"お心遣い"の意味/使い方。"お気遣い"との違いまで解説|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2018.08.29
気を配ってくれるという意味を持つ言葉、お心遣い。多くのビジネスシーンでも使われる敬語ですが、正しい使い方が分からない人もいるでしょう。今回は、「お心遣い」の意味、正しい使い方、お気遣いとの違いまで徹底解説。言い換えできる類語まで、この機会にチェックしておいて!

「お心遣い」の意味とは?

忖度の類語⑥お心遣いの意味とは

「お心遣い」には、二つの意味があります。

一つは「配慮」「気を配ること」の尊敬語です。接頭辞である「お」は漢語に付けることで、漢語が丁寧語または尊敬語に変化しますが「心遣い」に付ける場合は尊敬語へ変化します。

ビジネスシーンなどで、相手から思いやりの心で何かをしてもらったと感じられたときに使うのが適切な言葉といえるでしょう。

もう一つの意味としては、ご祝儀やお祝いの贈り物などを表す単語としても使われます。


「お心遣い」の使い方とは?

お心遣いの使い方

お心遣いは、相手から心のこもった配慮をしてもらった場合などに、お礼を述べる際に「お心遣いありがとうございました」という使い方をされます

相手が自分のためを思って何かをしてくれた場合に使える尊敬語なので、目上の人に対しても使える言葉です。

また、相手からご祝儀やお花などお祝いの贈り物やお土産、金品を受け取ったときにも「お心遣いありがとうございます」とお礼の言葉を述べる際にも使われます。

類義語である「ご配慮」や「お気遣い」などと比べると、相手の気持ちを汲み取れる言葉とされていて、良い印象を与えやすいといえるでしょう。


お心遣いは、報告書などのビジネス文書では使わない。

「お心遣い」は「お気遣い」などと比べるとビジネスを含めた人間関係を円滑に進めてくれる言葉ですが、報告書や企画書などのビジネス文書ではあまり使われる言葉ではありません

ビジネス文書において、訓読みの和語を使用するのは基本的には適切でないとされているからです。

訓読みの和語には、「青空(あおぞら)」や「花畑(はなばたけ)」などがあります。ビジネス文書で用いるのであれば、音読みの熟語が適切とされているので、「ご配慮」などに言い換えるといいでしょう。


「お心遣い」を使った例文とは?

「お心遣い」の使い方が分かっても、例文を見ないとなかなか使えないですよね。ここからは、「お心遣い」を使ったフレーズを見ていくと同時に、例文を確認していきましょう。

  • お心遣いありがとうございます
  • お心遣いいただく
  • お心遣いくださる
  • お心遣い痛み入ります
  • お心遣いを賜り

例文①「お心遣いありがとうございます」の使い方

お心遣いありがとうございますの意味とは

「お心遣いありがとうございます」は配慮をうけたお礼を述べるときと金銭などの物品を受領したお礼を述べるときの2通りがあります

どちらも尊敬語として使える言葉なので、目上の人に対しても使用可能です。

タイミングとしては、何かをしてもらったときに口頭やメール・手紙などでお礼を述べるときがいいでしょう。

例えばご祝儀をもらったときにすぐにお礼の言葉として述べる場合にぴったりです。お祝いの行事があるときや、お中元・お歳暮などの時期に使いやすい言葉といえるでしょう。

「お心遣いありがとうございます」の例文

  • (ご祝儀をいただいたお礼として)お心遣いありがとうございます。
  • (物品をいただいて)ご丁寧なお心遣いありがとうございます。
  • (いつもフォローしてくれる先輩に)いつもお心遣いありがとうございます。

【参考記事】「お心遣いありがとうございます」の使い方をより詳しく解説


例文②「お心遣いいただく」の使い方

お心遣いいただくの意味

「お心遣いいただく」は、「心配りをしてもらう」の敬語表現です。

接頭辞の「お」、気を配るという意味の「心遣い」、何かをしてもらうことの謙譲語である「いただく」の複合語で、相手に心配りをしてもらったことをへりくだって表現しています。

単に「お心遣いありがとうございます」というより「お心遣いいただきありがとうございます」と表現する方がより丁寧になり、上司や目上の人から気を配ってもらったときに丁寧なお礼を述べたいときなどに適した表現といえるでしょう。

