"とんでもないです"の意味とは?言い換え類語&例文集。ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2024.05.09
謙遜の意味が強い敬語、とんでもないです。とんでもございませんよりも丁寧さに欠ける言葉だと言われていますが、実際どうなのか?今回は、「とんでもないですの意味とは?」から正しい使い方、丁寧な例文、言い換えできる類語まで解説!ビジネス敬語の質を高めていきましょう。

「とんでもないです」の意味とは?

とんでもないですの意味とは

「とんでもないです」とは、ビジネスシーンでは相手の言葉をやんわりと打消したい時に使う言葉です

そのため、自分の言動やその結果を褒められた際に「めっそうもない」と謙遜する気持ちや、思いがけない出来事に遭遇して「意外だ」という驚きの気持ちを表す意味があります。

また、ある物事や状況に対して「そうではない」と強く否定する意味や、受け入れがたい状況などに対して「もってのほかだ」という非難の気持ちを示す場合もあるでしょう

物の大きさや程度が想像を超えている意味を表すために、形容詞の頭につけて「とんでもなく大きい」といった使い方をすることもあります。


「とんでもないです」は、誤用なのか?

とんでもないですは、誤用?

「とんでもない」の丁寧な敬語表現として、ビジネスシーンでよく使われている言葉に「とんでもないです」があります。

丁寧語として正しいように見えますが、厳密に言うと文法的には誤用です。「とんでもない」という言葉は、この一言で成り立っている形容詞です。形容詞に丁寧語である「です」を付け加える必要はそもそもありません

とはいえ、近年のビジネスシーンでは、謙遜の気持ちを伝える敬語として上司や取引先に対し「とんでもないです」と使うケースは多く、認知されつつあります。ただし、使用するにしても本来は間違った表現であることはきちんと認識しておきましょう。


「とんでもございません」はNGなのか?

とんでもございませんは間違った敬語か?

「とんでもないです」のさらに丁寧な敬語表現として「とんでもございません」という言葉がよく使われています

「とんでもない」を「とんでも」と「ない」に分け、後ろの「ない」の部分を「ございません」と言い換えています。

しかし、先ほども触れたように「とんでもない」は形容詞ですから、本来は誤用です。ただし、現代のビジネスシーンでは「とんでもないです」と同じく認知されていて、とくに問題視されることはあまりありません。

【参考記事】「とんでもございません」の意味から使い方例文まで解説


「とんでもないです」の正しい使い方とは?

とんでもないですの正しい使い方

「とんでもないです」は、「とんでもない」の丁寧語という敬語として認知され始めています。

主に周囲の人から褒められたり評価されたりした時に、謙遜する気持ちを敬語として表現するという使い方が基本です

自分がへりくだる状態になる表現ですから、社内であれば上司や先輩、社外であれば取引先や外注先など、自分よりも目上の人から評価を受けた際に返す言葉として使います。

同僚など対等な立場の人から評価された場合でも「とんでもないです」と言うことはありますが、ケースとしては多くはありません

また、部下など目下の人から褒められた時には自分がへりくだる必要がありませんから、原則使いません。話し言葉として使うことが多く、メールでは使いません。


ビジネスシーンで使える「とんでもないです」の丁寧な例文

褒められる時に謙遜する場合の使い方

褒められる時に謙遜する場合の「とんでもないです」の使い方
  • A:こないだの君のプレゼンテーションはすばらしかったね。〇〇社長もほめていたよ。
  • B:とんでもないです、チームのメンバーが協力してくれたからできたことで私一人の力ではできませんでした。
  • A:納期を1日前倒ししてくれてありがとう。おかげで余裕をもって売り場がセッティングできたよ。
  • B:とんでもないです、お役に立てたならうれしいです。

「とんでもない」は、褒められたり評価された際に謙遜する気持ちを表現する言葉です。例文のように、目上の人手から自分の言動やその結果について褒められた場合に、「とんでもないです」と使います

