"真摯"の意味/使い方とは?"真摯に受け止める"など例文も|ビジネス敬語ガイド
「真摯」の意味とは?
「真摯」は「しんし」と読み、「真面目でひたむきなこと」「物事を一心に行う様子」の意味です。
「真摯」の「真」は「嘘や偽りでないこと」「まこと」「本当」を意味し、「摯」は、捕らえられ手かせをはめられ、ひざまづいている罪人を手でしっかりとつかんでいる様子を表しています。
「摯」の字からは罪人捕縛に真剣に対処し、罪人をしっかりと捕まえているという揺るぎのない真面目さがうかがえるでしょう。「摯」に「真」の字を合わせることで、真面目に懸命に物事を行うのが語源と言われています。
ビジネスにおける「真摯」の正しい使い方とは?
「真摯に受け止める」「真摯に取り組む」「真摯な態度」といったように、物事に対して何らかの行動を起こす意味に使われることが多いです。この語を使うことで、話し手が為そうとする行為に対して真剣に、誠実に取り組む姿勢を強く印象づけられるでしょう。
「真摯」は名詞や形容動詞に分類されますが、諸説あって厳密には分かちがたいところもあります。
「真摯」は不祥事や差し迫った危機など、ビジネス上非常に重要な局面での対する姿勢を表現する際に使うほか、現在進行中のプロジェクトに対する意欲や、新規事業での意気込みの表明などでも使われます。
ビジネスシーンで使える「真摯」の丁寧な例文
真摯の使い方① 真摯に受け止める
- ご指摘を真摯に受け止め、今後はこのようなことがないよう対応に努めてまいります。
- 皆々様のご意見を真摯に受け止め、在庫商品を回収します。
- 今回の事態を真摯に受け止め、改善してまいる所存です。
- 今回の事件を真摯に受け止め、会社全体で対処にあたってまいります。
- 環境の変化を真摯に受け止め、事業の方向転換を図ります。
トラブルの発生や、コンプライアンス違反、職責や業務目標への未達、新規展開への抱負を求められたときなどに、例文のように「真摯に受け止める」を使うことがあります。
ビジネスは他人と関わりで進んでいくため、周りの望みや期待と大きく乖離したり、法令違反を起こしてしまっては大きな批判を受けることでしょう。今後の抱負を問われる場面では、仕事への意欲を語ることで周囲の協力を得ていくことも必要です。
いずれも今後の仕事に対する姿勢が問われる重要な局面で「真摯に受け止める」が使われます。
真摯の使い方② 真摯に向き合う
- どんな結果にせよ、真摯に向き合うことが必要です。
- 困難は多いですが、顧客の声に真摯に向き合うことで会社を成長に向かわせましょう。
- 環境変化に真摯に向き合って乗り越えていきましょう。
- 私は自分が出した結果と真摯に向き合い、改善を重ねてこのような実績を残しました。
- 問題に真摯に向き合い、再発防止に尽力してまいります。
「真摯に向き合う」対象としては、顧客や上司などのビジネスで関わりを持つ人々や、過去の実績、課題、事業環境など多種多様なものがあります。
しかし、いずれも期待に添わないものだったり、好ましくない状況が多く、関係者が行く末を危ぶむなかで、「真摯に向き合う」を使うことで事態打開への強い意欲を持っていることを伝えられます。
ビジネス継続の意思や、不利な環境下でも努力をする意欲を表明し、関係者からの信頼をつなぎとめ、次のステージへの足掛かりとしたいものです。
真摯の使い方③ 真摯に取り組む
- 彼の仕事に真摯に取り組む態度が上司からの高い評価につながっているようです。
- 新入社員なら何事にも真摯に取り組みましょう。
- 彼女は育児と仕事の両立に真摯に取り組んでいます。
- ○○社は全社一丸で経営課題に真摯に取り組み、最近では顧客からの評価も良くなっているそうです。
- 今回の新規事業の推進に、社員一同真摯に取り組んでまいります。
「真摯に取り組む」対象には、ビジネスでの課題や問題、目標のほか、個人的な課題など、広い意味で結果が求められる事柄があります。
「真摯に向き合う」と違い、ビジネスで関わる顧客や上司、同僚などの関係者は含みません。「取り組む」と表明する以上、取り組みの目標や過程、現状はどのようになっているのかを合わせて伝えるとよいでしょう。
それなら周囲からの理解や納得が得られ、その後のビジネスの展開に良い影響をもたらすはずです。
真摯の使い方④ 真摯な対応
- 当たり前ですが、顧客のクレームには真摯な対応が求められます。
- 最近判明したこの問題に対して真摯な対応を取るべきです。
- この問題に対しての真摯な対応をお願いします。
- 不良品の問題が発生しましたが、全社を挙げた真摯な対応により、社外への影響を出さずに済みました。
- この度の御社の真摯な対応に感謝申し上げます。
「対応」という語があるため、何らかの課題や問題がすでに生じていたり、目標設定がされていることを前提に「真摯な対応」が使われます。
「対応」の語を持ち出すからには、好ましくない、もしくは不及の事柄に関して対応策を合わせて伝えて、ビジネスに関わる人々にこれからの見通しが立つイメージを持ってもらうことが重要になるでしょう。
現状の課題や問題、目標に対し「真摯」に考えていることをしっかり伝えないと、「真摯な対応」が果たして実行されるのか疑問に思われてしまいます。
【「例文」で使われている敬語】
・「感謝申し上げます」の意味とは?上司など目上の人への使い方まで解説!
