"かねてより"の意味/使い方とは?例文&漢字との違い|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2018.09.01
兼ねてより、予てよりと表現される敬語、かねてより。ビジネスメールでおよく使われる敬語ですが、正しい使い方を勉強する機会は少ないはず。今回は、かねてよりの意味から正しい使い方、漢字表現との違い、丁寧な例文、言い換えできる類語まで詳しく解説します。

「かねてより」の意味とは?

かねてよりの意味とは

「かねてより」とは、「予め」や「前もって」といった意味を持つ副詞です。「兼ねてより」や「予てより」と漢字で表記する場合もあります。

兼ねるという意味をもつ古語「かぬ」の連用形に「て」という接続助詞を付けて「かねて」という言葉ができたと言われています。

古語である「かぬ」は、「役割や存在を兼ねる」「ある一つの物で二つ以上の使い方や存在を持ち合わせている」という意味と、「先のことまで考える」「将来を予測する」という意味とを持っています

古語の時代から現在に至るまでにだんだん後者の意味が強くなり、「予め」「前もって」という意味で使われるようになりました。そんな「かねて」に時間の経過を表す「より」を付け加えた言葉が「かねてより」です。

「より」が付くことによって「以前から〜だ」という継続のニュアンスが強い表現と言えます


「かねてより」は、「予てより」と「兼ねてより」どっちが正しいのか?

かねてよりの正しい漢字とは

「かねてより」を漢字表記する場合、「兼ねてより」と「予てより」の二つがあります。結論から述べると、どちらの表記も誤用ではありません

ただし古語として使われていた際の意味から考えると、「予てより」と表記する方法が一般的だと言えるでしょう。

「かねてより」という言葉の使い方は、「予め」「前もって」など時間が以前から今まで継続していることを示す時に使います

一つで二つのことや物を示す「兼て」では意味と表記にずれが生じます。計画を示す「予て」を使うほうが「かねてより」の言葉の意味を的確に表しています。

漢字の違いで意味が変わるというよりも、「かねてより」が持つ意味を考えれば、「予め」を使った「予てより」を使うのが一般的でしょう。

とはいえ、後から示す例文でも分かるように、ビジネスシーンでは「かねてより」は平仮名表記とするケースがほとんどです。漢字表記は誤用ではないもののほとんどしないと理解しておきましょう。


「かねてより」の使い方。どんなタイミングで使えば良いのか?

かねてよりの正しい使い方

ビジネスシーンでは「かねてより」を使う機会はとても多いです。業務における進捗状況の報告や計画の発表など、継続して取り組むことが多いからと言えるでしょう。

また、「かねてより」を使う際は、過去形の動詞と組み合わせた使い方がもっとも一般的です。「かねてより~だった〇〇は」のように使います。ただし組み合わせる動詞が過去形に限定されてはいません。

他にも「かねてより取り組んでいる~は」などのように、現在形の動詞を組み合わせる使い方もよくあります。時間の継続を示す言葉はほかにもありますが、「前から」のような言葉よりもやや堅い表現です。

上司や取引先の担当者など、目上の人に対しては敬語を使いますが、それらと組み合わせる使い方はきちんとした印象を与えられます。緊張感のある目上の人が多い場では「かねてより」を使う機会は増えるでしょう。


ビジネスメールでも使える「かねてより」を使った例文集

ビジネスメールでも使える「かねてより」の例文
  • かねてよりご案内しておりました祝賀会の招待状を送付させていただきます。
  • かねてよりお知らせしております新商品勉強会の日時が決定しましたので、急ぎメールにて連絡申し上げます。
  • ××様、かねてよりお願いしておりました冒頭のご挨拶の件、ご都合はいかがでしょうか。
  • この度、かねてより交際しております□□さんと結婚の運びとなりました。
  • かねてより私たちの目標だった〇〇営業所をいよいよ開設することとなりました。
  • 御社の××様がかねてより作成されていましたビジネス計画書プランは、今後このような方法でチェック可能でございます。
  • かねてよりご贔屓いただいておりました〇〇さんにぜひご覧いただきたいです。

例文からも分かるように、「かねてより」の使い方として多いのは、以前から計画していたことや継続してきたことを実行・実現する状況を表すパターンです

ビジネスとしてこれまで続いていたことを表現するわけですから、例文にもある通り、後に続く言葉は「~してきた」「~だった」のように過去形の言葉が続くのが一般的です。

また「かねてより」という言葉は堅い印象を与えることが例文からも見て取れるでしょう。そのため、例文のように「~しておりました」など、敬語のひとつである謙譲語を後ろに加えると、目上の人に対してより丁寧な表現になります。


「かねてより」と「かねてから」の違いとは?

かねてよりとかねてからの違いとは

「かねてから」は、「予め」「前もって」の意味を持つ「かねて」に、ある起点からの開始を示す言葉である「から」を付け加えて「かねてから」としています

同じ意味を持つ言葉が重複していると重複語とされ通常は誤用とされますが、広く普及していればビジネス上は口語的表現として使うことも可能です。

「より」も「から」と似たような意味があるため「かねてより」も重複語だとする意見がありますが、「かねてより」は平安時代の文献でも使用が確認されており、誤用とは言えません。

文法的に正しい「かねて」、実際に普及している「かねてより」、気軽に使える「かねてから」とそれぞれ理解しておくといいでしょう。


しつこい印象にならない「かねてより」と言い換えできる類語一覧

かねてよりの類語① 従来

かねてよりの類語①従来の意味とは

「かねてより」の類語として、ビジネスシーンでよく使われている言葉が「従来」です。読み方は「じゅうらい」です

「従来」には「以前からこれまで」という意味と、「今までと同じように」という二つの意味があります。

「かねてより」も「従来」も以前からのことをさしているのは同じですが、「かねてより」は以前から今の時点までのことを指しているのに対し、「従来」は以前から同じ形式で今、そしてそれ以降も続くのを前提としたニュアンスが強い言葉です。

