"拝聴する"の意味/使い方とは?類語&目上への例文集|ビジネス敬語ガイド
「拝聴する」の意味とは?
「拝聴する」とは、「聞く」という動作を示す言葉の敬語表現です。読み方は「はいちょう」となります。
「拝」という漢字には、「頭を深く下げる」「礼をする」「ありがたく受け取る」といった意味があり、敬語の種類で言うと相手に対して自分がへりくだる謙譲語です。相手に対する感謝の気持ちがこもっています。
「聴」という漢字には、「じっくりと聞き入れる」「耳をすまして聞き取る」といった意味があります。
この2つの漢字を組み合わせた「拝聴する」という言葉は、目上の人の話をありがたく聞くという姿勢や気持ちを示していると言えるでしょう。
上司など目上の人に使える「拝聴する」の敬語表現とは?
- 拝聴します
- 拝聴しています
- 拝聴しております
「拝聴する」を丁寧に表現した形には、「拝聴します」「拝聴しています」等があります。「拝聴する」に丁寧語の「ます」を加えた形で、ビジネスシーンではよく使われる言い回しで、上司や取引先など目上の人に対して使う言い方です。
今まさに話を聞いているという時には進行形として、すでに話を聞いていることを伝える時には内容を理解していることを説明する意味で「拝聴しています」と表現することが多いでしょう。
「拝聴しています」のさらに丁寧な表現として「拝聴しております」という形もあります。「ます」を「おります」に変えることで、自分が最大限にへりくだり相手を尊敬している気持ちを表す使い方です。
「拝聴いたします/いたしました」は二重敬語。
「拝聴する」の敬語表現として「拝聴いたします」や「拝聴いたしました」という言葉がよく使われますが、これらは誤用です。
「拝聴する」という言葉には、すでに「拝聴」という謙譲語が含まれていて、これだけで敬語として成り立っています。
「拝聴いたします」は、「拝聴する」にさらに「する」のの謙譲語である「いたします」が加わるため、二重敬語となるのです。
二重敬語は丁寧過ぎてかえって尊大な印象を与えやすくなるので使うのを避けますが、実際のビジネスシーンでは、より丁寧な表現として「拝聴いたします」「拝聴いたしました」を使う人は少なくありません。とはいえ、文法上正しくないということは理解しておくといいでしょう。
─「拝◯いたします」は、正しい言葉に直す!─
- 拝見いたします×
→拝見します◯ - 拝読いたします×
→拝読します◯ - 拝観いたします×
→拝観します◯ - 拝受いたします×
→拝受します◯
【「拝◯」の敬語一覧】 ・「拝受」の正しい使い方|例文付きで分かりやすく解説します!
「拝聴させていただく/いただきます」も同様に二重敬語。
「拝聴する」の敬語表現として「拝聴させていただく」という表現もよく見られます。「拝聴させていただく」は、「聞く」の謙譲語である「拝聴する」に「〜してもらう」の謙譲語である「いただく」を付け加えた言葉です。
「拝聴いたします」と同じく「拝聴させていただく」も二重敬語です。文法上は誤用ですが、ビジネスシーンでは「拝聴させていただく」という言葉に違和感がない人が多いのも事実でしょう。
「拝聴いたします」と似たような意味合いで「拝聴させていただく」と表現するケースは少なくありません。
ビジネス上で使える!「拝聴する」と伝えられる例文
- 数多くの支援事例を拝聴し大変参考になりました、ありがとうございます。
- 〇〇氏の講演を拝聴し、ますますやる気が高まってまいりました。
- この度は丁寧なアドバイスを拝聴する機会をいただき、感謝申し上げます。
- 先日の報告会では貴重なお話を拝聴することができましたこと、感謝しております。
- 〇〇様のご高話を拝聴するのはこれで3度目です。
- この商品に関するご意見を拝聴したく、お願い申し上げます。
「拝聴する」とは、「聞く」という言葉において相手への敬意をこめて使います。自分がへりくだって使う謙譲語なので、主語は自分です。「この話を拝聴しましたか」など、他人を主語とした表現はしません。
また、謙譲語という性質上、「拝聴する」を使う相手は目上の人に限定されます。他にも、二重敬語による誤用にも注意しましょう。たとえば「ぜひその事例をご拝聴したいです」といった使い方はしません。
「拝聴する」とは、謙譲の意味を持っているため、さらに同じ謙譲表現である「ご~する」を加えるとまわりくどい表現になってしまいます。その場合は、「拝聴したいです」と簡潔に表現しましょう。
【「例文」で使われている敬語】
・「感謝申し上げます」を使った丁寧な例文とは?ビジネスシーンでそのまま使える文例をご紹介!