「お心遣いいただく」の例文

  • (物品を受け取ったときに)いつも過分なお心遣いいただき恐縮です。
  • (入院のお見舞いをいただいて)温かいお気遣いをいただきありがとうございます。
  • (社長や部長などの目上の人から声をかけてもらって)このようなお心遣いをいただき本当にありがとうございます。

例文③「お心遣いくださる」の使い方

「お心遣いくださる」の敬語一覧

「お心遣いいただく」が尊敬語と謙譲語の複合表現なのに対して「お心遣いくださる」は尊敬語としての表現である点が異なります。

接頭辞の「お」、気を配るという意味の「心遣い」、何かをしてくれることの尊敬語である「くださる」の複合語で、相手が何かをしてくれたことを尊敬語で表しています。

「お心遣いくださる」は「お心遣いいただく」と使うシーンはとても似ていますが、動作の主体が自分でなく相手である点に注意しながら使っていくといいでしょう。

「お心遣いくださる」の例文

  • (取引先の相手が配慮してくれたとき)お気遣いくださいましてありがとうございます。
  • (結婚式の新郎新婦からの挨拶で)皆様から私たちのためにお気遣いくださり心より感謝しております。
  • (目上の人から気遣ってもらったお礼)いつもお心遣いくださいまして感謝しております。

例文④「お心遣い痛み入ります」の使い方

お心遣い痛み入りますの使い方

「お心遣い痛み入ります」とは、2通りの解釈ができる言葉です。

具体的に言い換えると、「気配りをしてくださり恐縮です」という意味と、「気配りをしていただき恐縮です」の両方の意味に解釈できることになります。

「お心遣い」と「痛み入ります」の間に、「くださり」または「いただき」が省略されていますが、どちらであっても上司や目上の人が何かしてくれたことに対しての感謝を述べるときに使える、お礼の言葉として使える言葉です。

「お心遣い痛み入ります」の例文

  • (お礼状で)お心遣い痛み入ります。
  • 突然の申し出にも関わらず快くお引き受けいただき誠にありがとうございます。皆様のお心遣い痛み入ります。
  • (ビジネスメールで感謝を述べたいときに)この度は過分なお心遣いをいただきまして痛み入ります。

【参考記事】「痛み入ります」の使い方って?例文付きで分かりやすく解説


例文⑤「お心遣いを賜り」の使い方

お心遣いを賜りの使い方

「お心遣いを賜り」は「お心遣いをいただき」をより丁寧に言い換えた言葉です。ビジネスメールなどで上司や目上の人、取引先に対して使うのに適しています。

「賜る」には、「目上の人からもらう」という意味の謙譲語と「目上の人が目下のものに与える」という動詞の2種類の意味があります。

ビジネスメールなどで使われる「お心遣いを賜り」の場合は、通常前者の「目上の人からもらう」という意味で使われ、「気を配っていただき」のさらに丁寧な謙譲語として使われています。

「お心遣いを賜り」の例文

  • (目上の人から気を使っていただいた場合など)お心遣いを賜りまして恐縮です。
  • この度はお心遣いを賜り、誠にありがとうございました。
  • この度はお忙しい中ご出席くださったうえに、贈り物やお花など、たいそうなお心遣いをいただき感謝申し上げます。

【「例文」で使われている敬語】
「賜る」の意味&使い方。言い換えできる類語まで解説


「お心遣い」と「お気遣い」の違いとは?

