"拝見させていただく"は二重敬語?目上への正しい例文付き|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2018.11.01
「見る」の敬語として知られる、拝見させていただく。実はこれ使っちゃいけない二重敬語ということを知っているでしょうか。今回は、拝見させていただくがなぜ使えないのか、一方で使える敬語表現とは?を解説します。敬語のレベルをより一層高めていきましょう。

「拝見させていただく」は二重敬語なのか?

「拝見させていただく」とは、二重敬語になってしまっているビジネスでよく使われる表現です

謙譲語が二重に含まれる「二重敬語」になっていることに気づかず、「見る」を丁寧に述べているつもりで、上司などとの会話はメールなどでの文章で、「拝見させていただく」というふうな使い方がされます

この「拝見させていただく」を分解してみると、「見る」ことをへりくだって表現する謙譲語の「拝見」と、自分が「する・行う」行動を相手もしくは第三者からの許可を得た、またはそのことにより恩恵を受けていると感じる際にへりくだって表現する「〇〇させていただく」の二つの謙譲表現が含まれています。

そのため、ビジネスで用いる「見る」の正しい敬語は、「拝見させていただく」ではなく、拝見するになります。


類語「見させていただく」も二重敬語で間違い!

「拝見させていただく」に似たような表現として「見させていただく」ならビジネスシーンで問題なく使える正しい敬語だろうと考える方もおられるかもしれません。

しかし、このフレーズには「拝見させていただく」とは別の文法的な問題があります。「さ入れ言葉」といって、「せる」と表現すべきところを「させる」と表現してしまう文法上のミスが生じてしまっているのです

この場合は、「見せていただく」という言葉に直して使うとより正しい日本語になります。ビジネスで正しい敬語の使い方をしたいなら、「さ」を取って「見せていただく」にしましょう。


「拝見させていただく」は結局使っていい敬語なの?

拝見させていただくは使えない

広く使われている表現の一つ「拝見させていただく」は、もはや一般的に市民権を得たかのように使われているのも事実で、ビジネスの会話でもよく耳にするものです。

やはり、上司や大事な取引先の方とのビジネス会話では正しい日本語を使うということに重きを置いた方が良いかもしれません。正しい日本語を使って表現できるならば、聴く相手からのわたしたちへの印象において、少なくとも見下げられることはないでしょう

「拝見させていただく」が二重敬語であることに気がついた今、あえて相手にくどい印象を与えたり場合によっては不快な嫌味のように受け取られる表現をビジネスシーンで使いつづける理由はどこにもないはずです。


「拝見させていただく」ではない、正しい敬語表現とは?

拝見させていただくではない、正しい敬語表現

「拝見させていただく」と言いたいときに正しい敬語を用いたいなら、「拝見します」というフレーズを使います。

「見る」という意味の謙譲語である「拝見する」を用いて、自分の行為である「見る」ことをへりくだって表現していますから、これだけで丁寧な敬語の使い方ができていることになります

「する」の丁寧形が、「します」ですから、「拝見します」で、完璧な敬語の表現が完成しています。無理に「させていただく」という丁寧ふうに聞こえる言い回しにしてしまうことで、二重敬語になってしまい、敬語の価値が損なわれてしまいます。


「拝見する」を伝えられる丁寧な例文

  • メールを拝見しました!ありがとうございました。
  • 見積もり書をお送りくださりありがとうございました。内容を拝見いたします。
  • 見積もり書を拝見しました。ご注文をありがとうございました。承りました。
  • シートへのご記入ありがとうございました。シートを拝見いたします。
  • こちらでチケットを拝見いたします。

メールや見積もり書やアンケートシートなど、相手のかたに作成してもらったものをこちらが受け取ったり確認したりする際によく用いられるフレーズです

受け取った際に、「拝見させていただく」や「拝見します」などのフレーズを用いることによって、目上のかたの作成物を敬意を持って扱っているというニュアンスをあらわせます。

【参考記事】「拝見する」の使い方はこちらで解説


「拝見させていただく」と「拝見いたします」の違いとは?

「拝見させていただく」と「拝見いたします」の違いは、そんなに大きくありません。

「拝見いたします」の「いたします」の部分も「する」の丁寧語ですから、「拝見する」の謙譲語と重なって二重敬語になってしまいます。ビジネスシーンでも両方ともよく使われてしまっているので、一般的にも受け入れられつつあるフレーズです

しかし、厳密に解釈すると間違っている日本語の敬語表現ので、年配の上司のかたなどの場合は、受け入れにくく感じることも多くあります。「拝見させていただく」や「拝見いたします」ではなく、「拝見します」などの正しい敬語表現を用いる方がよいでしょう

【参考記事】「拝見させていただきます」よりは「拝見いたします」の方がいい


目上の人が見ることを自分が丁寧に言う場合は?

目上の人に見てもらう時になんて言えばいいのか

「拝見させていただく」は、こちら側が見るという動作をへりくだって表現しているものですが、目上の相手が見る動作をするときには、どのように表現できるでしょうか。そんな場合は、「ご覧頂く」という日本語の使い方で敬語を表現できます

「ご覧頂く」は、「見る」の尊敬語で、相手が「見る」動作するときに述べる使い方ができます。メールなどでも、同じような使い方ができ、目上のかたや上司や先輩とのビジネスでのやり取りにでも使えます

「拝見させていただく」のように二重敬語にもなっていないので、正しい日本語の敬語表現としての使い方ができます。

【参考記事】「ご覧いただく」の使い方を例文付きで解説


「拝見させていただく」は、「拝見します」に!

「拝見させていただく」などの厳密に正しい日本語ではない表現が、よくビジネスで使われていて、受け入れられるようになっていますが、やはり、美しい日本語の使い方をちゃんとマスターしておきたいですよね。会話やメールなどで、上司や先輩などの目上のかたとのやりとりがある場合は、この記事の内容を思い出して、「拝見させていただく」ではなく、「拝見します」という使い方ができるようにしましょう。

【参考記事】「ご笑納ください」の正しい使い方を分かりやすく解説

【参考記事】「ご足労おかけします」の意味から使い方まで説明します

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