"了承を得る"の意味/使い方。メールで使える例文付き【ビジネス敬語ガイド】
「了承を得る」の意味とは?
「了承」とは、「ある物事の原因や状況を把握して受け入れること」を意味します。
「了承」は職階の上下、顧客などの関係性に関わらず使えるフラットな語です。そのため誰に対しても使えるのですが、相手に対する敬意は含まれません。
また、「得る」も相手に対する関係性を含まない、ごく一般的な語に過ぎないのです。したがって「了承を得る」は状況を表す言葉でしかなく、了承した当人への敬意は含みません。
ビジネスの場ではビジネス相手に対して敬意を持って遇するのが当たり前なので、「了承を得る」の場をわきまえない使い方は周囲に失礼な人だと思われてしまいます。
「了承を得る」のビジネス的な使い方とは?
「了承を得る」は相手に対する敬意を示す敬語や謙譲語ではないので、了承した当人がいる場は当然のこと、当人がいなくても社外などの公の場で使うのは不適切です。
使い方としては、会社の部課内など組織内での報告や連絡等に使うのが望ましいでしょう。また、ビジネスでの交渉や調整、折衝の結果によりこちらの条件を受け入れさせた場合にも「了承を得る」を使います。
結果的に双方にとり最良の結果でないこともあり、こちらの都合や相手の心証も考慮して、使う場には十分注意しましょう。
「了承を得る」を使ったビジネスメールの例文とは?
- 上司から了承を得られるよう掛け合ってみます。
- 先日の修正案にて先方からやっと了承を得られましたので、これから取り掛かる予定です。
- 会議室のプロジェクターの使用については、総務課から了承を得ています。
「了承を得る」は目下の者が目上の人より了承をもらうときに使われることが多く、例文のように部下が上司から了承をもらったり、業務上顧客から了承をもらったときに使います。
ただ、目上の人から了承をもらっているにもかかわらず、「了承を得る」は了承した相手に対する敬意を表す敬語ではありません。
場面によっては了承してくれた目上の人に対する配慮がないと思われることもあるため、「了承を得る」の使用は例文と同様に内部での連絡や報告にとどめておくようにしましょう。
【「例文」で使われている敬語】
・「先日」ってどのくらい過去を示すの?正しい使い方/類語まで解説します
了承を得るの類語① 「了解を得る」との違いとは?
「了解」とは「理解する」の意味ですが、もっと踏み込んで「相手の意向や事情をわかった上で認める」ことも指します。
「了承」は事情をくんで現状を受け入れ認める意味になるため、単に「理解する」という意味はありません。
この1点の違いを除けば、もともと「了解」と「了承」はほぼ同義の類語のため、「了承を得る」と「了承を得る」は同じ意味の表現でした。
しかし、最近「了解」という言葉がカジュアルな「わかった」と同じような使い方をされることが多くなり、ビジネスのような改まった場で使うのを避ける傾向が出てきています。
いずれにせよ、これらの2語は社内など組織内での使用が想定されますが、相手との関係性によっては類語の「了承を得る」を使ったほうが無難です。
了承を得る類語②「承諾を得る」との違いとは?
「承諾」とは「相手の意見や希望、要求を聞き入れ、受け入れること」、また、「申し込み内容通りに契約を結ぶ意思を表明すること」です。
「了承」は事情をわかったと認めることですが、「承諾」は事情を承知して聞き入れ、引き受ける意味になります。
つまり、「了承」は状況を認め異存のないことを表明するにとどまりますが、「承諾」は相手の申し出の通りに行い、責任を引き受けたり保証することまで意味するのです。
そのため、「承諾を得る」は「了承を得る」より重い意味を持ち、取引や契約などビジネスで重要な約束事や手続きを認めるときに使います。
「承諾」と似た言葉に、「受諾」がありますが、これは公的な機関が約束事を受け入れることで、「承諾」は私的な承認行為のことです。
目上の人から「了承を得る」時に使える敬語表現とは?