真摯の使い方⑤ 真摯な態度
- 今回の問題に関し、真摯な態度で臨んでまいりたいと存じます。
- 苦情の電話に対して、真摯な態度で臨み、最後には顧客の信頼を勝ち取りました。
- 彼女は真摯な態度で営業に取り組み、トップの成績を残しました。
- 真摯な態度で仕事に向かい、無事新規事業を軌道に乗せることができました。
- 政治改革を訴える彼の真摯な態度に皆が共感しました。
「真摯な態度」は話し手もしくは言及された当人や組織の状態を説明する言葉です。
次に説明する「真摯な姿勢」とほとんど全く同じ意味や使い方になります。「真摯な対応」ほど、今後についての説明を詳しく求められることはありません。しかし、これからの抱負や現状の進捗、真摯な態度で臨んだ末の結果や実績をつけ加えると、相手からの信頼感が増すことでしょう。
「真摯な態度」は、ビジネスでの自らの行為を言う場合、目標に向かう意欲として語ることが多く、就活でもない限り実績とともに使うことはないでしょう。
【「例文」で使われている敬語】
・「存じます」の意味/使い方|ビジネス上でも使える丁寧な例文まで解説!
真摯の使い方⑥ 真摯な姿勢
- 仕事に対して真摯な姿勢で臨み、ほかの社員の模範となれるようがんばります。
- 彼は仕事に向かう真摯な姿勢が認められ、契約社員から本採用になりました。
- 品質に対する真摯な姿勢が実を結び、コスト削減の実現や顧客から大きな信頼を寄せられるようになりました。
- 彼の仕事に対する真摯な姿勢には感服します。
- そのアーティストの作品に対する真摯な姿勢には心を打たれます。
「姿勢」とは物事に対する心がまえや態度のことです。「真摯な姿勢」とすることで、ビジネスの課題や問題、目標に対する真面目でひたむき、誠実な態度がうかがえる語になります。
「真摯な姿勢」の意味や使い方は、「使い方⑤ 真摯な態度」で説明したのと全く同じです。
他人や会社などが物事に取り組んでいる様子を評価したり、自分が課題や問題、新しく行う仕事に関して意欲や抱負を表明する際に使います。例文ではビジネスの危機的で重要な局面の表現を取り上げていませんが、その際に全く用いられないわけではありません。
「真摯」と言い換えできる類語一覧
真摯の類語① 真面目
「真面目」とは「真剣なこと」「誠実なこと」「実直なこと」の意味です。
「真摯」とよく似ていますが、──「真面目」はある人物の「性格」もしくは組織の「社風、行動特性」を表すのに対し、「真摯」はある人物の「態度」もしくは組織の「姿勢」を表します。
したがって、「真面目」は単に行動の性質を表すのに対し、「真摯」はある程度大きな目標、結果に向かう態度を指し、意味が微妙に異なるため使い方に気をつけましょう。
「真面目」はルーティンワークのような細かい動作から経営活動にまで使えますが、ルーティンワークのような個々の行為に「真摯」は使いません。
「真面目」の使い方
- 今季の営業目標の達成に向けて真面目に取り組んでいます。
- 北京支店への移動が決まったため、中国語学習に真面目に取り組んでいます。
- 課員全員で問題意識を持って、業務改善の道筋を真面目に考えています。
真摯の類語② 一途
「一途」とは、「ほかを考えず、一つのことに打ち込むこと」「ひたむきな様子」という意味になります。
「真摯」はある課題や問題、目標に対して大きな視点から行動を一所懸命にすることに対し、「一途」は周囲が見えなくなり、没頭してそれに打ち込むことです。
「真摯」は社会的な意義のある仕事や特定の人に対する義務など、人のためという視点がありますが、「一途」は個人的な信念によりあることをひたすら追求するという意味合いで使われます。
「一途」の使い方
