正しい使い方までをまとめました▽
頂くの類語② 頂戴
「頂戴」は「頂く」と「戴く」両方の漢字を使用した類語です。ビジネスシーンでは、主に「食べる・飲む」「もらう」の謙譲語「頂戴する」として使われます。
また、ただ物を受け取った時だけでなく、賞状など、もらう物を高く掲げながら受け取る時の動詞として「頂戴する」という使い方をします。
ビジネスシーン以外では、幼児語などで物を催促する「~をください」の意味で「~を頂戴(ちょうだい)」と言ったり、動詞の連体形に接続する「~して頂戴」の形で、「~してほしい、~してください」という意味で使用することもあります。
「頂戴」の使い方
- 朝礼の際、全校生徒の前でインターハイ優勝のトロフィーを代表として頂戴しました。
- ご記入いただきありがとうございます、こちら頂戴します。
- とても行儀が悪いから、物を口の中に入れたままでしゃべるのは止めて頂戴。
頂くの類語③ 拝受
「拝受」は「拝む、つつしむ」と言う意味の「拝」を「受け取る」に付けて、つつしんで受け取ること、うやうやしく何かをもらうことを意味する「頂く」の類語です。
ビジネスシーンでは、「拝受する」の形で、自分より目上の人から何かを受け取る、もらう時に使用します。
「拝受します」のほか、「拝受いたします」という言い方がありますが、「拝受する」は自分をへりくだって相手に敬意を払う表現ですが、謙譲語ではなく謙譲表現の動詞です。
そのため、「拝受」+するの謙譲語「いたす」を付けて「拝受いたします」としても、二重敬語にはあたりません。
「拝受」の使い方
- ご返信を拝受いたしました。早めにご対応いただき、ありがとうございました。
- 本日、お送りいただいたお品物を拝受いたしました。
- 添付いただいた資料を確かに拝受いたしました。引き続きどうぞ宜しくお願いいたします。
【参考記事】「拝受」の使い方|言い換えできる類語から例文まで解説します▽
頂くの類語④ 授かる
「授かる」とは、神や仏、天など手が届かないくらいの存在から何かを受け取る時、または先生や師匠など師事している立場の人から、学位や技術を受け取ること、継承することを指す動詞です。
「頂く」と同じように、何かをもらう時に使用しますが、特定の状況でないと使用されない言葉ですので、ビジネスシーンで「授かる」の言葉を使う時は、必ず状況を確認して、ほかに適切な言葉がないか考えてから使うようにしましょう。
なお、自分が先生などの立場で生徒や弟子に学位や技術を与える場合は「授ける」になります。
「授かる」の使い方
- 調理場での修行の甲斐があって、料理長からついに秘伝のレシピを授かりました。
- 子供を授かっただけでとてもありがたいので、男の子でも女の子でもどちらでも構いません。
- 卒論が通って無事に卒業、学位を先生より授かりました。
頂くの類語⑤ 受領
「受領」とは、お金や物品を受け取ることです。ビジネスシーンでは、お金やメールを受け取った際に、相手に「受領いたしました」のように使用します。
他にも、お金を受け取った証明として渡す「受領書」や「受領印」などの使い方もします。
特に、お金のやり取りなどスピーディな対応が求められるビジネスシーンでは、「お受け取りいたしました」ではやや言い方が回りくどいため、「受領いたしました」を使用するとスマートな対応ができます。
ただし、「受領」の対象となるのは、お金やメール、書類など形のあるもののみです。相手の厚意や手助け、言葉など抽象的なものに対しては「受領」は使えないので注意しましょう。
「受領」の使い方
- 送別会のお金を入れた封筒と引き換えに受領書をお渡しします。
- 資料を添付したメールを受領いたしました。ご対応ありがとうございました。
- 貴社のパンフレットは、すでに受付の方から受領しております。お気遣いありがとうございます。
「頂く」ではなく、「もらう/食べる」の尊敬語はどうなるのか?
