「結婚すると分かる、“放任”という親の優しさ。」僕は彼女に妊娠を告げられた|第19話

小嶋 2017.11.09
もしも彼女が妊娠したら、男にはこんな現実が待っている。父親になる男のリアルに描く体験記「僕は彼女に妊娠を告げられた」第19話。

実家での対面を無事に済まして、僕たちは両家で食事をする会席料理のお店に移動しました。


コース料理を予約していたので、ドリンクだけ先に頼むことに。


「めでたい席ですし、お酒でも飲みましょうか(笑)」


彼女のお母さんの提言で、僕と母もビールをオーダーします。


妊娠中の彼女と運転する父は、ソフトドリンクを注文。


手短に乾杯を済ませ、しばし談笑していると、



「そういえば、籍入れるのって来週じゃなかったか?」


今まで口数の少なかった父親が、唐突に入籍について切り込んできました。


「保険とか扶養の都合もあるから、来週の水曜日に入籍しようと思ってるよ」


父にそう切り返すと、


「そっか!来週入籍するんやったな(笑)ほな大阪戻ったら、急いで必要な書類送らな!」


僕と父とのやり取りを耳にして、ハッとした義母が彼女へ話しかけます。


「戸籍謄本だけ送ってあげてください!謄本さえあれば、大丈夫だと思うんで(笑)」


母も僕と父のことは意に介さず、彼女のお母さんへ必要な書類を伝えます。


「でも、なんでまた入籍日なんか聞いたの?」


盛り上がっている女性陣を横目に、質問の真意を父親に伺うと、


「仕事で役所に行く事多いから、必要なら婚姻届を貰ってきてやろうかと思ってよ」


普段は寡黙で厳しい父ですが、この時ばかりは少し照れているのが見てて分かりました。


「なるほどね。それなら、貰ってきてほしい!」


珍しく優しい父に、素直にお願いすることに。


「分かった。貰っておくから、来週はうちに寄って書いてから区役所行けよ。時間合えば送ってやれるし!」


そして入籍予定日には、実家に一度寄って、婚姻届を記入してから区役所へ行くことで話がまとまりました。



その後も料理を堪能したりお酒を嗜んだり、なかなか盛り上がりました。


緊張した雰囲気ではじまった両家の顔合わせも、気が付けば和やかな雰囲気になっていて、あっという間にお開きの時間が近付きました。


両家顔合わせのお会計は、お互いの家で割るか、親をもてなす意味で子供たちが出すのが通例と言います。


ただ今回に関しては、東京へわざわざ出向いてもらったこともあり、僕が負担させてもらいました。


「今日は本当にありがとうございました。今後ともよろしくお願いします。次は大阪でやりましょう(笑)」


次回の約束を取り付けて、お店を後にしました。



本来「顔合わせ」とは、お互いの家族が親睦を深める大事なイベントです。


会場を押さえたり、料理も事前に予約しておいたり。更に言えば、“結婚記念品”まで用意しておくのが一般的と言われます。


もちろん、お酒の有無や服装の事前打ち合わせ、費用の分担など、細かい部分にも気を配らないといけません。


僕らの場合、きちんとした形式を取れませんでしたが、それでも、両家の親のサポートのおかげでとても有意義な時間を過ごせました。


幼い頃から、それこそ多感な時期は、完全に放任主義な親に対して憤りを覚えてた時期もありました。


兄たちと歳が離れている分、両親は僕に興味がないと拗ねていた時期も短くありません。


末っ子だから、甘えたい気持ちも大きかったと思います。


いざ自分が親になるタイミングになると、その“放任”こそ両親の優しさだったのかもしれないと身に沁みて感じます。


籍を入れる時期にしても、こういった顔合わせにしても、


「お前らが納得しているなら何でも大丈夫だよ。」


そう言葉には出さないものの、嫌な口出し一つせずに私たちを見守ってくれます。


「子供をしっかりと育てるのはもちろん、少しずつ親孝行もしていかないとな。」


両家揃った食事会を振り返りながら、親への感謝を再確認した僕は、自分も立派な親になって、きちんと親孝行をしようと改めて思うのでした。


<続く>


僕は彼女に妊娠を告げられた

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