"平素"の意味/使い方。類義語&目上に使える例文付き。ビジネス敬語ガイド
「平素」の意味とは?
「平素」とは、「普段」や「日頃」という意味を持つ言葉。
ビジネスシーンで使用されるときには、特別なことを示唆しないような意味合いを含めるために、「いつも(毎度)」、「普段から」、「常日頃(つねひごろ)」というような意味合いで使用されています。
敬語として丁寧な表現に含まれる「平素」は、ビジネスメールの書き出しや挨拶文、メールの返信や送付状に使用します。「いつもお世話に~」という使い方の「いつも」を丁寧な表現に置き換えて、「平素」がとすることが多いでしょう。
また、Webサイトなどのホームページでも、挨拶や通知に関する本文の前に「平素~」と記載して、普段からお世話になっている方への連絡や感謝を含めた文章が掲載されます。
─平素の読み方とは?─
「平素」の読み方は【へいそ】になり、「平(へい)」と「素(そ)」の漢字二文字で構成されています。
実は、この「平」と「素」は、似たような意味を持つ漢字同士です。どちらも読み方は簡単ですが、何ごともないというような意味の「平」、シンプルでありのままのようなイメージを持つ「素」を組み合わせて敬語として使用されます。
「平素」を使う上で気をつけるべき注意点
平素を使う注意点① 初対面の人には使わない
ビジネスで「平素」を使う機会が多いとしても、間違た使い方をしてしまうとマイナス評価になりかねません。これは、「平素」という言葉に、「いつも」とか「日頃」という意味が含まれることに関係しています。
そのため、メールや送付状、Webサイトでの通知を含め、丁寧なあいさつになるとしても、面識のない方や初対面の相手の方に使用することは控える必要があります。
「いつも」もしくは「日頃」接していないという方に、「平素~」と使ってしまうと「いやみ」とか「ずうずうしい」という気持ちにさせてしまうことも。「平素」は敬語の中でも丁寧語に含まれるので、使用方法を間違えてしまうと相手の方よりも自分を高めることになってしまうので注意したいポイントです。
平素を使う注意点② 使いすぎない
敬語や丁寧語は、バランスよく含まれていることで、上品で綺麗な印象になります。「平素」も敬語として便利ですが、連発したりコピーペーストのようになったりしないように注意が必要です。
しかし、「平素」が会話に登場することは少なく、話し言葉というよりは「文章中」での書き言葉としての使用が一般的です。何度も連発して記載しないように「平素~」を記載するタイミングをつかみましょう。
さらに、敬語を使い慣れていなかったり、ビジネス文章が苦手だったりすると感じる場合には、複数の「平素」が使用されていないかを念入りにチェックしましょう。
平素を使う注意点③ 後ろの文も同様に丁寧にする
丁寧でかしこまった文章や少し硬めの内容にも使うことのできる「平素」。英語と違い、日本語の場合はフォーマルな使い方ができる表現と言っても過言ではありません。
書き出しは丁寧に始まっていても、その後ろの文がカジュアルな印象になっていたり、砕けていたりすると違和感のある文章になってしまうこともあります。
そこで、「平素~」で始まる文章には、後に続く文章の表現や文体にも、丁寧でかしこまった文章、もしくは少し硬めフォーマルな文章でまとめることが必要です。
「平素は」「平素より」「平素から」の違いとは?
「平素は、」の意味・使い方とは?
「平素」を文頭に使用するとき、その後に来る文字が「は」の場合、つまり「平素は」という表現で使用するときは、過去の状況や過ぎたことを表すことになります。
「平素は~」と書き出し始めるなら、今までのことを振り返って、お礼を伝えたりお詫びを述べたりするためのきっかけの言葉の役割を担ってくれます。また、今までのことを振り返りながら、「今まで」と「今(現在)」を区分する言葉に。
「平素は~」と始まるなら「平素は格別のご高配を賜り厚く御礼~」と相手に敬意を払いましょう。
「平素より、」の意味・使い方とは?
「平素より」の場合は、「平素は」と異なり、過ぎ去った過去から今(現時点)までの経過を「~より」を組み合わせることで表現しています。
「平素より~」の「平素」には、「普段(いつも)」や「日頃」などを含める言葉になるので、「平素」と「~より」を組み合わせて使うことで、「普段(いつも)から」や「日頃から」と言うイメージで使用します。
メールや社外文章、ビジネス以外でもお付き合いの手紙などに使われています。
「平素から、」の意味・使い方とは?
