"ご用命"の意味/使い方。類語&目上に使える例文付き|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2019.03.12
用を言いつけるを意味する敬語、ご用命。ビジネスシーンでも使える敬語ですが、正しい使い方を知ってる人は少ないはず。今回は、ご用命の意味から使い方、目上に使える例文、言い換えできる類語まで徹底解説。「ご用命ください」「ご用命の際は」などの使い方も学んでいきましょう。

「ご用命」の意味とは?

ご用命の意味とは

「ご用命」とは、"注文する、用を言いつける"を意味する敬語表現です

「用命」という言葉に「ご」という丁寧表現をつけた言葉ですが、「ご」というのは相手の立場を尊重する場合に使用。例えば「ご報告」「ご確認」「ご説明」などのような使い方をします

「用命」というのは注文という意味ですが、何か用を言いつけるという使い方が一般的です。丁寧表現の「ご」をつけることによって、「何か用があればお申し付けください」という意味にも。

「ご用命」はビジネスシーンでよく使われる言葉で、「ご用命を賜る」のような言い方をすることも。例えば「商品などの注文をうけます」という意味などで使われることが多いです。


「ご用命」の正しい使い方とは?

ご用命の正しく使い方

「ご用命」という言葉は日常会話よりもビジネスシーンで多く使われます

使うタイミングとしては、電話やメールなどで顧客に対して注文を取りたいときなどです。例えば電話で営業する場合に「ご用命があれば承ります」のような言い方をします。

これは簡単に言うと「何か欲しいものがあれば注文してください」という意味になり、相手を敬いながら注文を取りたいタイミングで使います。

新商品のパンフレットを顧客に送付するタイミングでも、「ご用命ください」という文面をメールに入れることで相手の購買意欲を掻き立てることができます

日常会話では「何か用があったら言ってください」という意味合いになりますが、ビジネスシーンでは「ご用命」という言い方をするわけです。


「ご用命」は目上の人に使える敬語なのか?

「ご用命」は目上の人に使える

「ご」という丁寧表現をつけるのは、相手が目上の人の場合です。

同じ地位や立場の人や目下の人に「ご」をつけるのは間違った使い方になります。そのことからわかるように「ご用命」は明らかに目上の人に使う敬語ですね。目上の中には顧客などの大事な取引先なども含まれます。

ビジネスシーンではお互いの地位だけでなく、商品を売る側と買う側の立場があります。商品を売る側にとって買う側は明らかに目上的な立場です。相手に自社の商品を買っていただくわけですから、「ご用命」を使います。このように目上の立場には、個人間の地位とは別に商取引の上下関係も含まれるのです。


「ご用命」を使った敬語表現と例文

ご用命を使った丁寧な例文

「ご用命」を使った例文は、大きく分けて以下の5つ。

  • ご用命ください
  • ご用命の際は、〜
  • ご用命いただき、〜
  • ご用命賜りますよう、〜
  • ご用命賜りました

どの敬語表現もビジネスシーンでは多く使われるため、使い方をマスターしましょう。


ご用命の使い方① ご用命ください

ご用命の使い方①ご用命ください

「ご用命」の最も一般的な使い方は「ご用命ください」です

これは目上の人に対して使う言葉で、ビジネスシーンでは地位が下の人が上司に「何でも言いつけてください」という意味を含んだ使用法。

もう1つは、商取引などで顧客に対して「何でも注文してください」という意味での使い方。目上の人や立場的に相手にお願いする場合に使うのが「ご用命ください」です。


「ご用命ください」の使い方

  • 引っ越しされるそうですが、私にお手伝いできることがあればご用命ください。
  • 新商品の中でご希望の品があればご用命ください。
  • もしも当ホテルへのご要望などがあればご用命ください。
  • ご注文の品はすべて発送しましたが、もし追加が必要でしたらご用命ください。

部下として何か手伝いたいと思ったときなどに使うと、お手伝いしたいという気持ちを相手に伝えられます

商店などが新製品を発売して顧客に宣伝したいときの例文や、ホテルなど接客業などでの例文では、顧客に好印象を与えられるだけでなく、色々な不満や要望がある場合に使える言葉です。


