"ご笑納ください"の意味/使い方とは?類語&例文付き|ビジネス敬語ガイド
「ご笑納ください」の意味とは?
「ご笑納(しょうのう)ください」とは、相手に何かを贈るときに「たいしたものではありませんが、笑って受け取ってやってください」という気持ちを込めた敬語表現です。
相手に敬意を払う表現ですが、「笑納」という文字のイメージからか冗談を言い合えるような、気心が知れた間柄で使うものが一般的です。
したがって、メールや文書を送ったりする機会が多いビジネスシーンでは、使い方にはくれぐれも注意しましょう。
ビジネスで押さえるべき!「ご笑納ください」の使い方の注意点
ご笑納くださいの注意点① 目上には使わないほうが無難
「ご笑納ください」という表現を上司などの目上の人に使うと、やや失礼な人と受け取られる恐れがあります。ただし、あくまでも受け取る側の判断であるため、失礼と受け取らない人もいることを考慮すると、絶対に使ってはいけないとまでは言い切れません。
しかし、判断が分かれる表現は使わないほうが無難。目上に対して使うとき、この表現が使えるのは、かなり親しい人だけに限られます。
特に、お礼状や送付状などフォーマルなビジネスレターではNG。この表現が使えない場合は、後述する類語を使いましょう。
ご笑納くださいの注意点② 初対面の方には使用しない
初対面の相手も「気心が知れた間柄」からは外れる対象であるため、「ご笑納ください」は使わないの一般的です。
「たいしたものじゃないから笑って!」と強要しているような印象になってしまいます。同様に、面識があまりない人にもふさわしくない表現です。
「笑納」という表現は、相手との距離感によって使える場合とそうでない場合があることを押さえておくとよいでしょう。
ご笑納くださいの注意点③ 相手の写る写真を送る時は使わない
相手が写っている写真を送るときも、この表現はNG。「笑納」は「つまらないものですがどうぞ」という意味です。したがって、相手が写っている写真を指して「つまらないもの」と表現するのは、失礼に当たります。
また、「笑」という字のイメージから、「笑える写真」と相手をバカにしているととられかねません。
写真等を同封する場合は「つまらないものですがお受け取りください」といったニュアンスの表現せず、「お受け取りください」とシンプルに伝えた方がいいでしょう。
ご笑納くださいの注意点④ お詫び・謝罪の品には使わない
ビジネス、プライベートを問わず、また、どんな間柄であるかに関わらず、お詫びや謝罪の際に品物を送ったり渡したりするときに「ご笑納ください」は使いません。
謝罪の気持ちを表すところに「つまらないものですが笑ってお納めください」という軽い表現は失礼に当たり、ふさわしくないからです。
お詫びの手紙を書くときは、謝罪と改善について述べたあとで、最後に「お詫びの品をお送りいたします。どうぞお納めください」のように締めるといいでしょう。
ご笑納くださいの注意点⑤ 食べ物を送る時は別の言い方にする
上司など目上の人に食べ物を送るときは、「ご笑味(しょうみ)ください」「お召し上がりください」を使うことをおすすめします。
「笑味」とは「笑納」と同じく、「つまらないものですが笑ってお食べください」という意味。「召し上がる」は食べる・飲むの尊敬語で、「お召し上がりください」は「食べてください」の敬語表現です。
「ご笑味」と似た表現に「ご賞味(しょうみ)」がありますが、こちらはやや上から目線の表現で、料理を作った人がお客に勧めるときに使わます。
上司など目上の人には「ご笑味ください」「お召し上がりください」のほうがふさわしいでしょう。
丁寧な印象になる「ご笑納ください」を使った例文一覧
【お歳暮】ご笑納くださいを使った例文
- 歳末の候、いかがお過ごしでしょうか。日頃よりお世話になり、心より感謝申し上げます。お歳暮として、心ばかりの品を送らせていただきます。ご笑納くださいませ。
- 先日のお礼に、お歳暮の品をお送りいたします。ぜひご笑納くださいませ。
- 歳末のご挨拶代わりに、お歳暮の品をお送りいたします。ご笑納ください。
- お歳暮の品物をお送りいたしました。ご笑納くださいましたら幸いです。
- 日頃の感謝の意を込めまして、お歳暮をお送りいたします。どうぞご笑納ください。
お歳暮は、この一年お世話になった人への感謝の意を込めた贈り物です。通常は、品物には送り状を添えますが、上司でも親しくさせていただいている人や知人などには、「ご笑納ください」という表現が使えます。
例文にあるように「つまらない品物ですが、私の感謝の気持ちです。どうぞ受け取ってくださいね」というニュアンスを意味します。
