"拝見いたしました"は上司に失礼?二重敬語ってNGなの?|ビジネス敬語ガイド
「拝見いたしました」は二重敬語か?
「拝見する」は、「見る」の謙譲語で、目上の人に使える敬語表現です。主に相手が見ることに対してではなく、自分が見ることをへりくだって言う場合の敬語になります。
そんな「拝見する」よりも丁寧な印象がある「拝見いたしました」は、ビジネスシーンでもプライベートでもよく使われますが、二重敬語になります。
これは、「見る」の謙譲語「拝見する」という言葉と、「する」の謙譲語「いたす」が重複しているためです。
二重敬語は言い回しがくどくなるだけでなく、文法的には誤りなので注意しましょう。また、「拝見いたしました」は「拝見します」が正しい使い方となります。
「拝見する」という謙譲語に「ます」の丁寧語が一緒に使われるので、「拝見いたしました」ではなく「拝見しました」を使用するようにしましょう。
─「拝◯いたします」は、正しい言葉に直す!─
- 拝読いたしました→拝読しました
- 拝聴いたしました→拝聴しました
- 拝観いたしました→拝観しました
- 拝受いたしました→拝受しました
【「拝◯」の敬語一覧】 ・「拝受」とはどういう意味?使い方から類語まで詳しく解説!
・「拝聴」の正しい使い方|上司など目上の人に使える例文までご紹介します
「拝見いたしました」は、結局のところ上司など目上の人に使っていいの?
「拝見いたしました」は敬語なので、自分をへりくだって相手を立てるのが基本の使い方。つまり目上の先輩や上司などに対して使う言葉なのです。
「拝見いたしました」は二重敬語で文法的には間違っていますが、ビジネスシーンでは慣習的な使い方なので使っても特に違和感がありません。むしろ、今では一般的に使われる敬語として認知されてきています。
同じような言い方で「承知いたしました」がありますが、これも「承知する」と「いたす」の二重敬語。もし「拝見いたしました」が使えないのなら、「承知いたしました」と言い換えもできないことになりますね。
「拝見させていただく」は、少しくどい印象になる。
ビジネスシーンなどでよく使われる言葉に「拝見させていただく」がありますが、これは二重敬語で文法的には間違いです。「拝見」自体が謙譲語である上に、「いたす」は「する」の謙譲語なので二重敬語にあたります。
文法的には間違っているのですが、一般的に「拝見させていただく」という使い方はよく行われているため、見逃されています。
しかし、二重敬語の中でも「〜させていただく」は、くどい印象があるため、言われた方は嫌みに聞こえる場合もあるのです。「拝見させていただく」を使うときは、この点を知っておく必要があるでしょう。
ビジネスメールでそのまま使える「拝見いたしました」の丁寧な例文
- A:先日の報告書について意見を聞きたいのだが。
- B:その報告書なら拝見いたしましたが、とてもよくできていると思いました。
- A:今回の催しは色々なアイデアを盛り込んだので、高い評価を得られるでしょうね。
- B:昨日ですが時間を見て催しを拝見いたしました。思った以上に好評だったようです。
- A:息子の成績が最近はかんばしくないのですが、どのように対応すればいいでしょうか。
- B:お子様の成績を拝見いたしましたが、それほど心配される必要はないかと思います。
- A:我が社の新しいテレビCMが各方面で話題になっていますね。
- B:そのCMなら拝見いたしましたが、実に斬新なセンスで話題になるのも当然かと考えます。
目上の人や上司などに質問されたり、自分の感想を述べるシチュエーションで「拝見いたしました」というフレーズをよく使います。
このようなシチュエーションで使う「拝見いたしました」は「確かに見ました」という確認のニュアンスです。目上の人や上司にそのことを伝える役割もありますね。
目上の人や上司からの質問に答えるだけでなく、自ら報告するシチュエーションでの使い方もできます。「拝見いたしましたが、とても素晴らしかったです」といった例文のようにです。
相手に見てもらう場合は、「拝見」は使わない。
見てもらう時に使える敬語① ご覧ください
「拝見いたしました」という敬語は自分が見るという行動を起こしますが、相手に見てもらいたいときには「ご覧ください」を使います。
「ご」という丁寧語がつくので敬語表現になり、目上の人や上司、立場的に上になる組織や取引先などに対しての使用可能です。
タイミング的には、ぜひ見てもらいたい資料やイベントなどがある場合、それを紹介しつつ「見てもらえたら嬉しい」というニュアンスを込めて使います。メールや文書でも使いますが、日常会話でよく重宝される汎用性の高い言葉です。