ご用命の使い方② ご用命の際は、〜

ご用命の使い方②ご用命の際は、〜

「ご用命の際は」という言葉は、目下の者が目上の者を慮って使う言葉です。

目上の人が何を望んでいるのか、どんなことが必要なのか、まだわかっていない場合に使います

例えば自分の手伝いが必要になるかもしれないと目下の人が感じた場合、もし必要になったときには自分がお手伝いしますという意味を込めて目上の人に使うのが一般的です。

この言葉を使うことで、目上の人は目下の人の心づかいを感じられます。


「ご用命の際は、〜」の使い方

  • 次の機会に当ホテルをご用命の際には、何なりとお申し付けください。
  • また新たなカタログをご用意いたしますので、ご用命の際にはお声がけください。
  • 今回のサービスをより充実させるつもりなので、次回ご用命の際にはよろしくお願いいたします。
  • 今日は特に急ぐ用件はありませんので、ご用命の際にはお手伝いをさせてください。

まだ相手が自分や自社の商品を必要としているかどうかわからない例文では、もし必要なときには注文してくださいという意味で「ご用命の際は」という言葉を使います

使い方のポイントは、「もしも」というキーワードです。もしも必要な場合にはという状況のときに使われるのが「~の際は」という言葉で、「ご用命」をつけることで、もし必要なときは声をかけていただければ手伝います、という使い方になります。

【「例文」で使われている敬語】
「よろしくお願いいたします」の正しい使い方|目上に使える例文&類語まで徹底解説


ご用命の使い方③ ご用命いただき、〜

ご用命の使い方③ご用命いただき、〜

「ご用命いただき」は、目下の人が目上の人に使える敬語表現

また、ビジネスシーンではお願いする立場の会社が取引先などに使います。

会社間では目上というよりも、立場的に購入してもらう側が購入する側手に対して使う言葉です

「いただき」というのは、すでに「いただいた」という過去系なので、「ご用命いただき」というのは「注文していただいてありがとうございます」という意味の使い方になります。


「ご用命いただき、〜」の使い方

  • このたびは当社の製品をご用命いただき、誠にありがとうございます。
  • 数あるサービスの中から当サービスをご用命いただき、感謝申し上げます。
  • 開店早々にもかかわらずご用命いただき、スタッフ一同ありがたく存じます。
  • 前回は不手際があってご迷惑をおかけ致しましたのに再びご用命いただき、感謝の念にたえません。

商店や企業などが自社の製品を購入したもらった場合、感謝の意味を込めて使うのが「ご用命いただき」です

「いただき」をつけることによってより丁寧な言い方になり、感謝の気持ちを相手に伝えることができます。製品だけではなく、サービスなどを利用してもらった場合にも使えますね。

また、前回不手際があってもう注文はないと思っていたのに再び注文を受けた場合など、より感謝の気持ちを強調する使い方です。

【「例文」で使われている敬語】
「当社」と「弊社」の使い分け|外部との打ち合わせで使うのはどっち?

「感謝申し上げます」の使い方を例文付きで分かりやすく解説します

「ありがたく存じます」の意味とは?|正しい使い方をご紹介します


ご用命の使い方④ ご用命賜りますよう、

ご用命の使い方④ご用命賜りますよう、

「ご用命ください」をさらに丁寧な言い方にすると「ご用命賜りますよう」になります

目上の人に使う言葉ですが、相手の立場が特別な地位にある人の場合に使うと効果的です

例えば相手が社長であったり、組織の代表など。「賜る」という言葉には「もらう」という意味の謙譲語なので、「ご用命賜りますよう」というのは「何かあればお申し付けください」という意味をより丁寧に言い表した敬語表現です。