- 彼は功績を上げようと一途に仕事に打ち込んでいるようです。
- 職人さんは少しでも早く技術を習得したいと、親方の元で一途に修行に打ち込んでいます。
- 一からシステムを覚えるのは大変でしたが、早く同僚に追いつきたいとの一心で一途にプログラミングを習得しました。
真摯の類語③ 真剣
「真剣」とは「一所懸命に物事を行う様子」「本気」のことを意味します。
「真摯」は比較的大きな目標や問題に対することを前提としますが、「真剣」は態度そのものにフォーカスした語で、対象となるものを特に問題にはしていません。
「真摯」は周囲の期待や要求に応える義務のある場面で使われることが多いため、どう取り組むのかまで伝えないと相手に納得してもらえませんが、「真剣」は特に場面を問わずに使えるのでシンプルに伝えるだけでもOKです。
「真剣」の使い方
- 新入社員研修では参加者全員が真剣になって取り組みました。
- 会社での業務の幅を広げるため、これから自己研鑽に真剣に取り組んでいこうと考えています。
- 自社のサービス改良や利用促進のため、顧客の声に真剣に向き合います。
真摯の類語④ 本気
「本気」は「冗談や遊びでない、本当の気持ち」「真剣な気持ち」を意味します。
「真摯」はビジネスでの重要な局面で使われるかしこまった語ですが、「本気」は日常のカジュアルな言葉として使われることが多いです。そのため、「本気」は社内の親しい関係にある同僚などに対して使い、対外的な改まった場面ではあまり使いません。
例文では意味合いとして「真摯」に比較的近い文をあげていますが、目上や顧客相手などフォーマルな言葉遣いが求められる場面では、ラフに聞こえてしまうため本気は使わないのが無難と言えます。
「本気」の使い方
- 顧客の利便性の向上のため、サービス開発に本気で取り組んでいます。
- 既存顧客のいない新規事業部では、本気で顧客の獲得のためにたゆまぬ努力をしています。
- 売上向上のための改善策がないか、本気で議論を戦わせました。
真摯の類語⑤ 懸命
「懸命」は「力の限り頑張ること」「全力を尽くすこと」です。
「真摯」と同様、課題や目的、問題などに対して努力することをいいます。「真摯」と違い、ビジネス以外にも日常の言葉としても使われており、あらゆる場面で使える汎用的な便利な言葉です。
「真摯」のように行動の証左や具体策の説明は必須とされませんが、意欲や抱負、具体的な行動を伝えると好感を持たれます。「懸命」は「力を尽くして頑張る」意味があり、「一途」とやや似ている面がありますが、懸命のほうがよりビジネス向きです。
「懸命」の使い方
- 今回いただいた賞に恥じぬよう、今後も懸命に仕事に打ち込んでまいります。
- 月次目標達成のために、毎日懸命に顧客先を回りました。
- 入社したばかりですが、早くひとり立ちできるよう懸命に努力いたします。
真摯の類語⑥ 熱心
「熱心」は「物事に情熱を打ち込むこと」「心を込めて一所懸命にすること」を意味します。
物事に真剣に取り組む意味は同じですが、「真摯」と違って場面や対象を特に問わず、日常会話でもよく使われる言葉です。
物事に対する方策より取り組む気持ちや態度を重視しており、類語の「一途」と同様の意味を持ちます。ただ、「一途」は周囲を気にせずに目的に向かって邁進するとマイナスイメージや感情的なニュアンスも持ち合わせますが、熱心はそのようなマイナスイメージがないため、非常に使いやすい言葉です。
「熱心」の使い方
- 将来を見据え、目の前にある仕事に熱心に打ち込んでいます。
- 会社の売上を上げるため、熱心に新規開拓に取り組む所存です。
- 将来的に海外の仕入れ業務に対応できるように、熱心に語学学習に取り組んでいます。
「真摯」の対義語/反対語って何?