了承を得る時に使える敬語① ご了承くださいますよう、/ご了承いただきますよう、
「ご了承くださいますよう、」と「ご了承いただきますよう、」は、相手から了承を得るときに使う非常に丁寧な表現です。
尊敬語の「ご~ください」と丁寧語の「ます」をつけて、相手に対し最大限の敬意を表しています。「よう」は助動詞の「ようだ」の特殊な活用形で、依頼や軽い命令の意味を表す語です。
上司や顧客など目上の人に対して問題なく使え、メールなどの文書でよく使用されるほか、相手に口頭で伝えるときにも使えます。
「ご了承くださいますよう、/ご了承いただきますよう、」の使い方
- 明日は定休日となっております。ご了承いただきますようお願い申し上げます。
- 悪天候のため実施を延期させていただきます。何卒ご了承くださいますようお願いいたします
- せっかくのお話ですが、事情により見送らせていただきます。ご了承くださいますようお願いします。
こちらの事情を伝えて、相手にとり不都合な、もしくは相手の期待に添えないことを了承してもらえるようお願いするために使います。
了承してもらいたい内容をただ述べるのではなく、例文のように先にこちらの事情を伝えて、相手の希望に沿えないことを理解してもらうようにしましょう。非常に丁寧な言葉で、メールなどの文書で使ったり、口頭でも使えます。
【「例文」で使われている敬語】
・「ご了承ください。」は目上には使えない?上司に使える正しい敬語を解説します
・「送らせていただきます」は正しい敬語?言い換えできる類語まで徹底解説
了承を得る時に使える敬語② ご容赦くださいますよう、/ご容赦いただきますよう、
業務上のミスや不手際はもちろんですが、ビジネスでは価値観の違いや行き違いから、相手の意に沿わずお詫びしなくてはならないことも生じます。
「容赦」とは「ゆるすこと」「大目に見ること」で、尊敬語の「ご~ください」と丁寧語の「ます」をつけて最大限の敬意を表した言い方です。
そのため、目上の人に対して使うのは問題はありませんが、相手と非常に悪い関係になったときに使わざるをえない言葉のため、メールであってもできるだけ使わずに済ませたいですね。
「ご容赦くださいますよう、/ご容赦いただきますよう、」の使い方
- 私どもの不手際により、たいへんご迷惑をおかけしました。何卒ご容赦くださいますよう、お願い申し上げます。
- 事情をご賢察のうえ、悪しからずご容赦いただけますよう、お願い申し上げます。
- ご用意しておりました景品の配布は好評により終了しました。ご容赦くださいますよう、お願いいたします。
「ご容赦くださいますよう、/ご容赦いただきますよう、」は、こちら側の不手際を詫びたり誤解等を解くために使うことが多く、単に状況を認めてもらうのとは違います。
ほかの類語のような感覚で多用すると、こちら側にいつも問題があるように受け取られますので注意しましょう。
ただし、例文のように日本語的な婉曲用法として、自分を低めて、あたりのよい柔らかい印象にする使い方もあります。メール等の文章で使うことの多い改まった語です。
【「例文」で使われている敬語】
・「お願い申し上げます」の丁寧な例文|目上に使えるビジネスメール例までご紹介します
了承を得る時に使える敬語③ お含みおきくださいますよう、
「お含みおきくださいますよう、」は、「含み置く」に敬語の「お~ください」をつけた非常に丁寧な言い方です。そのため、上司や顧客などの目上の人に対して使うのに差し支えありません。
「含み置く」とは、「心に留めておく」「事情をよく理解してあらかじめ了解しておく」意味になります。
何らかの事が起こる前に報告したり、事前に伝えていた事情を適用する際に通告して、了承を得るために使います。
現状すでに起こってしまったことでなく、今後起こることを了解してもらいたい場合に使うことが多いです。どちらかというとメール等の文書で使うほうが多いでしょう。
「お含みおきくださいますよう、」の使い方
- 悪天候により運行に遅れが発生し、到着まで時間がかかりますこと、お含みおきくださいますよう、何卒お願い申し上げます。
- 年末年始の休業のため発送は年明けになりますことを、お含みおきくださいますよう、お願い申し上げます。
- サービスの利用にあたりまして、以前同意いただいた規約をお含みおきくださいますよう、お願いいたします。
「お含みおきくださいますよう、」は、これから伝える事柄に関する事情や約束をあらかじめ知らせておき、了承を得るときに使います。
使い方としては、例文のように「理由」+「~(相手にとって不都合な事柄)をお含みおきくださいますよう、」+「~お願い~」という語順が正しいです。