「ご用命賜りますよう、」の使い方

  • プロジェクトに関することでしたら弊社にご用命賜りますよう、よろしくお願いいたします。
  • このたびの海外出張では私どもにご用命賜りますよう、ご一考ください。
  • 次の機会にはぜひ当ホテルにご用命賜りますよう、スタッフ一同心よりお待ちしております。
  • 万全を期しておりますので遠慮なくご用命賜りますよう、お願い申し上げます。

「ご用命賜りますよう」を使った例文は、主にビジネスシーンで使われます。

プロジェクトなどの大きな事業を決める権限を持っている立場の人に対し、丁寧にお願いをする場合に使うと効果的

またホテルなどでの例文では、特に大切な顧客などに利用してもらいたいときなどに「賜りますよう」という丁寧な言い方をします。

ビジネスシーンにおいて特に重要な相手や立場の人に対して使うのが一般的です。

【「例文」で使われている敬語】
「賜る」の意味とは?|"承る"との違いまで分かりやすく解説します

「お願い申し上げます」の使い方を例文付きで簡単に解説します

「お待ちしております」の正しい使い方|上司など目上へのビジネスメール例文集


ご用命の使い方⑤ ご用命賜りました

ご用命の使い方⑤ご用命賜りました

「ご用命賜りますよう」は今後も注文してくださいという意味なのに対し、「ご用命賜りました」はすでに注文をいただいた過去系での使い方になります

「もらう」の丁寧語である「賜る」をつけるのは、相手が目上であるというだけでなく特別な存在の場合です。会社の社長や組織の代表者、または大事な取引先の企業などから注文をもらったときに使用します。


「ご用命賜りました。」の使い方

  • 弊社が力を入れている商品をご希望とのこと、ご用命賜りました。
  • 次回の会議には当ホテルをご指名いただき感謝しております。確かにご用命賜りました。
  • 昭和初期に発行された初版本をお探しとのこと、ご用命賜りました。
  • 〇月〇日から当施設をご利用されたいとのこと、ご用命賜りました。

「ご用命賜りました」はすでに注文をもらったときなどに、感謝の意味を込めて使う丁寧な言葉です

ビジネスシーンにおける例文では、特別に大事な顧客や取引先に対して「賜りました」という丁寧語を使うことで、こちらの感謝の気持ちを伝えることができます。

また会社や組織にとって長年の付き合いがある場合の例文では、とてもお世話になっていることを感謝しているという思いを込めることができます。


「ご用命」と「ご入用」の違いとは?

お待ちしておりますの例文

「ご入用」というのは「入用」という言葉に「御(ご)」を付けた丁寧語です

「入用」というのは必要なものや必要なことという意味があるので、「ご入用」は相手に敬意を表して必要なものや必要なことがないかお伺いを立てる敬語表現になります。

上司や目上の人に対して使う言葉で、その点では「ご用命」に似ています。この2つの言葉はよく似ていますが、大きな違いがあります。

「ご用命」は用を言いつけるといった意味合いがあり、「ご入用」にはそのようなニュアンスはありません。また「ご入用」のように必要とするといったニュアンスは「ご用命」にはありません。


「ご用命」と言い換えできる類語一覧

ご用命の類語① 申し付ける

ご用命の類語①申し付けるの意味とは

「申し付ける」は「ご用命」の類語ですが、やはり目上の人や立場的に上位にある人に対しての使用法です

ただし「ご用命」が文章言葉なのに対して、「申し付ける」は会話での使い方に。文書やメールでは「ご用命ください」という相手を敬う敬語を使っても、会話では同じ意味で「お申し付けください」と敬語で語りかけますね。

「お申し付けください」という言葉も文章で使われますが、直接的な感じが強くなるようです

「ご用命」の方が畏まった言い方になるので、社長や組織の代表など特定の目上の人に使うのがおすすめ。「ご用命」の類語ですが、会話などで顧客に対して気軽に使えるのが「申し付ける」という言葉です。