・「お願い申し上げます」の使い方を例文付きで分かりやすく解説します
拝聴は、相手には使えない。相手に使う場合の敬語とは?
相手に使える敬語① 聞かれる
「聞く」の主語が相手になった場合の敬語表現にはいくつかあります。その中のひとつである「聞かれる」は、「聞く」という言葉の尊敬語です。「聞く」という言葉に「~される」という尊敬語を付け加えている形です。
「拝聴する」は自分が相手の話を聞く行為をへりくだって表現するのに対し、「聞かれる」は話を聞くという相手の行為に対する尊敬語となります。
ビジネスシーンでは「課長は今回の講演をお聞きになりましたか? 」のように使うのが一般的でしょう。
相手に使える敬語② お耳に入る
相手が主語の場合に使う「聞く」という言葉の敬語表現には、「お耳に入る」という言葉もあります。
ビジネスシーンでは「〇〇株式会社の次期新商品に関する情報はお耳に入っていますでしょうか?」のように使うのが一般的です。
目下の人が目上の人に対してある話を伝えたり、話を聞いているかを確認したりする場合に使うことが多いでしょう。
「聞く」というもとの言葉とは大きく形が異なりますが、音を聞く器官である耳に、丁寧語の接頭語である「お」を付け加えることで、丁寧な印象を与える言葉として多用されています。
相手に使える敬語③ お聞きになる
「聞く」という言葉を目上の人に対して使う表現として、「お聞きになる」という言葉もビジネスシーンではよく使われています。
「聞く」という動詞の後ろに「お~になる」という丁寧な敬語表現を組み合わせている形です。
目上の人に対して、「取引先から集まった意見をお聞きになりますか?」といった使い方をします。
相手をひとつ上の立ち位置に上げて、尊敬の気持ちを含めながら使う言葉なので、とても丁寧な表現と言えるでしょう。
「拝聴する」と言い換えできる類語一覧
拝聴するの類語① 伺う
「拝聴する」の類語としてよくビジネスシーンで使われているのが「伺う」という言葉でしょう。読み方は「うかがう」です。「伺う」は「聞く」の謙譲語で、自分がへりくだることで相手を尊敬している気持ちを含んだ言葉という使い方をします。
意味は「拝聴する」と大差ありません。「伺う」は、「聞く」行為を敬語に直すことで丁寧な表現として使う場合と、ある話を伝え聞くという意味を持つ言葉として使う場合とがあります。
「拝聴する」よりは堅苦しい印象を与えないため、ビジネスシーンでは使いやすい類語表現と言えるでしょう。
「伺う」の使い方
- お任せください、今日の全体会議の議題は◯◯先生から詳しく伺っております。
- 恐れ入りますがお客様のお名前をもう一度お伺いしてよろしいでしょうか。
- かしこまりました、差し支えない範囲でご希望を伺えれば幸いです。
拝聴するの類語② 承る
「拝聴する」の類語のひとつには「承る」があります。読み方は「うけたまわる」。
「聞く」という言葉を敬語に直すと「承る」になりますが、「担当する」「誰かから伝え聞く」といった意味を含んだ言葉として、目上の人に対して使う場面も数多くあるでしょう。
「承」という漢字は、相手の意見を受け入れたり、これまでのことを引き継ぐという意味合いを持ちます。また、「聞く」という言葉の敬語表現として「承る」は「伺う」と合わせてよく使われますが、「承る」のほうがより敬う気持ちが強い表現ととらえるのが正しいです。
例文のように、相手の話を聞いて引き受ける姿勢を表現する言葉として、ビジネスシーンでは多用されています。
「承る」の使い方
- 商品の配送日時につきまして、ご希望を確かに承りました。
- 今回ご質問いただいた項目が正しいかを確認する件、承りましたので引き続きどうぞよろしくお願いいたします。
- 前任者の××が承っておりました告知資料作成につきましては、後任の私が責任をもって担当いたします。
【参考記事】「承る」の使い方ガイド。例文から類語まで分かりやすく解説します▽
拝聴するの類語③ 傾聴する
「傾聴」は、「拝聴する」の類語のひとつとして使われている言葉です。読み方は「けいちょう」で、聞くという行為に集中する意味合いが強く含まれています。
「傾」という漢字は集中する、気持ちをその一点に傾けるという意味がありますから、「耳を傾けて熱心に話を聞く」という行為を示す言葉です。
もともとは心理カウンセリングの手法のひとつであった「傾聴」は、今では一般的な使い方をされる言葉となりました。
例文からも分かる通り、相手の気持ちを汲んで寄り添い、じっくり相手を観察しながら注意深く話を聞く姿勢を表現してい言葉です。
「傾聴する」の使い方
- 初めは退屈だったが、徐々に引き込まれ最後の方は彼の話に傾聴していた。
- 主任が一切口を挟まずに傾聴しているなんて珍しいこともあるのですね。