「とんでもないです」自体は形容詞ですから、後ろに名詞である「こと」を付け加えて「とんでもないことです」と言い換えれば、形容詞として正しい使い方になっていると言えます。

また、自分の意思とは反した状況を強く否定して相手に理解を求める場合、「とんでもないです」という表現を使うことがあります。


相手が言ったことに対して否定する場合の使い方

相手の言葉を否定する時の「とんでもないです」の使い方
  • A:〇〇様からのクレームをすぐ報告しなかった理由は何だ?そのまま隠しておこうと思っていたのか?
  • B:いえ、とんでもないです。まず発生した状況と原因をしっかり調べてから報告しようと考えたのです。
  • A:納品遅れを〇〇君が故意に見逃したという話があるが?
  • B:とんでもないです、彼がそんなことをするはずがありません。

例文からも分かるように、「とんでもないです」は、相手の意見や主張に対して納得できない、理解できないために否定する気持ちを表現する敬語という使い方も可能です。

特に、あまりよくない状況において自分の言動を疑われた場合には、謝罪の気持ちと同時に故意ではないこと、ビジネス上のリスクを最大限回避するために動いたことを伝えたいニュアンスも含みます。

「とんでもないです」に含まれる、相手から言われた内容を否定するニュアンスは強めです


「とてつもない」を意味する場合の使い方

とてつもないを意味する「とてつもないです」の使い方
  • 先週公式に発表されたT社の5か年計画の膨大な資料を見たが、これまでとは比べ物にならないとんでもないスケールだということがよく分かる。
  • 3年前からR社- K社- P社および弊社が共同出資した団体が主体となってこのプロジェクトを展開してきたが、成功した暁にはとんでもなくすばらしい結果が得られるだろう。
  • 開発部が取り組んでいる新製品が市場に出回り始めたら、業界のシェア率はとんでもない伸びを示すに違いない。

「とんでもないです」という言葉には、想像をはるかに超えた物事や状況に対する驚きを表す意味も含まれています

ビジネスにおいては、計画時には予想していなかった非常に大きな成果を得たり、逆にほとんど利益が得られなかったりといった、想定外のことへの驚きを表現する場合、例文のように「とんでもない」「とんでもなく」を使います。


「とんでもないです」は、目上の人からの謝罪に対する返事として使えるのか?

目上からの謝罪でもとんでもないですは使える

「とんでもないです」という言葉は、相手から受けた褒め言葉や評価を打ち消したり、受け入れはするものの謙遜した態度である敬語としての使い方が多いです

これまでの例文からも分かるように、使う相手は取引先の重役など社外における目上の人や、商品を購入してくれた顧客です。

お礼を言われたり評価されたりした時だけでなく、謝罪された場合にも使いますが、主には謙遜しながらも軽く相手の意見を否定する言葉として「とんでもないです」と使うことが多いでしょう。

褒められたり評価された時に、へりくだって使いますから、相手から謝罪を受けた際の返事という使い方はあまりありません。


「とんでもないです。」と言い換えできる類語一覧

とんでもないですの類語① 恐れ入ります(謙遜)

類語④恐れ入りますの意味とは

「とんでもないです」の類語として多用されているのが「恐れ入ります」という言葉です

「恐れ入ります」は動詞である「恐れ入る」を丁寧に表現した敬語で、恐縮していること、自分の至らなさを申し訳なく感じ謝罪していることを表します。また、その気持ちとあわせて相手への感謝の気持ちも含まれています

褒めてくれたり評価してくれたりした目上の人に対しての返事にも最適な「身も縮まるほどもったいない、ありがたい」といった思いを含んだ言葉なため、「とんでもないです」の言い換えとしても問題なく使用できます。

「恐れ入ります」の例文

  • この度は新しい事業所のオープンにともない多大なるご協力をいただき恐れ入ります。
  • いつもお忙しい中ご丁寧にメールをいただき恐れ入ります。
  • 私のみならず上司の〇〇の分まで手配いただきまして大変恐れ入ります。

