"忌憚なく"の意味/使い方。参考になる例文&類語付き|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2019.04.04
相手の気持ちを引き出す時に使える敬語、忌憚なく。「忌憚なくお申し付けください」などで使われる言葉ですが、目上の人に使える表現なのか。今回は、忌憚なくの意味から使い方、そのまま使える参考例文、言い換えできる類語まで徹底解説。この機会に使用方法を確認しましょう。

「忌憚なく」の意味とは?

忌憚なくの意味

「忌憚なく」とは、ビジネスの相手に対して、遠慮せずに発言や行動をしてほしいと思うときに使える敬語の表現です。

「忌憚」は、遠慮や気兼ねすることを意味しますから、「忌憚なく」で遠慮や気兼ねを否定して、積極的で率直になっていただきたいという思いを込めることができます。

「忌」という漢字の読み方には、「忌み嫌う」という直接の意味がありますが、「避ける」というニュアンスでも使います。

「憚」は、読み方として「憚る(はばかる)」という意味を持っており、遠慮や気兼ねと同じ意味の類語です。そのため、「忌憚なく」は、遠慮して避けることをしないようにすすめるときに用いることができる丁寧な表現になります


ビジネスで役立つ「忌憚なく」の正しい使い方とは?

忌憚なくの使い方

ビジネスの中で、ある取り引きにおける交渉で、折り合いがつかないという場合があります。

それぞれ思惑があるのですが、なかなか言い出せないでいるというシチュエーションを経験したことがある方も多いと思います。そんなときに便利に使えるのが、この「忌憚なく」というフレーズです

営業側は、どれぐらいの費用感なら取り引きに乗ってくれるのかを知りたいと思いますから、金額についての提示を忌憚なく言ってほしいと思うものです。

停滞している取り引きの突破口を開いてくれる第一歩となるのが、忌憚なく話し合える雰囲気と、それを引き出す丁寧な表現のトークなのではないでしょうか。


「忌憚なく」は目上の人でも使える表現である。

忌憚なくは目上の人にも使える敬語

「忌憚なく」というフレーズは、目上の方に対しても使うことができます。クライアントに対しても使えますし、社内の上司に対しても使って大丈夫です。

こちら側が作成した提案書などを上司にチェックしてもらうというシチュエーションで、遠慮のないアドバイスを求めたいときにこの言葉を使えるでしょう。

ただし、「忌憚なく」の前後の文章に、敬語的な表現を含めておくことが大切です。また、社内の部下に対しても使えるため、非常に使い勝手の良い敬語になります

お互いの考えていることを引き出したいときに、緊張せずに忌憚なく述べてもらえるようにしましょう。


「忌憚なく」を使った丁寧な例文一覧

忌憚なくを使った例文
  • 見積もり書を送らせていただきます。どうぞご忌憚なく、ご意見をおっしゃってください。
  • 軽食のご用意がありますから、ご忌憚なくスタッフまでご用命ください。
  • ご忌憚なくご意見をお聞かせください。
  • このプロジェクトの成功のために、忌憚なく意見を述べていただきたい。
  • どこに問題があったのかについて、忌憚なく教えてほしい。

目上の方の心の内を聞きたいというときには、「ご忌憚なく」などとして、敬語の表現を強めておくと、失礼に感じることなく受け止めてもらえるようになります

来客者などに対しても、リラックスして楽しんでほしいという意図を伝えることができるでしょう。

また、チームリーダーや上司として、チーム内の率直な意見を取りまとめたいというときにも、「忌憚なく」というフレーズによって、言いにくいことを言ってもらえる雰囲気づくりの一歩とできます

【「例文」で使われている敬語】
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「忌憚なく」が言い換えできる類語表現

忌憚なくと言い換えできる類語一覧

「忌憚なく」は非常に使い勝手の良い言葉ですが、見た目の難しさなどから少し固い印象を与えてしまいます。

取引先と仲が良い場合は、もう少し柔らかい敬語表現を使いたい人もいるでしょう。

そんな時は、「忌憚なく」と言い換えできる類語を覚えておけば非常に便利。

  • ご遠慮なく
  • 気兼ねなく
  • お気遣いなく
  • お気軽に
  • 気にせず

ここから、5つの類語の使い方・例文を解説していきますので、ぜひ覚えていてってください。


忌憚なくの類語① ご遠慮なく

忌憚なくの類語のご遠慮なくの意味

類語の「ご遠慮なく」という表現は、遠慮しないでほしいという思いを率直に伝えられますよ。「忌憚なく」と同じように、ビジネスシーンで目上のかたに対しても使うことができるでしょう。

「忌憚なく」のほうがよりかしこまったイメージを持ちますが、読み方が難しいので、もっと気軽に遠慮しないでほしいことを表現したいなら、「ご遠慮なく」を用います

「ご遠慮なく。」を文末にすると、もっとカジュアルな雰囲気があり、店舗のポップなどでは親近感も高まります。

「ご遠慮なく」の例文

  • お伝えした日時でのスケジュールが難しい場合は、ご遠慮なくおっしゃってください。
  • 色違いの商品もそろえておりますから、ご希望の場合はご遠慮なくお申しつけください。
  • 本日のサービスでは、トッピングを1点無料でお付けできます。どうぞご遠慮なく