見てもらう時に使える敬語② ご確認ください
「ご確認ください」も「拝見いたしました」とは違う意味合いがあります。「拝見いたしました」は自分が行動を起こすのに対し、「ご確認ください」は相手に行動をお願いする言い方なので言い換えは不可能です。
意味合いとしては「見てチェックしてください」というニュアンスがあり、ビジネスシーンでもよく使用されます。少しフランクな表現ではありますが、一応目上の人や上司にも使える言葉です。
主に、文書や書類をチェックして欲しい時に使用します。
【参考記事】「ご確認ください」の意味とは?|ビジネスシーンで使える例文まで解説します▽
見てもらう時に使える敬語③ ご一読ください
「ご一読ください」と「拝見いたしました」は行動するのが相手と自分という大きな違いがあります。
「拝見いたしました」は自分が見るという行為になりますが、「ご一読ください」は相手が見る行動をお願いする言い方。「ご」という丁寧語がつくので「ご一読」は尊敬語です。
ビジネスシーンでは上司や取引先の担当者などによく使いますね。文章でも使えないことはありませんが、どちらかというと会話言葉です。
使うタイミングは、上司に読んでもらいたい文書などを直接持参して、差し出しながら「ご一読ください」とお願いしたりします。
見てもらう時に使える敬語④ ご査収ください
「拝見いたしました」は自分が見て確認する場合に使いますが、「ご査収ください」は自分から相手に受け取ってくださいとお願いする敬語です。確認するのは自分ではなく相手になります。
「査収」というのは「調べておさめる」という意味があり、「ご」という丁寧語がつくので尊敬語表現ですね。自分より地位が上の人、目上の人に使います。
「ご査収ください」はビジネスシーンでよく使用されるフレーズで、相手に渡す文書なり報告書などを持参して手渡しするシチュエーションが一般的。
ただ渡すのではなく、ちゃんと調べて受け取ってくださいというニュアンスを含みます。
【参考記事】「ご査収ください」の意味から正しい使い方までをまとめました▽
見てもらう時に使える敬語⑤ ご参照ください
「ご参照ください」は「ご」という丁寧語と「ください」という尊敬語表現がつくので、目上の人や上司などに使う敬語です。
「拝見いたしました」は自分が見るのに対し、「ご参照ください」は相手が見るのを前提にしています。「参照」という言葉には「見て照らし合わせる」という意味があり、単に見てもらうだけでなく「確認」や「チェック」の要素が含まれます。
「ご参照ください」を使う場合は、実際に見て照らし合わせる文書なりパンフレットなり、目に見えるものが必要です。
使うタイミングとしては、目に見えるものを持参して、上司などに「これを見て確認してください」という意味を込めて差し出します。
見てもらう時に使える敬語⑥ お目通しください
「お目通しください」はビジネスの現場などでよく使われる敬語です。「お」や「ください」という丁寧語がつくので、自分より目上の人や上司などに対して使用できます。
「拝見いたしました」が自分が見るという動作主体なのに対し、「お目通しください」は相手が見るという動作が主体なので同様の意味での言い換えはできません。
ビジネスシーンでは仕事上の文書やメール、企画書などを見てくださいと上司にお願いするシチュエーションで使います。
「お目通し」にはただ見るだけでなく「ひととおり見る」や「通覧する」というニュアンスが含まれるので、書類などを受け取った相手は確認する意味ですべてを読む必要がありますね。
「拝見いたしました」と言い換えできる類語一覧
拝見いたしましたの類語① 確認いたしました
「拝見いたしました」の類語に「確認いたしました」がありますが、同じ敬語なので目上や上司に使う点は同じです。
ただし意味合いには違いがあり、「拝見しました」は全般的に見るという意味ですが、「確認いたしました」には「確認」や「チェック」という行為が伴います。言い換えることも可能ですが、見るのか確認するのかで微妙に使い方は異なります。
ビジネスの現場では作業をスムーズに進行させるために「確認」や「チェック」が必要なので、そのようなシチュエーションでは「拝見いたしました」ではなく「確認いたしました」が適切です。
「確認いたしました」の使い方
- 昨日受け取った文書ですが、スタッフと手分けしてしっかりと確認いたしました。
- 私が確認いたしました観光案内のパンフレットはこちらになります。
- さきほど作業に必要な機材をすべて確認いたしましたが、問題はございません。
拝見いたしましたの類語② 見せていただく