【「例文」で使われる敬語】
・「心ばかり」の意味/使い方。贈り物の丁寧な例文&類語|ビジネス敬語ガイド
・「感謝申し上げます」の正しい使い方|上司に使える丁寧な例文を解説します
【お中元】ご笑納くださいを使った例文
- 毎日暑い日が続きますが、いかがお過ごしでしょうか。本日はお中元の品をお送りいたしました。ご笑納くださいましたら幸いです。
- お中元のしるしに、別便にて品物をお送りいたしました。どうぞご笑納ください。
- 日頃のお礼に、お中元の品を送らせていただきました。なにとぞご笑納ください。
- 先日は結構なお品物をいただきありがとうございます。本日、お中元の品をお送りいたします。ご笑納くださいませ。
- 夏のご挨拶とご無沙汰のお詫びに、お中元の品をお送りします。ご笑納ください。
「中元」とは中国で7月15日を指す言葉です。お中元は7~8月上旬、半年間お世話になった人に対する感謝を意を込めた贈り物で、お歳暮と同様に送り状を添えます。
親しくさせていただいている人への送り状には、「ご笑納ください」という表現が使えます。
時候の挨拶や日頃の感謝を述べたあと、「お中元を送るので受け取ってください」といった意味の文章を入れます。上述したように、飲食物を送るときは「ご笑味ください」「お召し上がりください」という表現を使うようにしましょう。
【感謝を込めた贈り物】ご笑納くださいを使った例文
- 日頃の感謝の気持ちを込めまして、心ばかりの品物をお送りさせていただきます。どうぞご笑納くださいませ。
- いつもお世話になっています。日ごろの感謝の気持ちを込めてお送りいたします。ご笑納くださいますと幸いです。
- 先日は多大な協力を頂き、誠にありがとうございました。感謝を込めて、心ばかりの品をお送りします。ご笑納くださいませ。
- 日頃の感謝のしるしに、お送りいたします。ご笑納ください。
- 先日はありがとうございました。心ばかりの品をお送りいたしますので、ご笑納ください。
相手にお世話になっているを感謝し、お返しに何かを送るときに「ご笑納ください」を使うと、「あなたに比べて、自分が贈るものはたいしたものではありませんが」と自分を下げて相手を立てることになり、感謝の気持ちを表せます。
もちろん、先述したようにこの表現がふさわしくない相手には使わないよう、自分と相手の距離感には要注意。
例文のように、日頃から親しくしている人に、改めて感謝を込めて贈り物をしたいときにおすすめです。
目上に使える「ご笑納ください」よりも丁寧な敬語表現
丁寧な敬語① お受け取りください
「お受け取りください」は、「受け取る」に敬語を作る接頭語「お」と要望を表す補助動詞「~ください」を加えた表現。「ご笑納ください」と似た表現ですが、相手に対してへりくだるニュアンスは強くありません。
また、使い方に相手やシチュエーションの制限がないため、どんな場面でも使えるのも大きな違い。したがって、初対面の人や上司、あまり親しい間柄ではない人など「ご笑納ください」が使えない場合は、「お受け取りください」を使うことをおすすめします。
「お受け取りください」の使い方
- 資料をお送りいたしますので、お受け取りくださいませ。
- 先日はありがとうございました。お礼の品をお送りいたしますので、お受け取りくださいませ。
- 店舗のほうでお受け取りくださいますよう、よろしくお願いします。
丁寧な敬語② ご査収ください
「査収(さしゅう)」とは、金銭や物品、書類などをよく調べて受け取ることです。敬語を作る接頭語「ご」と要望を表す補助動詞「~ください」を加えた「ご査収ください」は「よく調べたうえで受け取ってください」という意味。
「受け取ってください」という意味は「ご笑納ください」と同じですが、細かいニュアンスが異なります。
「ご査収ください」は丁寧な言い方でありながら、「中身をチェックしてくださいね」と相手にお願いを含んでいます。相手に中身を確認してほしいものを送るときに使うことが多いので、ビジネスシーンでよく使われます。逆に贈り物などにはほとんど使わないので状況に応じて使い分けましょう。
「ご査収ください」の使い方
- 今度の会議の資料をお送りいたしますので、ご査収くださいませ。
- 納品書を送付いたしましたので、よろしくご査収くださいますようお願い申し上げます。
- お預かりしていたご提出書類を返却いたします。ご査収ください。
【「ご査収」の参考記事一覧】
・「ご査収」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!