忌憚なくの類語② 気兼ねなく

忌憚なくの類語の気兼ねなくの意味

類語「気兼ねなく」も、遠慮しないでほしいという思いを伝えることができるフレーズです。ビジネスではメールなどの文言で、相手に行動をすすめたいときなどに用います。

直接上司に「気兼ねなく」というなら、失礼と感じられることもありますから、この表現ではなく、「忌憚なく」という表現を用いた方がよいでしょう

空気を読む文化がある日本では、せっかく用意したサービスを遠慮されてしまうということも多いですが、このような表現を用いて巧みにすすめることが大切ですね。

「気兼ねなく」の例文

  • あたたかいお飲み物をご用意しています。どうぞお気兼ねなくお申しつけください。
  • 〇日に懇親会を開催します。どうぞお気兼ねなくお越しください。
  • おかげで、ぜんぜん気兼ねなくお話することができました。

【参考記事】「気兼ねなく」の正しい使い方を例文付きを解説


忌憚なくの類語③ お気遣いなく

お気遣いなくの意味とは

「忌憚なく」よりも使いやすい「お気遣いなく」は、類語の中でも覚えておいてほしいフレーズ

「気」で気持ちをあらわしますから、気持ちを遣わないようにすすめるというのが直接の読み方の意味ですが、相手の行動に対して遠慮と感謝を示す表現として用いられています。

親切を示してくれた上司に対して、会話の中でとっさに「お気遣いなく」というフレーズで感謝を述べるのは、問題ありません。メールなどの文章として、「お気遣いなく」を単体で記すなら、失礼にあたってしまいます。

文章をさらに丁寧にした例文として、「お気遣いなさらないよう、お願い申し上げます。」というふうに表現する必要があります。

「お気遣いなく」の例文

  • わたしが片付けをしますから、どうぞお気遣いなく
  • 旅行に行ってきました。留守中はいろいろとご迷惑をおかけしました。おみやげを送ります。お返しはどうぞお気遣いなく
  • 手ぶらで結構ですから、お気遣いなくお越しください。

【「例文」で使われている敬語】
「お気遣い」の意味とは?正しい使い方から類語までご紹介します

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忌憚なくの類語④ お気軽に

忌憚なくの類語のお気軽にの意味

別の類語「お気軽に」の読み方は、「おきがるに」で、とてもカジュアルな表現で、遠慮しないようにすすめるためのフレーズです

気持ちが重たいとなかなか積極的に行動できませんから、気を軽くするようにすすめて、行動を促すという意図がある言葉です。頭に「お」が付いた丁寧な表現ですが、直接上司に向かってつかえる表現ではありません。

ビジネスでは、宣伝や告知などで行動を促す文言として使われることが多く、遠慮したり深く考えて躊躇(ちゅうちょ)することなく来店や試用をしてみるようにすすめます

「お気軽に」の例文

  • 本日特売のコーヒーをお試ししていただけます。どうぞお気軽に店内にお入りください。
  • お品書きに載っていないお料理もご用意できます。どうぞお気軽にスタッフへお尋ねくださいませ。
  • 午後10時までお問い合わせに対応できます。お気軽にご連絡ください。

忌憚なくの類語⑤ 気にせず

忌憚なくの類語の気にせずの意味

「気にせず」も遠慮しないようにすすめるフレーズです。日本人特有の遠慮する気持ちを否定し捨てて、率直に行動や発言をしてもらうようにすすめる言葉です。

そのままの表現では敬語になっていないので、上司などに使ってしまうと失礼になってしまいます。

目上の方に失礼のないような敬語で表現すると、「お気になさらず」という使い方です。例文として取り上げたものは、使い方として目下の人に対する言葉遣いのものが中心になっています。

「気にせず」の例文

  • 集合時間に遅れてしまいますが、わたしのことは気にせずに先に行ってください。
  • 支払いなどの細かいことは気にせずに、今日はじっくりと高級な料理を楽しもう。
  • 上司の顔色を気にせずに、プロジェクトの成功に向かって思いを集中させてほしい。

「忌憚なく」の英語表現

ご連絡差し上げるの英語表現
  • You may speak without reserve(忌憚なく話してください。)
  • You may speak freely.(忌憚なくお話しください。)
  • I want a candid criticism.(忌憚なくご意見をお願いします。)
  • Tell me frankly what you think of it.(ご意見を忌憚なくお申しつけください。)
  • I need your honest opinion.(忌憚なく意見をください。)
  • Don’t tell me what you think I want to hear. (忌憚なく意見してくれ)

英語の表現としてとても直接的なのは、I need your honest opinion.という言い方です。本当の心の内の思いを知りたいということを英語で伝えられます。

また、You may speak freely.という英語表現では、自由な発想や個人的な意見を述べてもらいたいときに使えるでしょう。


「忌憚なく」を正しく使えるビジネスパーソンに。

「忌憚なく」や他の類語の使い方を知っていると、スムーズに意見交換したり、相手にリラックスしてもらったりすることができるようになり、ビジネスを切り開いていくことができるでしょう。

この記事で取り上げた例文などを用いて、正しい日本語の微妙なニュアンスを持つ表現と、英語での表現をマスターしていただければ幸いです。

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