"貴殿"の意味/使い方とは?女性の場合で使う類語も!|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2018.09.01
男性が同等または目上の人に対して使う二人称の表現、貴殿(きでん)。女性に対して使えるのか、など疑問点が多い言葉です。今回は、「貴殿とは?」という基礎から女性の場合は何て呼べばいいのか、例文、言い換えできる類語まで解説。ビジネスパーソンとして必ず覚えておきましょう。

「貴殿」の読み方や意味とは?

貴殿の意味とは

「貴殿」とは、「きでん」と読み、男性が目上の上司や取引先だけではなく、自分と同等の男性に対しての二人称を意味する敬語表現です。一言で言うと「あなた」という意味になります。

「殿」という言葉は、宮殿や寺院、貴人の邸宅などを指す言葉であり、もともとは目上の男性に対して使う呼称でした

しかし、時代の変化とともに目上の人に対してだけではなく、同輩の男性などにも使われるようになりました。

日常生活の中で使われる言葉というよりも、ビジネスシーンや公の場でよく使われることであり、相手を貴殿と呼ぶケースや、逆に相手から貴殿と呼ばれた経験があるという方は非常に多いでしょう。


「貴殿」は目上の人に失礼な敬語なのか?

貴殿は目上の人に使える

貴殿は、もともとは目上の人に対して使っていた言葉ですので、取引先や上司などに対して使うことは可能です。ただし、近年では同格の男性に対して使うケースも増えているため、上司などによっては失礼であると捉えられる恐れがあるので注意が必要です

使うタイミングとしては、普段のビジネス上の会話で使われることはありません。どちらかというと、手紙やメールなどの文書の中で使用することが多いでしょう。

また、あくまでも個人に対して使う敬語表現ですので、複数の場合には「貴殿方」や、「各位」などの表現が使われます。


「貴殿」は、女性に対して使えるのか?

貴殿は女性に使えるのか

「貴殿」の意味でご紹介したように、この言葉は本来、男性が目上の男性や同等の男性に対しての呼称です。そのため、原則としては、男性から女性に対して、女性から男性に対しては使えない言葉といえるでしょう。

しかし、現代では男女平等などの意識の変化などにより、男性から女性や、女性から男性に対して使うケースも増えています。特に、男性も女性も受け取るようなメールや手紙で使われることが多いでしょう。

とはいえ、適切とは言えない表現ですので、女性に対して使う場合は、「貴女」という女性を呼称する敬語に言い換えて使うようにしましょう


ビジネスで使える「貴殿」を使った例文一覧

貴殿を使った例文
  • 誠に残念ではございますが、検討の結果、今回は採用を見送らせていただきます。今後の貴殿のご活躍をお祈り申し上げます。
  • 貴殿の益々のご発展を心よりお祈りしております。
  • 貴殿にはますますご清栄のこととお慶び申し上げます。
  • この度、新商品の売り上げが増加したのは、貴殿方のご尽力の賜物と感謝しています。
  • 貴職ますますご清栄の段何よりと存じます。
  • 貴殿にご指導いただきました件について、質問がございます。

「貴殿」がもっとも多く利用されるのは、手紙や文書での冒頭の文章です。ビジネスシーンも含めて、会話の中での使い方がほとんどありませんので、基本的には例文のように文章の中で敬語表現や丁寧に言い表したい場合に使うとよいでしょう

また、文頭の挨拶の言葉だけではなく、文章中で相手に対して「あなた」と呼びたい場合に使うケースも少なくありません。

どちらかというと軽い使い方ではなく、硬い使い方となりますので、辞令や表彰状のような文書に使われることも多いでしょう。

【「例文」で使われている敬語】
「ご清栄」の意味とは?|正しい使い方から例文まで分かりやすく解説します

「ご尽力」の正しい使い方を例文付きで簡単にご紹介!

「賜物(たまもの)」が持つ本当の意味って?ビジネスシーンで目上に使える例文も解説!


微妙な違いまで分かる!「貴殿」と言い換えできる類語一覧

貴殿の類語① 貴台(きだい)

貴殿の類語①貴台の意味とは

「貴台」は、「貴殿」とほぼ同じ使い方となります。言い換え的な表現であり、目上の上司や取引先の男性などに対して使用する尊敬語です。「台」とは、基礎のことであり、宮殿や邸宅、そして寺院などが由来となっています。

「貴殿」と同じように、会話文で使うというよりも、手紙やメールなどで使われるものであり、男性に対しての尊敬語なので、注意が必要です

また、対等な男性についても使用されるので、ビジネスシーンで使い方によっては、失礼と摂られる可能性があるでしょう。


貴殿の類語② 貴社(きしゃ)

貴殿の類語②貴社の意味とは

「貴社」は、相手の会社のことを文書やメールで書く場合に使われる敬語表現です。手紙やメールにのみに使用されるものであり、会話で使う場合は「御社」に言い換えられます。

「貴殿」という言葉は、人に対してかかるものに対して、「貴社」は相手の会社にかかるので性別にかかわらず使用できるます。そのため、ビジネスシーンにおいては、頻繁に見かけられる表現です。

【参考記事】「御社」と「貴社」の使い分け方とは?シーン別に使える敬語を解説!