「見せていただく」には見せてもらうという意味があり、見るのは自分です。「いただく」という敬語表現を使っているので目上の人に使う言葉で、ビジネスシーンでは上司や取引先などに利用します。
例えば仕事に必要な資料を見たい場合に上司から借りるシチュエーションなどで、「見せていただけませんか」のような使い方になりますね。
「見せていただく」は「する」と「いただく」が敬語表現になっているので、「拝見させていただく」と同じく二重敬語です。文法的には間違っていますが、一般的によく使われている点も似ています。
違いは「拝見いたしました」よりも「見せていただく」の方がラフな感じがある点でしょう。
「見せていただく」の使い方
- プロジェクトを進めるにあたって必要な資料なので、見せていただくわけにはいきませんか。
- なかなか目にすることができない機材なので、今後の参考のために見せていただくと助かります。
- ミスをした箇所を見せていただくと、何が原因だったのかがわかると思います。
拝見いたしましたの類語③ 頂戴しました
「頂戴しました」は「拝見いたしました」の類語ですが意味が違います。「頂戴」というのは相手から何かをもらうことで、見るだけの「拝見」とは違った使い方になるので言い換えできません。
ビジネスシーンでは上司から励ましのメールをもらったシチュエーションなどでは、「頂戴しましたメールで元気がでました」のような例文になります。
また、上司から何らかの文書などをもらったときのシチュエーションでは、「確かに頂戴しました」のように確認報告の意味合いも。
「頂戴しました」は「拝見いたしました」と同じく目上の人に対して使う敬語ですが、相手から何かをもらうというニュアンスが違いますね。
「頂戴しました」の使い方
- 部長から頂戴しましたサポートのおかげで、事業を無事に進めることができ感謝申し上げます。
- 部品が不足して困っておりましたが、昨日不足分を確かに頂戴しました。
- 部員一同、教頭先生からの差し入れをありがたく頂戴しました。
拝見いたしましたの類語④ 受領いたしました
「受領いたしました」は金品や大事な物を受け取ったという意味で、目上の人や先輩に対して使う敬語表現です。ビジネスでは頻繁に使われるので、使い方を覚えておくと便利な表現です。
請求書が届いたことを先輩に知らせるシチュエーションでは、「さきほど確かに受領いたしました」のような例文になります。
相手の気持ちやサポートなど抽象的なものが対象ではなく、具体的なものを受け取ったときに使う言葉が「受領いたしました」です。
「拝見いたしました」とは意味が違っており、相手から送られたものに対して受け取ったと伝えるのが「受領いたしました」という言い方ですね。
「受領いたしました」の使い方
- 先日お送りしました請求書の金額ですが、さきほど確かに受領いたしました。
- 先輩から受領いたしました入会金ですが、金額が多かったのでその分をお返ししなければなりません。
- かねてよりお願いしておりました文書ですが、先輩からさきほど受領いたしました。
「拝見いたしました」の英語表現
- I saw(拝見しました)
- I have read(拝見しました)
- I read that(拝見しました)
- I viewed the picture(写真を拝見しました)
- I had a look at(拝見しました)
- I was allowed to see(拝見させていただいた)
英語で「拝見いたしました」を表すには、saw(見た)を使うのが最も一般的です。
「拝見する」の場合はI seeと現在形に。I sawと使えば「拝見しました」という意味になります。read(読んだ)という言葉も同じく「拝見しました」の意味に使えますね。
写真などを見るときはviewedを、「させていただく」と丁寧な表現はallowed toのような言い回しがふさわしいです。
「拝見いたしました」はビジネスでも重宝するので、きちんと使いこなしましょう!
ビジネスでよく使われる「拝見いたしました」について説明しました。文法的には正しくない二重敬語ですが、すでに一般化しているので使用しても問題ありません。
その他にも同じような使い方をする類語にも触れましたので、例文などを見てビジネスの現場で使う場合の参考にしてください。
英語ではsawとreadを知っていれば、どのシチュエーションでも使えるため、しっかりと覚えておきましょう!
【参考記事】「ご助力」の使い方|言い換えできる類語から例文まで解説します▽
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