理由を省き、「~(不都合な事柄)をお含みおきくださいますよう、」とするのは間違いなので注意しましょう。特にメール等のビジネス文書は後々残るものなので、きちんと理由を記載しておきます。
【参考記事】「お含みおきください」の使い方とは?例文と一緒に分かりやすく説明します▽
了承を得る時に使える敬語④ ご承知おきくださいますよう、
「ご承知おきくださいますよう、」は、「承知」に「心をとどめる」意味の「置く」と敬語の「ご~ください」をつけた敬語で、目上の人に対して使うのは問題ありません。
しかし、日常会話と違って敬語は頻繁に使われるものではないため、謙譲語の「承る」の連想から目上の人に対して使うのはふさわしくないと感じる人もいるようです。
類語として「ご承知おきください」がありますが、場合によっては有無を言わさない印象を与えることもあるため、ビジネスでは「ご承知おきくださいますよう、」を使うほうがよいでしょう。
「ご承知おきくださいますよう、」の使い方
- 管理会社より20時以降は正面入口を閉鎖し、それ以降は通用門を使うようにとのことですので、ご承知おきくださいますよう、お願いいたします。
- 来週は休暇のため不在となりますこと、ご承知おきくださいますよう、お願い申し上げます。
- 諸般の事情により、本サービスは〇月をもって終了いたしますので、ご承知おきくださいますよう、お願い申し上げます。
「ご承知おきくださいますよう、」の「承知置く」は、「ずっと心にとめておく」という意味があります。そのため、例文のようにすでに決められたことや公知のことを改めて了解してもらうことに使われることがほとんどです。
これから起こることに関しては、その事柄を知らせるために使う意味合いが強く、上司など目上の人に対して了承をもらうというより通知する意味合いが強くなります。
【参考記事】「ご承知おきください」の正しい使い方を例文付きで解説▽
了承を得る時に使える敬語⑤ ご理解くださいますよう、/ご理解いただけますよう、
「ご理解くださいますよう、/ご理解いただけますよう、」は、こちらの事情をくんでくれるようお願いするときの敬語表現です。
その意味から派生し「こちらの事情を広い心でとがめず許してもらうこと」との意味も持ちます。
「ご~ください」「ご~いただく」と非常に丁寧な表現の敬語なので、目上の人に対して使ってもよいのですが、「とがめず許してもらう」との意味があるため、相手との関係を考えてできるだけ使わずに済ませましょう。
「ご理解くださいますよう、/ご理解いただけますよう、」の使い方
- 大変申し訳ありませんが、ご理解いただけますよう、お願い申し上げます。
- ご不便をおかけいたしますが、ご理解くださいますようお願い申し上げます。
- 天候不順の場合は収穫できず、ご購入できない場合がございます。予めご理解くださいますよう、お願い申し上げます。
この言葉を使うのは、相手にとって不都合な何らかの事柄がすでに起こったり、事情が生じた場合になります。
「ください」は相手が厚意でしてくれる行為を表し、「いただく」はこちらが「してもらう」ことです。
何らかの不都合を相手に了承してもらうことになるので、本来は「ください」が正当な使い方になりますが、ビジネスの現場では例文のように「いただく」を使用するのも許容されています。
「了承を得る」の英語表現
- get approval(同意を得る/承認を得る)
- obtaine approval(承認/認可を得る)
- Please note (that)~(~をご了承ください)
- Please understand~(~をご了承ください)
- Please excuse~(~をご容赦ください)
- Please forgive~(~をご容赦ください)
日本語の「了承」にぴったり当てはまる英語はありませんが、"approval"のほか、”agreement”、”acknowledgement”等も使えるでしょう。
「事情をくんで理解する」というのは日本人的な発想で、英語にはこのような語義はなかなか見つかりません。
「了承を得る」は、使い方に注意しよう!
「承認を得る」は当人に対する敬意表現ではないため、くれぐれも組織内での連絡や報告で使うことにとどめましょう。
承認を得るための表現には様々ありますが、言葉によってニュアンスの違いがあるので使用する際には注意してください。
【参考記事】「了承」の使い方ガイド。目上の人に使える表現とは?▽
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