・「ご査収ください」は目上の人に使える?言い換えできる類語もご紹介
・「ご査収くださいませ」の意味とは?|ビジネスシーンで使える例文まで解説します
丁寧な敬語③ お納めください
「お納めください」は、「納める」に敬語を作る接頭語「お」と要望を表す補助動詞「~ください」を加えた表現。
「納める」は贈り物などを自分の方に受け入れる意味なので、「お納めください」は「受け取ってください」を丁寧に表現したかたちになります。
渡す相手への敬意はありますが、「ご笑納ください」のように「つまらないものですが」とへりくだるニュアンスはありません。
ビジネスシーンはもちろん、結納や内祝いなどお祝い事でも使われ、一般的には目上の人に対して贈り物などをするときに使います。
「お納めください」の使い方
- 記念の品をご用意いたしましたので、どうぞお納めください。
- このたびはおめでとうございます。つまらぬものですが、どうぞお納めくださいませ。
- お礼のしるしに、ささやかながら心ばかりの品をお送りいたしました。どうぞお納めくださいませ。
【参考記事】「お納めください」の意味や正しい使い方とは?▽
丁寧な敬語④ ご受納ください
「受納(じゅのう)」は、贈り物などを受け取って納め入れること。敬語を作る接頭語「ご」と要望を表す補助動詞「~ください」を加えた「ご受納ください」は、「受け取ってください」の意味になります。
この表現も「ご笑納ください」と同様、相手への敬意を表した表現ですが、へりくだるニュアンスはありません。こちらもビジネスシーンはもちろん、内祝いなどの挨拶状にも使われます。
また、「ご受納ください」は金品を渡す場合に用いるのが一般的。書類などには「ご査収ください」を使うとよいでしょう。
「ご受納ください」の使い方
- 先日はありがとうございました。粗品をお送りいたしますので、ご受納くださいませ。
- 供養のしるしに心ばかりの品をお届けいたしましたので、どうぞご受納ください(香典返しの挨拶状)。
- ご結婚おめでとうございます。お祝いの品をお送りいたしますので、ご受納くださいませ。お納めください。
「ご笑納ください」と似た意味を持つ類語一覧
ご笑納くださいの類語① ささやかですが
「ささやか」は控えめな様子を表す語。そこから、粗末なさまを表します。とはいえ、本当に粗末なものを指すのではなく、話し手が「ささやかですが」というときは謙遜していることがほとんどです。
へりくだった表現という意味では、「ご笑納ください」とよく似ています。「ささやかですが」は「お受け取りください」などと一緒に使い、「ご笑納ください」の言い換えとしても用いられます。
表現に制限のある「ご笑納ください」に比べて「ささやかですが」には制限がなく、ビジネス・プライベートを問わず、さまざまなシチュエーションで使えます。
「ささやかですが」の使い方
- 先日、旅行先で見つけてきたものです。日頃のお礼の印にと思いお送りいたします。ささやかですがお受け取りください。
- このたびはお世話になりました。ささやかですが、お礼の品をお送りします。ご受納くださいませ。
- ささやかですが、お祝いの品をお送りします。お納めください。
ご笑納くださいの類語② つまらないものですが
「つまらないものですが」も「ささやかですが」と同じようなニュアンスの表現。
へりくだることで、相手に敬意を払っています。こちらも「つまらないものですが、お受け取りください」のように使われることが多く、「ご笑納ください」の言い換えとして用いられます。
しかし、ビジネスシーンで「つまらないものですがお受け取りください」を使うと、表現が直接的であるため、失礼と取られることもあるので要注意。その場合は、「ささやかですが」を使った方がベターでしょう。
「つまらないものですが」の使い方
- 日頃お世話になっているお礼です。つまらないものですが、お納めくださいませ。
- 先日はご自宅にお招きいただきありがとうございました。つまらないものですが、ご家族みなさんでお召し上がりください。
- つまらないものですが、どうぞお納めください。お役に立てていただければ幸いに存じます。
「ご笑納ください」への返事の仕方で正しい表現とは?
