"幸甚です"の意味/使い方とは?類語"幸いです"の違い|ビジネス敬語ガイド
「幸甚です」の意味や読み方とは?
「幸甚です」とは「こうじん」と読み、「大変幸せなこと」を意味する敬語表現です。そのため、「幸甚です」を使わずに「幸いです」「嬉しいです」を用いても問題はありません。
ただし、「嬉しいです」のような「形容詞+です」という言い方は少し幼稚なイメージを与えてしまいます。「幸いです」は少しカチッとした印象ですが、より丁寧に述べるなら「幸甚です」がベストと言えるでしょう。
ビジネスシーンにおける「幸甚です」の正しい使い方
「幸甚です」を使うシーンは、遠回しに何かを頼む場合と感謝を表す場合に使われます。
ビジネスでは何かと遠回しな表現が用いられるもの。例えば、何かを頼みたい場合でも「〇〇してください」とは言わず、「(仮に)〇〇してくださったら嬉しいです」と湾曲的に伝えます。
その際、文末の「嬉しいです」を「幸甚です」へ丁寧に言い換えると、よりスマートな言い回しとなります。したがって、目上の方にや取引先の方に使用するのにも最適な表現です。
また、「甚」の文字にすでに強調する意味がついているため「大変幸甚です」とは言わないので、くれぐれも使い方には注意しましょう。
「幸甚です」は、目上の人に使えるか?
「幸甚です」は目上の人にも使える敬語表現です。「非常にありがたく思います」というかなり大仰に感謝の気持ちを伝える言葉ですから、丁寧でなおかつ堅苦しい、四角張った感じがします。
そのため、目上の人に使う場合は「幸甚です」を使うようにしましょう。ただし、「〇〇していただければ幸甚です」という表現は、多かれ少なかれ頼みごとをするときに使われます。
そのため、相手へ依頼する時は、きちんと失礼のない文章を心がけましょう。
「幸甚です」は、社内・社外どっちに使ったほうが良い?
言葉というのは相手との距離感によって使い方が変わります。「幸甚です」は堅苦しいイメージになると言いましたが、それは相手との距離を置いているということです。
そのため、社内で「幸甚です」を使うと冷たい感じがする場合も少なからずありますね。反対に社外の人に使うと、必要以上に馴れ馴れしくしないということで、相手へ好印象を与えられます。
ビジネスシーンで使える「幸甚です」の丁寧な例文
【幸甚ですの例文】お願いで使う場合
- このメールに添付しておりますファイルをご覧になっていただければ幸甚です。
- これからも末長くお付き合いいただければ幸甚です。
- 先日お話をした件について、金曜日までにご返信をいただけますと幸甚です。
- この件に関して調査をしていただけますと幸甚です。
- 今夜お食事を一緒にし、いろいろとお話を伺えれば幸甚です。お忙しいところ恐縮ですが、よろしくお願いいたします。
- もう一度確認していただければ幸甚です。
例文を見てもわかるように、「もし〇〇していただければ」と仮定法で始まるフレーズを受けた文章が「幸甚です」で完結する場合、お願いを婉曲にしている文章です。
「してくださる可能性が低いのは知っていますが、万が一してくださったら」というようにやってもらう可能性が低いという前提で話しています。遠回しであればあるほど、丁寧さが増すということです。
ただし、頻繁に使うと不快感を持つ人もいるということを頭の隅に置いてくださいね。頼みごとをしていると誰でもが気づくことですから。話し言葉だけでなく、メールでも活用できるのも、大事なポイントです。
【「例文」で使われている敬語】
・「よろしくお願いいたします」は言い換えできる!類語を分かりやすく解説
【幸甚ですの例文】感謝で使う場合
- A:今日はご招待いただきありがとうございます。
- B:こちらこそ、わざわざご足労いただき幸甚です。
- A:手術をしたそうですね。その後の経過はどうですか。
- B:お気遣いいただき誠に幸甚です。傷もふさがり抜糸も終えました。
- A:貴社の新製品を使ってみたよ
- B:数ある製品の中、弊社の商品を選んでいただき幸甚です。これからもさらに良い製品を作るべく日々精進するつもりございます。
例文で見たように、感謝の気持ちを表す言い方では仮定法を使わず直説法であるということをチェックしておきましょう。「幸甚です」が感謝の気持ちを表す言葉として使われる場合は「光栄です」に言い換えられます。
「幸甚です」は「光栄です」同様、かなり大仰な言い方です。そのため、目上の人というだけではなく日常的な関わり合いがあまりない人に使われます。上司や先輩であれば「ありがとうございます」で十分です。
身近な人に話しかける場合はあまり丁寧すぎても「慇懃無礼」とかえって失礼になる場合もあるため注意しましょう。
「幸甚です」と「幸いです」の違いや使い方とは?