とんでもないですの類語② 恐縮です(謙遜)

すみませんの類語④恐縮です(謙遜)の意味とは

「とんでもないです」の類語として「恐縮です」という言葉もあります。読み方は「きょうしゅく」です。その字の通り、自分の身が縮むほど相手に対して恐れ入るという意味を持っています

恐れ入る気持ちと同時に、感謝の気持ちも含んだ敬語です。謙遜しながら恐れ入る気持ちを表現するには堅い言葉なので、主にはビジネスシーンで使います。

また、例文にもあるとおり自分よりも目上の人に対して使う言葉で、「とんでもないです」と同じく対等な立場の人や目下の人に対しては使いません。話し言葉としてはやや堅めで、メールなどで書き言葉として使う機会の方が多いでしょう。

「恐縮です」の例文

  • 毎回弊社のメールアンケートに丁寧にご回答いただいており誠に恐縮です。
  • 定番商品だけでなく1月発売の新商品についても高い評価をいただき、大変恐縮です。
  • 先日の会議では、まだ完成していないアイデアに対して多くのすばらしいアドバイスをいただき恐縮です。

【参考記事】「恐縮ですが」の意味とは?正しい使い方を解説


とんでもないですの類語③ 幸甚に存じます(謙遜/感謝)

類語③幸甚に存じますの意味とは

「幸甚に存じます」という言葉も、「とんでもないです」の類語としてビジネスシーンでは多用されている敬語のひとつです。読み方は「こうじんにぞんじます」です。

「幸」は運が良いこと、「甚」ははなはだしいという意味を持ちますから、「幸甚」という言葉は「この上ない幸せ」「大変ありがたい」といった意味を持ちます

さらに謙譲語である「存じます」を付け加えることによって、相手よりもへりくだって感謝の気持ちを伝えたいニュアンスが強いです。

例文でも分かるように「とんでもないです」と比べると、言い換えの言葉としてはかなり丁寧な表現方法です。また、会話で使うよりは、メールなどの書き言葉として主に使用します。

「幸甚に存じます」の例文

  • 本日はこのような盛大な会にご招待いただき大変幸甚に存じます。
  • 思いもかけない賞をいただき、私どもの活動を評価していただきましたこと幸甚に存じます。
  • つきましては〇月〇日までにご回答いただけますと幸甚に存じます。

とんでもないですの類語④ 光栄です(謙遜/感謝)

幸甚の類語③光栄です(光栄に存じます)の意味とは

「光栄です」という言葉は「とんでもないです」の類語として、ビジネス上のやりとりのみならず一般的な場面でもよく使われる言葉です

「光栄」とは、自分が行ってきた活動や業務に対して評価され、報酬を得たり重要な役に任命されたことについて誇りに思う」といった意味を持っています。「光栄です」を使う場合、相手が目上の人か目下の人かは関係ありません

自分が褒められたり評価されたりした時に、名誉に思う気持ちを相手にしっかり伝えたい場合に使います。

「光栄です」の例文

  • このようなすばらしい賞をいただきまして大変光栄です。
  • 長年めざしていた営業課への転属をご推薦いただき、大変光栄です。
  • 弊社商品を高く評価をしてくださった結果、全国展開を成し遂げることができ大変光栄です。

【参考記事】「光栄です」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!


とんでもないですの類語⑤ お気遣いありがとうございます(感謝/謙遜)

とんでもないですの類語⑤お気遣いありがとうございますの意味とは

「お気遣いありがとうございます」という言葉は「とんでもないです」の類語のひとつです。

いろいろと思いやったり気を遣うさまを表す「気遣い」に、敬語である「お」をつけて「お気遣い」とし、さらに「ありがとうございます」を後ろに加えたとても丁寧な言葉と言えます。

例文でもわかるように、自分にやさしく気を遣ってくれた相手に対する感謝の気持ちを伝える際に使う敬語表現と考えるといいでしょう。主には上司や取引先、外注先など、社内外の目上の人に対して使うのが基本です。