ご用命の類語② 申し越す

ご用命の類語②申し越すの意味とは

「ご用命」の類語には「申し越す」という言葉もあります。

手紙や文書を通じて言ってよこすことを意味します。また、大きな違いは「申し越す」の場合は目上の人から目下に使う言葉だという点です。もしくは立場が対等の人に使うのであって、「ご用命」のように目下が目上の人に使う言葉ではありません。

「申す」というのは謙譲語ですが、「申し渡す」や「申し付ける」のように敬語の意味が弱くなって目上から目下へ使われます

ただし、敬語として「ご用命」に近い使い方をする場合には「お申し越し」と「お」をつけることも。「お申し越しの件」のように使えば、「ご指摘の件」や「ご教示いただいた件」といった意味を持たせられますよ。


ご用命の類語③ 仰せ付ける

ご用命の類語③仰せ付けるの意味とは

「仰せ付ける」という言葉も「ご用命」の類語になりますが、目下の者が目上の者に使う言葉という点で共通しています

例えば「ご用命ください」と同じような例文では「仰せ付けください」という言い方ができます。これは「何なりと命じてください」という意味で、「言いつける」という言葉の尊敬語になります。

「ご用命」との違いは、「仰せ付ける」は会話の場面で多く用いられるという点です

「ご用命」よりも命令的な意味合いが多く含まれており、目下の者が目上の者に対して敬語的な使い方をしますが服従しているニュアンスが強くなります。


ご用命の類語④ ご利用

ご用命の類語④ご利用の意味とは

「ご利用」という言葉も「ご用命」の類語で同じような意味がありますが、もっぱら日常的な会話で使われる点が違います

どちらの言葉にも「ご」がついており、丁寧な言葉ですが、「ご用命」の方がより相手に丁寧で敬語的な意味合いが強くなります。

「ご利用」も目下の人が目上の者に使いますが、ビジネスシーンでは立場が弱い方が強い方へ使う言葉でもあります

ビジネスメールや文書では「ご用命」を使いますが、話し言葉としては「ご利用」の方が適しています。例えば「ご利用ください」や「ご利用をお待ちしております」のように使うのが一般的です。


ご用命の類語⑤ ご要望

ご用命の類語⑤ご要望の意味とは

「ご要望」は「ご用命」に最も近い使われ方をする言葉です

「ご要望」は目下の者が目上の者へ使う言葉ですが、ビジネスメールなどでは部下が上司に対して使用します。

この点では「ご用命」と似ていますが、「ご要望」の場合は相手の漠然とした望みを意味しており、目上の者や上司が何かを欲しているのではないかというニュアンスを込めて使います

また「ご用命」よりも「ご要望」の方が話し言葉に使われます。その意味では「ご用命」よりも「ご要望」の方が一般的にわかりやすい特徴があるといえるでしょう。具体的な対象ではなく、抽象的な漠然とした望みに対して使います。


「ご用命」の英語表現

ご連絡差し上げるの英語表現
  • We are entirely at your service(ご用命ください)
  • please ask anything (ご用命あればどうぞ)
  • Please feel free to contact us(お気軽にご用命ください)
  • We hope to your orders(ご用命ください)
  • next order(次のご用命)
  • we can supply(ご用命に応じます)

日常的に英語で「ご用命」という意味で使われているのは、Please ask anythingという言い方でしょう。

砕けた言い方ですが、「ご用命があればどうど言ってください」という意味になります。「用命」というのは英語では「order」という言葉で、「注文」という意味です。Please next orderという気軽な言い方をすれば、英語でも「ご用命」の意味に使えます。


「ご用命」の正しい使い方をこの機会にマスターしましょう!

「ご用命」で覚えておきたいのはビジネスメールや文書で使われるという点と、会話では類語で紹介した言葉遣いに変えた方がよいという点です。

目下の人が目上の人に使う言葉であるという点を抑えておけば、上手に使えます。例文を参考にすれば英語でも使えますね。

【参考記事】「お越しください」の使い方を例文付きで解説します

【参考記事】「大変恐縮ですが」を使った丁寧な例文を詳しく解説

【参考記事】「感謝申し上げます」は、上司に使える敬語なのか?

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