「幸いです」は意味も使い方も「幸甚です」と同じように使われる言葉です。とはいえ、「幸いです」も頻繁に使うと失礼な人と思われることが少なからずあります。
なぜなら、「幸いです」は「幸甚です」と同じように依頼したいことを遠回しに言っているので、煩雑に使うと命令されているように感じてしまうからです。
また、「幸甚です」よりもフランクな表現である「幸いです」で頼みごとをすると、馴れ馴れしく何かを頼んでいると感じる人もいます。ですから「幸いです」は社内で、「幸甚です」は社外で使うなど、上手に使い分けるようにしましょう。
「幸いです」の例文
- 見積書を同封いたしました。確認していただければ幸いです。
- 資料のこのページの意味がよくわからないのですが…ご教示いただければ幸いです。
- 期日を明日までに伸ばしていただけますと幸いです。
- プレゼンテーションを手伝っていただければ幸いです。
- メールへのお返事を早急にしていただければ幸いです。
「幸いです」は基本的には「幸甚です」の類語で言い換えも可能です。しかし、漢語の「幸甚」に比べて和語の「幸いです」は柔らかな表現であると同時にフォーマル感が無くなります。
したがって、「幸いです」は社内メール、「幸甚です」は社外メールに使うようにすると決めておくといいでしょう。
「幸甚です」と言い換えできる類語一覧
幸甚ですの類語① ありがたく存じます
「ありがたく存じます」の「存じます」は「思います」の敬語表現です。「ありがたく思っています」という意味を表します。
「わざわざお越しいただき幸甚です」というような感謝の気持ちを表す場合には「ありがたく存じます」と言い換えが可能です。
しかし、「〇〇していただければ、幸甚です」のような遠回しの依頼には使いません。「ありがたく存じます」は感謝の気持ちを表す場合に、特にメールなどの書き言葉で使われます。目上の方へ使える表現なため、しっかり覚えておきましょう。
「ありがたく存じます」の使い方
- このような素晴らしいものを頂戴し、大変ありがたく存じます。
- この度はわざわざお越しいただき、誠にありがたく存じます。どうぞお気をつけてお帰りくださいませ。
- 弊社の商品を注文していただき、本当にありがたく存じます。
【参考記事】「ありがたく存じます」の意味から正しい使い方までをまとめました▽
幸甚ですの類語② 恐れ入ります
「恐れ入ります」はかなりへりくだった気持ちを表す敬語です。ビジネスでもよく使われ、相手への印象を良くする言葉なので覚えておきましょう。「幸甚です」と意味合いは似ていますが、使い方が違います。
「恐れ入りますが」は文頭につけて直接的な頼み方をするのに対し、「幸甚です」は文末において遠回しにお願いするのが大きな違いです。
「恐れ入ります」の使い方
- A:お茶をお持ちしました。
B:恐れ入ります。
A:先日お申し込み用紙をお送りしました。手元に届きましたら恐れ入りますがご確認をよろしくお願いいたします。
B:ご丁寧にありがとうございます。到着いたしましたらご連絡を差し上げます。
幸甚ですの類語③ 嬉しいです
「嬉しいです」は「です」を使っているので敬語だという人もいます。しかし厳密には敬語といえるかどうかは微妙なところ。基本的に形容詞に「です」をつけるのは幼稚な印象が否めないため、ビジネスシーンではあまりおすすめはしません。
とはいえ、「嬉しいです」の使い方は基本的に「幸甚です」と同じです。つまり言い換えられるので、「嬉しいです」と言いたいときは「幸甚です」と言い換えるようにしましょう。
特にビジネスでメールを送る際は、「幸甚です」を使った方がきちんとした印象を与えられますよ。
「嬉しいです」の使い方
- これは私の田舎の特産品です。気に入ってくださったら嬉しいです。
- こんな素敵なものをいただいて、本当に嬉しいです。
- 退院されたそうで、おめでとうございます、また一緒にお仕事ができると知り、嬉しいです。
幸甚ですの類語④ 恐縮です
「恐縮です」は相手に対して「恐れて、縮んでいる」ことです。相手に対してへりくだっている様子を表せいているので敬語として使われます。
「幸甚です」の類語で、同じように何かを頼むときや感謝の気持ちを表すときに使いますが、両者の大きな違いは使い方です。「恐縮です」はビジネスでは良く使われる言葉で、上手に使うと印象が良くなります。
また、「恐縮です」はメールなどの書き言葉だけではなく、会話でも良く使われため上手に使いこなしましょう。