「平素」は、名詞のひとつですが、副詞として文章に採用されていることもあります。
「平素」、「平素は」、「平素より」に加えて、以前は「平素から」という形式でも使用されていることが多くありました。この「平素から」は、「平素」と「~から」を足した表現方法です。
「普段(いつも)」や「日頃」などを意味する「平素」は、「普段(いつも)から」とか「日頃から」と言われることが多いでしょう。敬語に置き換えるのであれば、「普段から」や「日頃から」いう表現よりも、「平素から」と使用することになります。
「~から」という継続した表現を「~より」に置き換えて、「平素から」を「平素より」で使うことが多くなってきました。
「平素」を用いた例文
- 平素よりお世話になっております。8月12日から16日まで、弊社は夏季休暇をいただきます。つきましては、この期間の...いただきます。ご迷惑をおかけしますが、何卒よろしくお願いいたします。
- 平素は格別のご高配を賜り、厚くお礼申し上げます。誠に勝手ながら...いただきます。ご迷惑をお掛けいたしますが…
- 平素は格別のお引き立てを賜り、厚くお礼申し上げます。この度、定休日の変更をさせていただくことになり...
- 平素より弊社の〇〇商品をご愛用頂き誠にありがとうございます。ご好評につき...
- 拝啓 〇〇様 平素よりお世話になっているお客様との定例...
- 平素より当店をご利用のお客様に〇〇周年特別セールとしまして、感謝の気持ちを込めて...
- 平素からお世話になっております。
ビジネスシーンでは頻繁に登場する「平素」の中でも、「平素は」や「平素より」から始まる場合は、社外文章に使うことが一般的です。そのため、定型の文章になっていることが多く、メールや送付状に使用されます。
目上の方に使用することもありますから、「平素」という読み方を間違えることがなくても、続く文章が敬語としてまとまっているかは、必ず確認したい注意点です。
「いつもお世話に...」という書き出しよりも、例文の「平素よりお世話に...」と書き出す場合は、謙譲語で「~なっております」「~申し上げます」と締めくくる文章に統一感があります。また、お得意様や取引相手などを中心にし、文章はお礼やお詫びなどの前に使用することがポイントです。
【「例文」で使われている敬語】
・「弊社」と「当社」の使い方|取引先に使うのはどっち?
・「おろしくお願いいたします」の正しい使い方を例文付きで解説します
・「お世話になります」と「お世話になっております」との違いとは?
「平素」と言い換えできる類語一覧
平素の類義語① 先般
「平素」の類義語「先般(せんぱん)」は、「できごと」がポイントとなる言い回しです。
「平素」は今までのことや現時点までのことが関係していますが、「先般」の場合は「この前」や「この間(あいだ)」という意味を含みます。「平素」と同じように過ぎたことを指しているとはいえ、できごとがあった日ではなく、そう遠くない過去のできごとに使われている言葉です。
そのため、「すでに断ったこと」や「前に会議で話し合ったこと」というできごとを表現するようになっています。メールの返信などで時間が経過しすぎている場合には注意点となります。
政治家や官僚の文章や発言にも登場しているので、外部のお客様や目上の方にも使用することも可能ですが、ビジネスシーンのみで日常では使うことの少ない敬語になります。
「先般」の使い方
- 先般の通り、誠に申し訳ございませんが、当社では扱っておりませんので、...
- 先般の会議で扱われた〇〇について、今後のプロジェクトの方向性を修正し、...
- 先般行われた大会での...
【「例文」で使われている敬語】
・「申し訳ございません」よりも丁寧で言い換えできる類語とは?
平素の類義語② 日頃
「平素」に「いつも」や「日頃」という意味が含まれるので、「日頃から」と記載するときには「平素より」と同じ意味で受け止めることができるでしょう。
SNSやメール返信などプライベートな文章であれば「日頃から」のほうが親しみ深く、言い方も読み方も簡単でフレンドリーな印象があります。しかし、例文でも分かるようにフレンドリーな分、より軽い表現にも感じられるので、ビジネスシーンには「平素より」を採用した文章でまとめることをお勧めします。
「日頃」の使い方
- 日頃から大変お世話になっております。
- 日頃から、お引き立ていただきありがとうございます。
- 日頃の思いが届いたかと...