- このたびは結構なお品をいただき、ありがとうございます。頂戴いたします。
- ご丁寧にありがとうございます。ありがたく頂戴いたします。
- お心遣いありがとうございます。ありがたく頂戴いたします。
- 本日、お送りいただいたお品物を受け取りました。頂戴いたします。
- とても珍しいものをお送りいただき、ありがとうございます。ありがたく頂戴いたします。
贈り物を受け取ったら、できるだけ早く返事を出しましょう。返事を出すことで、無事に品物が届いたと贈り主も安心できます。
「ご笑納ください」は「お受け取りください」の意味なので、返事としては「頂戴します」が基本です。
そこに、品物を送ってもらったことや丁寧な対応、細やかな心遣いへの感謝の言葉を加えると、より丁寧な返事になります。また、「とても珍しいものをお送りいただき」のように、送ってもらった品物に対する感想を入れてもいいでしょう。
【「例文」で使われている敬語】
・「頂戴」の意味とは?|言い換えできる類語から例文までまとめました
・「お心遣いありがとうございます」の意味&丁寧な例文集|ビジネス敬語ガイド
「ご笑納ください」の英語表現
- Please accept this little gift.(つまらないものですがご笑納ください)
- It's just a little thanks.(ご笑納ください)
- I got this for you.(つまらないものですが)
- I hope you like this small present.(ささやかなプレゼントですがご笑納ください)
- I'm sending you a small present which I hope you will like.(心ばかりの贈り物を送りましたので、ご笑納いただければ幸いです)
- This is just a little thing I got for you.(あなたにこんなものを見つけたのですが)
「ご笑納ください」のへりくだったニュアンスを伝えるなら、「Please accept this little gift.」が適切。
ただし、「gift」には「大切にしてほしいもの」といった意味合いがあり、もらう側に多少のプレッシャーも与えます。
「ほんのつまらないものなので、お気遣いなく」といった気持ちを込めたいなら「It's just a little thanks.」がおすすめです。
「ご笑納ください」は親しい間柄の人に使用しましょう!
「ご笑納ください」は、相手に贈り物をするときのへりくだった敬語表現です。
この表現は親しい間柄でやり取りをする場合に限られていたり、「笑」の字のイメージにふさわしくないシチュエーションでは使えなかったりと、使い方にいくつかの注意点があります。
同じような意味を持つ類語の敬語も覚えておき、ビジネスシーンやフォーマルシーンでその都度、適切な表現を使って言い換えましょう。
【参考記事】「幸甚です」の意味&使い方|類語"幸いです"との違いまで徹底解説▽
【参考記事】「ご教示ください」は間違い敬語なの?正しい使い方から目上に使える例文まで解説▽
【参考記事】「不躾な質問」の意味とは?|ビジネスシーンで使える例文まで解説します▽
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