- 〇〇社長はまだ駆け出しの頃から××氏の講義に参加しては傾聴していたらしい。
拝聴するの類語④ お聞きする
「拝聴する」の類語として、「聞く」という言葉を敬語に直すとできる言葉のうち「お聞きする」といった言葉もあります。読み方は「おききする」です。
「聞く」という言葉に丁寧な表現である接頭語「お」をつけることで、尊敬語としての使い方ができます。「お聞きする」はビジネスシーンでは目上の人に対して使うことが多く、対等な立場の人や目下の人には使いません。
「拝聴する」よりはやわらかい表現なので、堅苦しさを与えたくない場面で使うことが多いでしょう。
同じく類語としては「伺う」がありますが、使い方としては敬意をより丁寧に表現するなら「お聞きする」を選ぶことになります。
「お聞きする」の使い方
- では続いて御社の創業時のエピソードについてお聞きしましょう。
- 明日の工場見学の最後に、生産ラインの稼働状況についてお聞することになるかと思います。
- お聞きすることを箇条書きでまとめておりますので、事前にご確認いただけますでしょうか。
拝聴するの類語⑤ 清聴する
「拝聴する」の類語としてよく使われる言葉のひとつとして、「清聴する」という言葉もよく知られています。
「清」という漢字はけがれやくもりがないさまを、「聴」という漢字はじっくり集中して音を聞くさまをそれぞれ表しており、組み合わせることによって「音や声を雑音なく落ち着いて聞く」という意味合いを示す言葉を形成しています。
単に音や声を聞くというよりは、集中して積極的に耳を傾けるニュアンスが強いことから、講演や演説などを行った演者が聴衆に対し、熱心に聞いてくれたことに感謝する意味で使われることが多いです。
「清聴する」の使い方
- 長時間ご清聴いただきありがとうございました。
- 不慣れですのでつたない話になってしまいましたが、皆様ご清聴いただき感謝申し上げます。
- あと5分で第二部の講演を開始いたします、引き続きご清聴のほどお願いいたします。
拝聴するの類語⑥ 謹聴する
「謹聴する」という言葉も、「拝聴する」の類語としてビジネスシーンで使われることのある言葉です。読み方は「きんちょうする」です。
「謹」という漢字には、つつましやかだ、集中しているという意味合いがあり、静かな緊張感をもって謹んで聞くことというニュアンスを含んでいます。
「拝聴する」と意味はほぼ同じですが、表現としてはかなり堅苦しいため、一般的な会話の中で使うことはほぼありません。書き言葉としての使い方が正しいとされますが、かしこまった場面では話し言葉として使うこともあります。
「謹聴する」の使い方
- 人気講師が登壇したとたん、全員がステージに注目して謹聴した。
- この講義ではワークショップは一切行いませんので、謹聴するようお願いいたします。
- 間もなく講演が開演となりますので、皆様謹聴してください。
「拝聴する」の英語表現
- I am all attention. (拝聴しております)
- I enjoyed your keynote speech. (私はそこであなたの基調講演を拝聴しました)
- I think that I want to listen to your lecture. (あなたの講義を拝聴したいです)
- Have you heard this story? (この話はお聞きになりましたか?)
- We are happy to negotiate a discount. (値引きのご相談も承ります)
- We have an optional gift-wrapping service. (オプションでラッピングも承りますよ)
「拝聴する」の英語表現では、基本的に「聞く」という意味の単語を使います。
というのも、英語には一般の言葉を敬語に直すという考え方自体がありませんから、「拝聴する」を英語で表現する場合は、はもとの単語である「聞く」を意味する単語を使うと考えておけばいいでしょう。
例文にあるように、一般的には「listen to ...」という言い回しが多いです。「聞く」という意味を持つ別の英単語で「hear」もありますが、「音が聞こえてくる」という受動的なニュアンスなので、「拝聴する」の英語表現としては適しません。
謙譲表現の「拝聴する」を用いて、丁寧な言葉遣いを取得しましょう!
「聞く」を敬語に直す形で使われる「拝聴する」は、丁寧な表現としてビジネスシーンでよく使われています。
目上の人に対して、敬う気持ちを含めながら相手の話を聞く様子を表現できる言葉です。
文法的には誤用である二重敬語になりやすい言葉でもあるので、正しい言い回しをしっかり覚えて使いこなせるようにしておきましょう。
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