真摯の対義語① 適当
「適当」とは、もともと「条件や目的、要求に当てはまる/かなう/ふさわしい」、「程度がほどよいこと」の意味ですが、現在では「いいかげんなこと」「その場をつくろう程度なこと」という悪い意味でも使います。
文脈によって判断がつくことも多いのですが、相反する2つの意味があるため誤解を生みやすい言葉です。ビジネスで対外的に使う場合は、別の言葉に言い換えると余計なトラブルを生まずに済みます。ちなみに、「真摯」の対義語としての意味は後者の意味です。
真摯の対義語② 不真面目
「不真面目」は「真面目」の反対語で、「真摯」の対義語でもあります。
「真面目」と「真摯」では、「行動の性質」と「目標や問題に向かう態度」といった違いがありますが、「不真面目」も行動の性質を表現するため、行動内容を形容するのに使うのが適切です。
「適当」よりも程度が悪い状態で、ビジネスとしては問題にならないでしょう。「不真面目」は日常会話でもよく使われますが、「真摯」は非常に改まった語で、あまり頻繁には使いません。
真摯の対義語③ 怠惰
「怠惰」とは、「怠けること」「怠けてだらしないこと」の漢語です。
「怠惰」は「適当」のようにいくらかでも仕事をするわけではなく、何ら仕事をしないことをいいます。「不真面目」のような、ひどいと悪い方向に行くことはないにしても、ビジネスでは人から対価を受け取るからには請け負った仕事を果たす義務があるのは当然です。
「真摯」は賞賛される態度になりますが、「怠惰」は仕事の依頼者からは非難されてしかるべき態度になります。
真摯の対義語④ いいかげん
「いいかげん」は、「適当」とほぼ同義の語になり、いい意味と悪い意味の両方を持っているのも共通します。
「いいかげん」が持つ意味とは、「仕事をやり遂げずに途中で投げ出すこと」「投げやり」「おざなり」の悪い意味と、「ほどよい程度」「手頃」という良い意味の2つの語義です。
「真摯」の対義語となるのは悪い意味のほうで、「真摯」が何らかの事物や目標に最後まで取り組むのに対し、「いいかげん」はその場を取り繕えればいいとみなす中途半端な態度が垣間見えます。
真摯の対義語⑤ 不誠実
「不誠実」は「偽り」「不真面目」「真心が感じられない様子」を表します。
「不誠実」は物事に対する態度を表す語で、「真摯」の対義語としてはふさわしいでしょう。「不真面目」のように具体的な行動の性質を表現するにとどまらず、課題や問題、目標に反して悪い意図を持つといった、一段と悪いイメージになる言葉です。
ビジネスの相手方に「不誠実」と思われたら、信頼もなくなり非常に危うい事態に陥ります。気をつけましょう。
「真摯」の英語表現
- sincerity(正直、表裏のないこと=真摯)
- with a sincere attitude(真摯な態度で)
- Have a sincere attitude when~(~するときは真摯な態度で臨んでください)
- face ~ in sincerity(~と真摯に向き合う)
- face ~ in honesty(~と真摯に向き合う)
- take ~ very seriously(~を真摯に受け止める)
英語でもあまり遭遇する機会のない「真摯」に当たる英単語は「sincere/sincerity」です。
日本語と相対するかのように、類語には「真剣な/真面目な」を意味する「seriously」や「誠実な」を意味する「honest/honesty」があります。
いずれの語もビジネスの場面で自分の真摯さや真剣さを表現する使い方が可能です。
「真摯」を使いこなして、誠実な印象を与えましょう!
ビジネスの非常に重要な局面で使われる「真摯」について、例文や使い方をあげてくわしく解説してきました。
「真摯」の場合、課題や問題に対する姿勢や態度が問われるので、対処方針や意欲も合わせて伝えるようにしましょう。「真摯」の類語には、使い方に注意が必要な語やビジネスでは避けたほうがいい語もあることに留意してください。
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