ご留意の類語⑥お気遣い

「お気遣い」はルールや社会通念上の常識、マナーの範囲内で必要最低限の気を配ることです。

マニュアルやルールに沿った気遣いのことで、「お忙しいところ恐縮ですが」などという挨拶のお礼として「お気遣いありがとうございます」が使われることがあります。

「お心遣い」は相手からの心や気持ちによる積極的に気を配る行動のことを言います。

例えば暑い中屋外で仕事をしている人に対して冷たいものなどを差し入れしたとき、もらった方がお礼の言葉として「お心遣いありがとうございます」というと自然な表現です。

「お心遣い」と「お気遣い」は似ていますが、使えるシーンが微妙に異なりますので、使い分けするのができるビジネスマンといえるでしょう。


「お気遣い」を使った例文一覧

  • (挨拶の範囲内でのメールの返答として)お気遣いいただきありがとうございます。
  • (応接室でお茶を出されたとき)ありがとうございます。どうぞお気遣いなく。
  • (会社の上司- 先輩に対して)いつもフォローしてくださる〇〇さんのお気遣いには、とても感謝しております。
  • (取引先に対して)この件の納期につきましてお気遣いいただき誠にありがとうございます。
  • 心ばかりのお祝いの品をお送りします。お返しは結構ですので、どうかお気遣いなく。

上記の例文において、いずれも業務の範囲内での対応やフォロー等に対するお礼として「お気遣い」が使われています。

最後の文は、"大丈夫です"の意味がある「結構です」は、目上にはやや失礼な言い回しになるため、上司や取引先に伝える際は、「お気に留められませんようお願い申し上げます。」と表現するのがスマート。

「お気遣いなく」と表現するのは、少し冷たい印象になるため、目上の人には使わないほうが良いでしょう

【「例文」で使われている敬語】
「お気遣い」の意味&使い方。言い換えできる類語まで徹底解説

「お気遣いなく」の意味から言い換えできる類語表現まで詳しく解説します


「お心遣い」が言い換えできる類語一覧

お心遣いの類語一覧

「お心遣い」は、何度も使ってしまうと、どこかしつこい印象になってしまいます。そんな時は、類語で言い換えることで文章全体のまとまりを強められますよ。

ここでは、お心遣いの類語を5つ解説

  • ご配慮
  • ご高配
  • ご深慮
  • ご配意
  • ご留意

意味・使い方をチェックしておきましょう。


類語①「ご配慮」の使い方

ご配慮の意味とは

「お心遣い」の類語である「ご配慮」は、「お心遣い」を言い換えることも可能な場合があります。

「お心遣い」との大きな違いは、音読みの和語なので報告書などの硬い文章でも使用できる点です。目上の人や上司、取引先に対しても使えます。

また、「お心遣い」が主にお礼を述べる場合に使われることが多いのに対して、「ご配慮」の方が広い意味で使える言葉です。

例えば相手に遠慮や配慮をしてほしいときに「ご配慮ください」という言い方もでき、応用範囲が広い便利な言葉といえるでしょう。

「ご配慮」の例文

  • この件に関して、温かいご配慮をいただきまして誠にありがとうございました。
  • いつも過分なご配慮をいただき恐縮でございます。
  • (目上の人から気遣ってもらったお礼)いつもご配慮くださいまして感謝しております。

【「例文」で使われている敬語】
「ご配慮」は上司にも使える!ビジネスメールの例文から言い換えできる類語まで解説


類語②「ご高配」の使い方

ご高配の意味とは

「ご高配(ごこうはい)」とは、他人が配慮を払ってくれることを敬っていうことを意味する「高配」に、接頭辞である「ご」を付けた敬語表現です。

「ご配慮」がさらに丁寧になった音読みの和語なので、使い方としては口語表現やメールよりビジネス文書などの硬い文書での使用が多いです。

特にビジネス文書の挨拶文の中で、目上の立場の人や会社に対して使われます

メールの文頭に用いられるとてもポピュラーな表現もあり、ビジネスマナーとして覚えておくといいでしょう。

「ご高配」の例文

  • 内容をご検討のうえ、ご高配を賜りますよう、何卒お願い申し上げます。
  • (年賀状において)旧年中は格別のご高配を賜り誠にありがとうございました。
  • この度は私の代表取締役就任に際し、ご高配を賜り厚くお礼申し上げます。