「頂く」は、自分が相手に対してへりくだる時に使います。
そのため、上司が食べる時などに使ってしまうのはNGな敬語表現です。相手に対して使う時は謙譲語ではなく、尊敬語になります。
- 召し上がる(食べる)
- お食べになる(食べる)
- くださる(くれる)
- お受け取りになる(受け取る)
- お納めになる(受け取る)
ここからは、「もらう/くれる/受け取る」の尊敬語をご紹介します。ビジネス敬語の使い方をマスターしましょう。
1. 召し上がる(食べる)の意味・使い方
「召し上がる」の「召す」には、身分の高い人が洋服を着る、食べる、飲むなどの意味があります。
ちなみに、「食べる」の意味の「召し」が、ご飯や食事を意味する「飯(めし)」の語源になったとも言われています。
「上がる」は自分より相手の位置が高いことを指し、「召しあがる」で食べる・飲むの尊敬語として使用されます。
目上の相手に対して、「どうぞお召し上がりください」と食事や飲み物をすすめる時や、「本日社長はカレーライスをお召し上がりになっていました」など、目上の方が食事をした、何かを飲んだというのを伝える時に使います。
2. お食べになる(食べる)の意味・使い方
「お食べになる」とは、動詞「食べる」に敬語の接頭語「お」を付け、かつ敬語の接尾語「~になる」を付けた表現です。
「お食べになる」で、目上の人に対して「食べる」の尊敬語表現として使用できますが、「召しあがる」の方が、「お食べになる」よりも丁寧な印象を与えられます。
ビジネスシーンでは、実際に目上の人に対して使う時には「どうぞお召し上がりください」を使い、同僚などを含めた親しい人に使う時には「お客様からいただいたお菓子を休憩室に置いておきます。
「ご自由にお食べください」のように使用するとスマートです。
3. くださる(くれる)の意味・使い方
「下さる」とは、目上の人から何かを受け取ったときの「くれる」の尊敬語です。
「くれる」の尊敬語が「下さる」、対して「くれる」品物を「もらう」の謙譲語が「頂く」です。
「くれる」とは、他人が自分またはほかのものに対して行う行為のため、自分をへりくだる表現ができない、つまり謙譲語はありません。
そのため、目上の方が何かをくれる時には「下さる」の尊敬語にするか、「くれる」に対して自分が行う「もらう」を謙譲語にして「頂く」と表現します。
なお、「頂く」と「下さる」が対応しているように、補助動詞として使う「いただく」と「くださる」も対応しています。補助動詞として、「~してくださる」は、「~してくれた」の尊敬語になります。
この場合の「くださる」も、「いただく」の補助動詞用法と同じく、ひらがなで表記します。
4. お受け取りになる(受け取る)の意味・使い方
「お受け取りになる」は、動詞「受け取る」に敬語の接頭語「お」、敬語の接尾語「~になる」を付けて、目上の人が何かを「受け取る」際に使用する尊敬語です。
「受け取ってください」とお客様や上司などの目上の立場の方に言うのは大変失礼になりますので、「どうぞお受け取りください」と言いましょう。
なお、先に紹介した「賜る」「頂戴する」「拝受する」は、自分をへりくだって相手に敬意を払う謙譲表現です。
謙譲語ではありませんが、自分自身をへりくだる表現のため、他人目線での使用はできませんので、気を付けましょう。
5. お納めになる(受け取る)の意味・使い方
「お納めになる」は、「納める」に敬語の接頭語「お」と接尾語「~になる」を付けて、「お納めになる」にした尊敬語表現です。
「納める」は、物をしまうという意味がありますが、「収める」が単純に物をしまう、という意味があるのに対して「納める」は、あるべき所に物をしまう、義務のあるものをしまうというニュアンスがあります。
そのため、支払うべきお金や渡すべきものを渡す時「月謝を納める」、あるべきところにしまう・落ち着く時「役員の座に納まる」、何かを終わらせ区切りをつける時「今年の仕事を納める」のような使い方をします。
【参考記事】「お納めください」は目上の人に使える?言い換えできる類語もご紹介!▽
「頂く」の英語表現
- get(もらう)
- receive(贈り物などを受け取る)
- I was given ~ (~を受け取るの受動態)
- presented with ~ (~を贈られる)
- Can you ~?(~していただけませんか?)
- take(受ける、受け取る)
英語で「頂く」に該当する「もらう」は、状況によって色々な単語が該当します。
まんべんなく使用できる単語は"take"ですが、ビジネス上ではややカジュアルなため、"get"が適切。贈り物など、相手の厚意を含むものを受け取る時には"receive"が使われます。
また、相手が「あげる」をこちらが受ける側として表現する受動態”be p.p ~”を使用すれば、相手が「あげる」を意味する動詞"giveや"present"の過去分詞"given""presented"を使って「私があげられた(=私がもらった)」と表現できます。
補助動詞としての「~していただく」の表現は英語にはありませんが、「~していただけませんか?」とお伺いする形として「Can you ~?」があります。
複数の意味を持つ「頂く」は、上手に使いこなしたい!
「頂く」の正しい使い方や意味、類語と例文、尊敬語との比較や英語表現についてご紹介しました。ビジネス上でも、誰かから何かをもらったり、逆にこちらが何かをあげるシーンも少なくありません。
「頂く」「下さる」のように、謙譲語、尊敬語の使い分けが難しいと感じる人は多いですが、まずは基本的な「もらう」「あげる」の関係を把握しておけば、ビジネス上での「頂く」「下さる」の関係にも変換しやすく、謙譲語、尊敬語も適切に使い分けができるようになりますよ。
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