内容そのものには変更がなく、時系列な経過だけが起きているという意味が強いといえるでしょう。


かねてよりの類語② 元来

かねてよりの類語②元来の意味とは

「元来」は「かねてより」の類語の一つとしてよく使われている言葉です。読み方は「がんらい」です。

もともとの意味を持つ「元」と、近づくさまを表す「来」が組み合わさっており、古語として使われていた時から「もともとそういった性質や状態であること」「そもそも変わらずにその状態であること」といった意味を持っています。

そのことを知った時点で変わるのではなく、知る前から同じ状態が続いているという意味が強いです。

ただし、使い方の違いとして、「かねてより」が会話などの話し言葉でもメールなどの書き言葉でも使うのに対し、「元来」は口語的な使い方はしません。メールや書類などで書き言葉として使うケースがほとんどです。

また、敬語と組み合わせると目上の人に対してきちんとした印象を与える言葉となります。


かねてよりの類語③ 常々

かねてよりの類語③常々の意味とは

「常々」も「かねてより」の類語として使われることの多い言葉として知られています。読み方は「つねづね」です

「常々」は「かねてより」のように経過や継続のニュアンスが含まれているというよりは、ずっと同じ状態であることやいつもと変わらない状態なことを示す意味合いが強い言葉です。「かねてより」のような経過や継続を示す意味合いは含まれていません。

「常々」は会話などの話し言葉としても、メールなどの書き言葉としても使います。ビジネスシーンでは幅広く使われている言葉ですから、この意味合いの違いをしっかり理解しておく必要があるでしょう。


かねてよりの類語④ 以前より

かねてよりの類語④以前よりの意味とは

「かねてより」の類語としてもっともよく使われている言葉が「以前より」です。

前述した通り、「かねてより」には「以前から~していること」といった意味合いが含まれていますが、その意味合いを直接的に表現しているのが「以前より」です。使い方は基本的に同じと考えていいでしょう。

強いて違いを挙げるとするなら、「かねてより」が堅い表現なのに対して「以前より」はやわらかい表現という点でしょう

「かねてより」は会議や取引先などとの打ち合わせといった堅い場面で使うことが多いのに対して、「以前より」はどんな場面でも使える言葉です。社内など非公式な場で交わす会話や、簡易的なメールのやりとりで使うことが多いでしょう。


かねてよりの類語⑤ 前々から

かねてよりの類語⑤前々からの意味とは

「かねてより」の類語としてビジネスシーンで使われることが多いのが「前々から」という言葉です。読み方は「まえまえから」です

「かねてより」には、「以前から~している」「しばらく前から続いている状態」といった継続の意味合いが強く含まれていますが、「前々から」という言葉も同じ意味を持つため、使い方は同じと言っていいでしょう。

「前々から」は口語的表現で、メールや書類の文章中でもあまり使いません

会話などの話し言葉として使うことが多いですが、会議や取引先などとの打ち合わせといった堅い場面よりも、非公式な場や社内での打ち合わせなどで使う機会のほうが多い言葉だと言えるでしょう。


かねてよりの類語⑥ かねがね

かねてよりの類語⑥かねがねの意味とは

「かねがね」も「かねてより」の類語として使われることが多い言葉のひとつです。「かねてより」の「かね」と意味は同じなので、漢字表記をする場合は「兼兼」「予予」となります。

ただし、漢字表記をすることはビジネス上ほとんどありません。

「かねがね」という言葉は、以前から継続しているというニュアンスを含んでいる点は「かねてより」と同じですが、伝えたい事柄や動作が以前から何度も繰り返し現在まで続いているという独自のニュアンスが加わっています。

「かねてより」という言葉よりも、さらに継続の意味合いが強いと理解しておくといいでしょう。また、敬語と組み合わせて使うときちんとした印象を与えられます。


「かねてより」の英語表現

「ご確認のほど」の英語表現
  • I've wanted to see you for a long time.(かねてよりお会いしたいとずっと思っていました)
  • He is honest by nature. (彼は元来正直な人です)
  • I have already known that for a while. (それを以前から私は知っていました)
  • I had liked that since a long time ago. (以前からずっと気に入っていました)
  • I've often heard about you from Mr. Tanaka. (お噂はかねてから田中さんより聞いていました)
  • This has been identified for a long time. (これについては従来指摘されていますね)

「かねてより」の英語表現は、例文からも分かる通り、現在完了形の英語「have」に期間を表す英語「for」を組み合わせた使い方が一般的です。

英語には目上の人に対する敬語表現がないため、相手がどういう立場の人であっても「for a long time」や「for a while」などが自然です。

「since before」でも誤用ではありませんが、例文のようにシンプルな単語で表現しましょう。


「かねてより」を活用した正しい言葉遣いをマスターしましょう。

「かねてより」という言葉は厳密に言えば重複語に当たりますが、すでに使い方として認知されており、例文からも分かる通りビジネスシーンでは多用されています。

似たような意味を持つ類語が多く、また以前から続いているというニュアンスを伝える言葉の中では堅くしっかりした印象です。

使い方を間違えないよう、例文を参考に理解を深めて正しく活用しましょう。

【参考記事】「申し訳ありませんでした」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!

【参考記事】「拝聴」の意味から正しい使い方までをまとめました

【参考記事】「ご助力」は目上の人に使える?言い換えできる類語もご紹介!

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