平素の類義語③ 毎度
「毎回(同じことを)繰り返す」、もしくは「いつも」や「毎回」などの示すのが、「毎度(まいど)」です。毎度も「平素」の類義語と言って問題のない表現になります。
日常的には、八百屋さんやお肉屋さんの商店などで、「毎度あり~」や「などのお礼の言葉を聞かれたことがあるでしょう。これを訳すと「いつもありがとう」「毎回(同じように)繰り返し来てくれてありがとう」などの表現と同じ使い方で、例文同様「毎度ありがとうございます」を簡略した言葉になります。
SNSでの返信や簡易式の送付状にも登場することもあり、商売で使用されることもありますが、ビジネスでは控えるほうがおすすめです。
「毎度」の使い方
- 毎度ありがとうございます。
- 毎度のことで恐縮ですが、〇日に...
- 遅刻や連絡が遅いのは毎度のこととはいえ、社会人として...
【「例文」で使われている敬語】
・「恐縮ですが」の意味/使い方|例文付きで分かりやすく解説
平素の類義語④ 常々
「常々」の読み方は「つねづね、もしくはじょうじょう」になり、毎日(日々)行われることなどを指す言葉として使われます。毎日、つまり「常々」や「日常」というと、「毎日」よりはかしこまった表現の言葉になるので、「平素」の類義語に含まれています。
「常々」の場合は、置き換えるだけではエレガントな敬語表現にはならないので、工夫が必要です。「平素より大変お世話に~」の「平素」を「常々」に置き換えると、「常々大変お世話に~」となってしまいます。
そこで、「常々」を敬語として外部の人や目上の方に使う場合は、最初の例文にもあるように「○○様のご愛顧に常々感謝しており~」など使い方が好ましいでしょう。
「常々」の使い方
- 〇〇様のご愛顧に常々感謝しております。
- これだけは納得ができないと常々思っていました。
- 常々子供をしかりつけている。
平素の類義語⑤ 普段
「普段」も「平素」の意味に含まれるように、「平素は」や「平素より」と同じ内容の文章になると考えることは可能です。
しかし、カジュアルな表現になるため、ビジネスシーンで使用するフォーマルな文章や公式に発行する書面上での使用は控えるのがお勧めです。
「普段からお世話になって~」という表現よりも、「平素より(大変)お世話になって~」と言うほうがフォーマルな言い方です。ビジネス文章では、カジュアルな軽い印象になる文章を控えることが優先したいところ。毎日使う「普段」などは、ついビジネスシーンでも同じような使い方をしてしまいがちですが要注意です。
「普段」の使い方
- 普段から大変お世話になっております。
- 当社では、普段からペーパーレスを意識しており、環境問題での取り組みの一歩として...
- 普段の業務でも使用している備品は、...
「平素」の英語表現
- Thank you as always. (いつもありがとうございます)
- Thank you for your continued support for us at all times.(いつもお世話になってます)
- Thanks for your continued support.(平素よりお世話になっております)
- Thanks for always being a great support.(平素よりお世話になっております)
- Thank you for using our service.(平素よりお世話になっております)
- We are always grateful for your consistant support.(平素は格別のお引き立てを賜わり厚くお礼を申し上げます)
- I would like to express my sincere gratitude for your continued support and patronage.(平素より格別なご愛顧とご高配を賜りまして、心より御礼申し上げます)
6番目と7番目の例文は、日本語の敬語・謙譲語を合わせたあいさつ文として最高ランクに上がりそうですが、英語で直訳するとそんなに何かしてあげたかなと思われるほどの訳文になってしまいます。
英文レターやメールの返信にこうした文章が並んでしまうと、相手が構えてしまうこともあり得ます。
マナーを守りつつ、文章も会話もスムーズにさらりと始まることが、外資系もしくは英語圏でのビジネスフィールドを広げるポイントにもなります。そこで、1~3番目の例文の「いつもお世話になっております」「いつもありがとうございます」程度でも初対面ではない相手の方には通じるでしょう。
「平素」を上手に使えるビジネスパーソンに。
ビジネスシーンでは、つい「いつもお世話になっております」と始めてしまうメールや文章。
間違っていないとはいえ、初対面の人には使わない表現であっても、「平素」を使い「平素は」「平素より」で書き始めることで、グレードアップした文章になるかもしれません。
基本的には、会社対会社、また社外のお客様には、特に意識して「平素」を使ったビジネス文章に仕上げるほうが、メールでも送付状でも効果的です。
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