【「例文」で使われている敬語】
「ご高配」の意味&使い方。言い換えできる類義語まで徹底解説


類語③「ご深慮」の使い方

ご配慮の類語⑤ご深慮の意味とは

「お心遣い」の類語である「ご深慮」とは、深い考えという意味の「深慮」に丁寧語の接頭辞である「ご」を付けた表現です。

相手の考えや思慮を敬うときに使う言葉で、歳が上の人や立場が上の人など敬意を払うべき相手からの心遣いを意味します

「慮」は「おもんばかる」という意味を持つ言葉で、「深い考え」を表す言葉です。「お心遣い」との大きな違いは、実際に行動してくれたかどうか。

「お心遣い」は何かをしてもらったり物品をもらったときに使われますが、「ご深慮」の場合は心配してもらったときに使われます。

「ご深慮」の例文

  • ご深慮いただきありがとうございます。
  • こちらのプロジェクトにおきまして、格別のご深慮をいただきましたこと、深く感謝しております。
  • 〇〇様ご深慮のお陰で、こちらの希望が叶うこととなりましたこと、深くお礼申し上げます。

類語④「ご配意」の使い方

ご配慮の類語③ご配意の意味とは

「ご配意」は、接頭辞である「ご」に気を配ることを意味する「配意」を付けた敬語表現です。

頻繁に使われる表現とはいませんが、「お心遣い」よりは「お気遣い」に意味が近い表現で、目上の人や上司など立場が上の人に気を配っていただいたときに使われます

ただし、「ご配意」は「お気遣い」より意味が広く、「他人の気持ちに心を配る」意味も含められているため、「お心遣い」と同じ意味で使われる場合もあることで、「お心遣い」の類語とされる場合も。

また、相手に気を使ってもらいたいときに、「ご配意いただきたくお願い申し上げます」というような相手にお願いする際に使うことも可能です。

「ご配意」の例文

  • ご面倒をおかけしますが、ご配意賜りたくお願い申し上げます。
  • 何卒ご承諾いただきたくご配意のほどよろしくお願い申し上げます。
  • 〇〇におかれましては、こちらの文書をよくご確認のうえ実施されるようご配意願います。

類語⑤「ご留意」の使い方

お心遣いの類語のご留意の意味

「お心遣い」の類語「ご留意」は、物事に心をとどめて気にしておくことです。

「気を配る」という意味を持つ点では「心遣い」と同じですが、「ご留意」の方が緩やかな気配りを意味しています。

また、「心遣い」は比較的対象が限定している「注意」に近いのに対して、「ご留意」は対象が抽象的な場合や、行為が継続することが多いです。

そのため、会期中など、期間や対象を限定して「ご留意」を使っている場合は「心遣い」と言い換え可能な場合もあります。

「ご留意」の例文

  • 会議の期間中、〇〇に関してご留意いただけましたら幸いです。
  • 皆様健康にご留意いただき、益々のご活躍を期待しております。
  • この点につきまして十分ご留意くださいますようお願いいたします。

【「例文」で使われている敬語】
「ご留意」の意味とは?目上に使える例文から言い換えできる類語までご紹介します

「ご留意ください」の正しい使い方|目上の人に使える例文まで解説


「お心遣い」の英語表現

賜るの英語表現
  • kindness(心遣い)
  • thoughts(思い)
  • consideration(熟慮)
  • good thoughts(いい考え)
  • thoughtfulness(思いやりの心)
  • Thank you for your kindness.(温かいお心遣いに感謝します)

ご紹介した英語の例文の中で一番よく使われるのは「kindness」です。

特に、「Thank you for your kindness.」という言い回しはビジネスでもプライベートでも使える英語の基本表現の一つ。

英語を日本語に直訳すると「あなたのご親切に対してお礼を述べる」ですが、自然な日本語に直すと「温かいお心遣いに感謝します」という意味になります。


「お心遣い」を上手く使えば、感謝の意を丁寧に伝えられる。

「お心遣い」という言葉は、ビジネスを円滑に進めるうえで大切な敬語表現です。

上手に使えると、相手の気持ちを汲み取れることにもつながるので、周りの同僚や他社と少しずつ差を付けていけます。

使い方や他の言葉との違いがよくわからない場合は、言葉の成り立ちを考えたり様々な本を読んで学んでいくといいでしょう。ビジネスパーソン必須の敬語表現、是非身に付けていきましょう。

【参考記事】「ご尽力」の正しい使い方/意味を徹底解説

【参考記事】「ありがたい」を伝えられる敬語"幸いです"の使い方って?

【参考記事】「陳謝」ってどういう意味なの?使い方まで解説します

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