貴殿の類語③ 貴様(きさま)

貴殿の類語③貴様の意味とは

「貴様」という表現は、もともと「貴殿」の言い換えの敬語表現として使われてきました。

しかし、時代とともに敬語として使われることが少なくなっていき、現代に至っては、敬語ではなく目下の者に対して「貴様」と使われることが多くなったのです。そのため、現代の使い方では、敬語として認識されていないので注意が必要です。

敬語の意味を込めていたとしても、目上の人に対してメールや文書などで「貴様」と書いてしまうと、相手を不快な気分にさせてしまうのでくれぐれも注意しましょう。


貴殿の類語④ 貴兄(きけい)

貴殿の類語④貴兄の意味とは

「貴兄」とは、相手の尊称であり、「貴殿」と同様に「あなた」という意味で使われます。敬語ではありますが、「貴殿」に比べるとライトな印象を与えるため、ビジネスシーンでは同輩や先輩などの言い換え表現として使用される傾向があるでしょう

また、文字からわかるように「兄」という言葉が含まれているので、「貴殿」と同様に男性に向けて使われる言葉です。

女性に対しての「貴兄」と同等の言葉はありませんので、女性に対して言い換える場合は「貴女」を使うようにしましょう


貴殿の類語⑤ 貴職(きしょく)

貴殿の類語⑤貴職の意味とは

「貴職」は、「貴殿」の言い換え表現として使われることが多いです。「職」というのは、職業ではなく、官職からきています。そのため、近年でもビジネスシーンにおいては、役付きの方に対しての言葉として使われることが多いでしょう。

ただし、かならずしも役職に就いている方にしか使わないにというわけではありません。一般的な「あなた」という意味もあるので、区別なく利用する方も多いので覚えておいて損のないフレーズと言えます。


貴殿の類語⑥ 貴方(きほう・あなた)

貴殿の類語⑥貴方の意味とは

「貴方」は、「あなた」という読み方ではなく、「きほう」という読み方をします。「貴殿」の言い換え表現であり、相手に対しての尊敬語の呼び方となります

「貴殿」と同じように主に男性について使われることが多いですが、特別女性に対して使ってはいけないということはないです。

近年では、ビジネスシーンで使われるというよりも、公的文書などで使われる傾向があります。通常のビジネスメールでは、「貴方」と書いても「あなた」と読み違えられる可能性があるので、他の表現を使うことが少なくありません。


貴殿の類語⑦ 貴公(きこう)

貴殿の類語⑦貴公の意味とは

「貴公」は、「貴殿」の言い換え表現として使われることがありますが、意味が多少変わります。「貴公」の場合、自分と対等、もしくは目下の人に対して用いられる表現ですので、目上の人に使う場合は失礼に当たるので注意が必要です

比較的古い表現であるため、近年ではビジネスの場でもなかなかつかわれる機会が少なく、なかなか目にする機会がないでしょう。男女の区別はありませんので、「貴方」や「貴女」という表現が使いにくい文書などで使われることが多いです。


「貴殿」は複数形の場合、どうなるのか?

貴殿の複数形は貴殿方

「貴殿」という表現は、単一の相手に対して使う敬語表現です。そのため、相手が複数形の場合は使うことができません。もし複数を表す場合は、「貴殿方」や「貴殿ら」というような表現が適切でしょう。ちなみに「貴殿方」は「きでんがた」と読みます。

ただし、ビジネスシーンにおいて、複数に対しての手紙やメールでは、あえて「貴殿方」や「貴殿ら」というような表現を用いずに、シンプルに「各位」などの表現を利用するケースが多いので、上手に使い分けましょう。


「貴殿」の英語表現

「心ばかり」の英語表現
  • You(あなた、貴殿)
  • your good self(貴殿)
  • I believe this ~ is very welldeserved for you.(この~は貴殿にとって、まさにふさわしいことだと考えます。)
  • May you have many more successful years to come.(今後、貴殿の益々のご活躍を心よりお祈り申し上げます。)
  • Thank you very much for giving me your honest opinion in regards to my proposal.(私の提案に対する貴殿の率直な意見をお聞かせくださいまして、まことにありがとうございました。)
  • I am very glad to hear you won such a great award!(貴殿が素晴らしい賞を受賞したと聞き、大変嬉しいです。)

英語での表現においては、基本的に「貴殿」というような特別な言葉がなく、「あなた」という意味である「You」と言い換えられるケースが多いです。

ただし、ごくまれに「your good self」が使われることもありますが、ほとんどは「You」で言い表されます。

貴殿というような特別な表現はありませんが、例文で記載したように全体的に丁寧にすることで、貴殿に相当するような敬語となるでしょう。


意味や使い方を覚えて、「貴殿」をスマートに使いこなしましょう!

「貴殿」という言葉は、「あなた」という呼称を敬語的に表現したものです。本来は男性から男性に対して使われる言葉ですが、近年ではそういった垣根を越えた使い方をされるケースが増えています。

また、例文からもわかるように、ビジネスの場だけではなく、表彰状などでも使われることでしょう。使い方を理解して、失礼の内容に「貴殿」を使いこなしてくださいね!

【参考記事】「賜物」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!

【参考記事】「お取り計らい」の意味から正しい使い方までをまとめました

【参考記事】「ご助力」は目上の人に使える?言い換えできる類語もご紹介!

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