「恐縮です」の使い方
- A:お食事の用意ができておりますので、どうぞあちらにいらしてください。
- B:食事の用意までしていただき、恐縮です。
- A:お忙しいところ、誠に恐縮ですが、こちらの用紙に記入してください。
- B:了解致しました。
【参考記事】「恐縮ですが」の意味から使い方まで徹底解説▽
「幸甚です」以外のその他の敬語表現一覧
その他の敬語① 幸甚に存じます
「幸甚に存じます」の読み方は「こうじんにぞんじます」です。「存じる」は思うという動詞の敬語。「幸せだと思う」という意味で「幸甚です」と使い方はほとんど同じです。
「幸甚です」と断定せず、「存じます」と表現することで柔らかさを出しています。そのため、「幸甚です」よりもさらに目上の人へのメールなどに使える言い方です。
その他の敬語② 幸甚の至り
「幸甚の至り」の読み方は「こうじんのいたり」です。「至り」という言葉には、結果、極みというふたつの意味があります。「若気の至り」というときは「若者にありがちな結果」という意味です。
「幸甚の至り」の場合は、結果ではなく極みという意味で使われています。つまり、幸甚の最大級を意味するフレーズです。最大の感謝を表す言い方として「幸甚の至りです」「幸甚の至りでございます」といった使い方をします。
ビジネスメールなどにおいて、お礼の気持ちを表現するときに便利な言葉です。
その他の敬語③ 幸甚の極み
「幸甚の極み」も幸せであることを最大限に表現した言い回しです。主に「幸甚の至り」と同様に、ビジネスメールなどで使用されます。
相手へ感謝を伝えることもできるため、覚えておいて損のない定番フレーズと言えるでしょう。ただし、「極み」は口語でも使う言葉であるため、「幸甚の至り」よりは少しフランクな表現といえます。
その他の敬語④ 幸甚でございます
「幸甚です」の「です」をもっと丁寧な言い方にしたものが「幸甚でございます」です。
ビジネスのメールでは「幸甚です」で十分ですが、相手によっては丁寧な言い方を好む場合もあります。相手を見て状況によってさらに丁寧な「幸甚でございます」という敬語表現を使いましょう。
「幸甚でございます」の使い方は「幸甚です」と全く同じです。感謝の気持ちを表すことと「もし〇〇をしてくれたら幸甚でございます」と、婉曲な依頼の言葉として使えます。
「幸甚です」の英語表現
- I would be greatly appreciated if you would come to dinner tomorrow .(明日ディナーにいらしてくださったら幸甚です)
- Prompt arrival would be appreciated(すぐに到着してくださったら幸いです)
- I would be greatly appreciated if you would send me more information.(もっとインフォメーションを送ってくださったら幸甚です。)
- I would be greatly appreciated if you would pay soon.(すぐに支払ってくださったら幸甚です)
- The establishment of a good business relationship with you make me happy.(あなたとのビジネス関係が気づけたら幸いです)
- I was wondering if you could see the attachment.(添付ファイルに目を通してくださったら幸甚です)
「would be greatly appreciated if 〜」は直訳すれば感謝しますということです。〇〇をしてくださったら感謝しますという感じで使います。
何かをしてもらいたいときに、直球で「〇〇してください」とは言わず、遠回しに告げたほうがいいのは、日本語だけではないのですね。
「be greatly appreciated if」を現在形でも言えますが、ビジネスシーンではより丁寧に感じられる「would」を使いましょう。
「幸甚です」の意味や使い方をきちんとマスターしましょう!
「幸甚です」の意味や使い方、類語と類語の使い方などを見てきました。目上の方にも使える表現なため、きちんと使い方はマスターしましょう!
この機会に、類語や英語表現も合わせて覚えて、正しい言葉遣いを取得してくださいね!
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