「彼女の下した決断。訪れる別居生活」僕は彼女に妊娠を告げられた|第11話

小嶋 2017.08.22
もしも彼女が妊娠したら、男にはこんな現実が待っている。父親になる男のリアルに描く体験記「僕は彼女に妊娠を告げられた」第11話。
僕は彼女に妊娠を告げられた第11話

父への妊娠報告を無事に済ませて、安堵していた妊娠10週目。


事態は思わぬ方向に動きました。


その日もいつものように仕事を終え、駅に向かう直前にふとスマホを開いてみると、先に仕事を終えていた彼女から一通のLINEが届いていました。


「お疲れ!帰りにちょっと話したいことある。」


どこか改まった文面に、少し戸惑いつつ、怯えつつ、


「今終わった!どこいる?」


と返信すると、職場の最寄り駅にいるとのこと。


僕は急いで駅に向かうことになりました。



「ごめんごめん!待った?」


改札前で待っていた彼女のところへ駆け寄ると、


「そんなかな?全然平気やで!」


ちょうど彼女は近くで買い物をしていたので、あまり待たせることなく合流できました。


「とりあえず、なにか食べて帰る?」


お腹も空いていたし、なにより話の内容が気になっていたので、食事を済ませてから帰ることを提案してみました。


彼女も快諾してくれたので、ゆっくり話せそうな近くのレストランへ。


席につき、オーダーを済ませると、彼女はおもむろに口を開きました。



「実は今日な、職場に辞めるって言ってきた」


以前から、結婚や出産に対する理解が厳しい職場だと耳にしていたので、周囲の反応を心配すると、


「妊娠とは言わず、持病が再発しそうなんで、大阪帰って治療することにしましたって言った。そしたらどうにかOKもらえたわ」


やはり職場には妊娠を告げなかったらしく、今提出しているシフト分と、月末セールは働くという条件のもと、なんとか退職を認めてもらえたそうです。


改めて女性社会の厳しい現実を目の当たりにした気がしました。


「なんだ!それならよかったわ。話があるって言ってたからずっとヒヤヒヤしてたんだよね(笑)」


頃合いをみて退職を申し出るとは前々から聞いていたので、驚きはそこまでありませんでした。



彼女の話の内容を聞いて、すっかり安堵していると、


「実は話ってそれだけじゃないんよ」


他に全く思い当たる節はなく、恐る恐るその内容を尋ねてみると、


「月末で退職したら、出産まで半年以上あるやんか?それでこっちにいてもお金かかるだけやし、余計な心配もかけるやろうから・・・。せやから、安定期入ったら大阪に帰ろう思ってる」


「えっ!?どういうこと!?」


急な話の展開が理解できずに驚いていると、


「ずっと言えてなくてごめんな。実は、里帰り出産しようかな思って。その方が体調的にも、お金的にも良いやろうし。」


彼女は続けます。


里帰り出産については少しだけ話題に上ったことがありましたが、ほんの一瞬だったこともあり、全くのノーマークでした。


「大阪で産むってこと?えっ、帰るとしたらいつ!?」


状況が飲み込めず、僕は次々と彼女に質問してしまいました。


「うん・・・。やっぱ初産って不安やし、母親が傍に居たほうが安心かな思って。帰るとしたら、体調にもよるけど、安定期やから、妊娠5ヶ月から7ヶ月の間とかかな」


「5ヶ月だとしたら、もうすぐじゃん!」


彼女の里帰り出産まで残りたった2ヶ月ほど。


思ったよりも時間がないことに僕は愕然としてしまいました。


とはいえ、彼女の体調が最優先です。


正直な話、引き止めたい気持ちは山々でしたが、


「実家の方が快適に過ごせるなら、そうすればいいんじゃない?」


ここは無理にでも冷静さを取り戻して、彼女の里帰り出産を後押ししました。


彼女は申し訳なさそうに頷きながら、「具体的な日程は、これからお医者さんと決めていくね」と言いました。



職場や父への報告も難なく済ませて、彼女の退職日も決定し、心の余裕が少しずつ芽生えてきたのも束の間、彼女と一緒にいられるまでのタイムリミットが急遽決まることに。


残り数週間で彼女になにをしてあげられるだろうか。


里帰り中、彼女は大丈夫だろうか。


生まれるまで別居状態になっても、ちゃんと家族を維持できるのか。


もちろん表には出さないし、誰にも言えないけれど、ぶっちゃけ男として恥ずかしいほどに心配事が尽きません。


次から次へと浮かぶ不安や疑問が、父親になるであろう僕の脳内を支配していくのを感じました。


<続く>


僕は彼女に妊娠を告げられた

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