「お気遣いありがとうございます」の例文

  • この度の大雨に関する弊社の一時閉鎖の件につきまして、お気遣いありがとうございます。
  • おかげさまでずいぶん体調もよくなり復帰いたしました。お気遣いありがとうございます。
  • お忙しいにもかかわらず丁寧なご対応をいただき、問題なく納品できました。お気遣いありがとうございます。

【参考記事】「お気遣いありがとうございます」を使った丁寧な例文とは


とんでもないですの類語⑥ 滅相もないです(謙遜/否定)

とんでもないですの類語⑥滅相もないですの意味とは

「とんでもないです」の類語のひとつである「滅相もないです」という言葉も、ビジネスにおいてはよく使われます。

本来あるべきではない物事や状況に対して「そんなことはない」「そんなはずはない」といった否定の意味です

「滅相」とは仏教用語で、生物の生まれ変わりにおいて消失してしまう段階をさします。生物の命が尽きて亡くなることを認めたくない気持ちを含み、亡くなった事実を否定する思いから使われるようになったと言われています。

相手の気持ちも汲んだ上で、それでも相手の意見や主張が事実とは異なるため否定したい場合に使うことが多いです。否定するとはいえ謙虚さがにじみ出ており、控えめな印象を与えます。

「滅相もないです」の例文

  • 私が代表として発表するなど滅相もないです。
  • いえ、滅相もないです。私の経験だけでなく、3人の部下が最大限努力してくれた結果です。
  • プロジェクトに参加できるだけでも光栄なことですから、さらにリーダーになるなど滅相もないです。

【参考記事】「滅相もない」の正しい使い方とは?


とんでもないですの類語⑦ そんなことないです(謙遜/否定)

とんでもないですの類語⑦そんなことないですの意味とは

「とんでもないです」の類語には「そんなことないです」という言葉もあります。相手が褒めてくれたり評価してくれたりした場合に、へりくだって謙遜する気持ちを表現する言葉です

たとえば予想外にいい評価を受けた時、「自分はそんないい評価をもらえるような立場ではない」という謙虚で腰が低い姿勢を相手に伝える効果があります。

相手の意見や主張を基本的には否定している言葉ですが、強く否定を主張するというよりは、謙遜して相手を立てながら否定する丁寧な敬語表現のひとつと言えるでしょう。

「そんなことないです」の例文

  • 私が最大の功労者だなんてそんなことないです。
  • そんなことないです。協力業者の皆さんと一緒になって現場をスムーズに進めるよう心掛けた結果です。
  • 設計技術の高さにおいて私の右に出るものはいないと言っていただいておりますが、そんなことないです。

「とんでもないです」の英語表現

ご連絡差し上げるの英語表現
  • No way! (とんでもないです!)
  • It’s my pleasure.(とんでもないです)
  • No problem.(とんでもない、問題ないです)
  • That's okay (with me).(とんでもないです、大丈夫です)
  • This is undeserved honour (これは身に余る光栄です)
  • Prompt payment would be appreciated. (即お支払いいただければ幸甚です)

「とんでもないです」の英語表現は、簡潔なものが多いです。

英語でお礼の気持ちを伝えたり、褒められた際の返事として使う場合は「It’s my pleasure.」という表現が一般的です。

また、英語で相手に対して申し訳なく謝罪したい気持ちを込めた英語表現としては、「No problem.」という言い回しをよく使います。


「とんでもないです」の意味や正しい使い方をマスターしましょう!

謙遜の気持ちを相手に伝える言葉である「とんでもないです」は、ビジネスシーンではさまざまな状況でたくさん使用されています。

類語も多く、言い換えができるので身近な言葉だと言えます。相手を立てながら自分の主張もできる、とても便利な言葉です。

ぜひこの機会に「とんでもないです」の正しい使い方をマスターしてくださいね。

【参考記事】「とんでもございません」の意味や使い方から類語までをまとめました

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