"兼ね合い"の意味/類語。使い方を例文付きで解説|ビジネス敬語ガイド
「兼ね合い」の意味とは?
社内外問わず、予定や仕事のスケジュールなどについて、「先方との兼ね合いで本日は14時から外出します」といった報告をすることがあると思います。
兼ね合いとは、あまりプライベートで使う敬語ではありませんが、どのような意味があるのか。
兼ね合いという言葉を、あえて物で例えると「天秤」という意味になります。つまり、自分と他者、もしくは第三者同士の間で、双方にとって問題がないように取りはからうことを言います。
ビジネスにおいてよく使われる場面としては、1日の間に複数の予定が入っている場合などに用いられます。
また、「兼ね合い」は、接待のような場面で、利害関係を調整するケースなどでも使われることがあります。
「兼ね合い」の類語
「兼ね合い」には、多くの類語が存在します。今回は、まず最初に類語について詳しく解説していきます。
兼ね合いの代表的な類語は、以下の4つ。
- 均衡
- 安定
- 釣り合い
- バランス
各類語の使い方、兼ね合いとの違いについて勉強していきましょう。
兼ね合いの類語① 均衡
兼ね合いの類語である、均衡の「衡」には「はかりのさお」の意味があり、2つ以上の物・事の間に釣り合いがあることを意味しています。
兼ね合いの類語としてのが意味は、釣り合うという部分であり、ビジネスシーンで言えば「取引先の希望」と「自分の希望」とを同時に満たす条件などを指すことが多いです。
しかし、均衡という類語になると、必ずしも前向きな意味合いに捉えられず、力関係の均衡を保つといったネガティブな意味合いも含んでいる場合もあります。
目上の人や上司に使う場合は気を付けた方が良いでしょう。
兼ね合いの類語② 安定
兼ね合いの類語である「安定」には、「安んじて定まる」という表現から分かるように、物事が落ち着いていて、激しい変化のないことを表しています。
また、相手方・自分ともにネガティブな変化や印象を与えない、すなわち現状の安定をはかるという意味で、兼ね合いと共通しています。この類語は、目上の人や上司にも失礼に当たらない敬語だと言えそうです。
しかし、ビジネスシーンで「安定」という表現を使うと、ちょっと物々しい表現になってしまうことがあります。
「政治的に安定している」「天候がようやく安定してきた」といったように、大きな規模で利用するのが適切な言葉だと言えるでしょう。
兼ね合いの類語③ 釣り合い
「釣り合い」という類語は、均衡とよく似た意味を持ち、双方の平均を保つという意味合いがあります。また、その意味から転じ、双方が相応した状態・ふさわしい状態を指すこともあります。
共通点としては、2つの間の物事における差がない状態を指していることが挙げられます。
しかし、「釣り合いが取れている」という類語は、差別的なニュアンスを含む場合があるため、ビジネスシーンでの利用は控えた方が賢明な敬語でもあります。
例えば、「A社とB社の釣り合いを取るには、A社の書類チェックは早く済ませないといけない」などと表現してしまうと、B社への対応がおざなりであるような印象を与えかねませんので、注意しましょう。そのため、目上の人や上司には頻繁に使わない方が良いかもしれません。
兼ね合いの類語④ バランス
「バランス」という兼ね合いの類語は、ビジネスシーンでは数多くの場面で用いられる言葉かもしれません。
均衡・釣り合いといった言葉と同様の敬語ですが、比較的多くの場面で気軽に用いられます。また、状況によっては「兼ね合い」と同じ場面で使ったとしても、悪い印象を与えないことでしょう。
ただ、上司を始めとする目上の人や取引先への連絡などの場面では、それなりの信頼関係ができていなければ、軽い印象を与える可能性があります。そのため、TPOをわきまえて使うことが大切です。
兼ね合いを用いたビジネス例文
- 営業部と総務部との兼ね合いを考慮すると、やはりみなし残業は撤廃すべきだ。
- なお、この船は天候と波の高さの兼ね合いで、出航を見送る場合がございます。
- 収納スペースと積み荷の兼ね合いから、選択肢はこの車種に絞られた。
- 手続きの煩雑さや周りへの報告などの兼ね合いもあり、事実婚を検討している。
- 当局とスポンサーとの兼ね合いもあり、今回のCM放映は延期することにした。
- 残った缶詰の数と定期購入日との兼ね合いを考慮して、今日は生の材料を使おう。
各例文に共通しているのは、2つの条件を加味した結果、ベターな選択を行っているということです。
兼ね合いは、「どちらかを比べた結果、〜」というニュアンスの例文で使われることが多いため、必ず後に結論がつきます。
もし、まだ決めかねていて結論を述べられない時は、「兼ね合い」は使わないほうが良いでしょう。
【兼ね合いの使い方】兼ね合いを含む慣用句の意味を解説
- 兼ね合いを図る
- 兼ね合いを取る
- 兼ね合いが難しい
- 兼ね合いを見る
- 兼ね合いをつける
- 兼ね合いに出す
どの言葉もビジネスシーンで目にすることがあるほどメジャーな慣用句になります。ここから、各例文の意味から使い方まで解説していきます。
「兼ね合いを図る」の意味とは?
「兼ね合いを図る」という言葉は、「バランスを考える」という意味合いになります。兼ね合いの意味は先に述べた通りですが、図るという言葉には、大きく分けて3つの意味があります。
- 考える、分別する、考慮する
- 物事の内容や程度を推しはかる
- 予測する
これらを総じて、現代のビジネスシーンに投影して意味合いを考えると、やはり「考える」や「考慮する」が適切だと考えられます。
図るという言葉が加わることにより、より能動的に問題解決に向けて動くニュアンスへと変化しています。
積極性を感じられることから、目上の人や上司にも嫌みのない敬語かもしれません。
「兼ね合いを図る」の使い方・例文
- 予算と人数との兼ね合いを図ることで、何とか納期に間に合わせたい。
- 社員とアルバイトとの兼ね合いを図るポジションが、役職とは別に必要だと思う。
- 出入口の数と会場の大きさとの兼ね合いを図って、警備員の有効な配置を決めよう。
「兼ね合いを取る」の意味とは?
「兼ね合いを取る」という敬語は、図るよりも少し踏み込んだ「取る」という表現を用いています。
手に入れる・選ぶなどの直接的な意味から、相手の心を推量してうまくはからうという間接的な意味合いもあります。よって「バランスを取る」という意味で、ビジネスシーンでも用いられます。
兼ね合いを「図る」が、どちらかというと「これからやらなければならない」という未来に向けたニュアンスを含んでいるのに対し、兼ね合いを「取る」には、何かを「近々行う」という、より近いタイミングのニュアンスが含まれています。
「兼ね合いを取る」の使い方・例文
- 稼働時間とそれに対する成果の兼ね合いを取ることが、業務の改善には不可欠だ。
- あなたには、仕事と家庭の兼ね合いを取ろうという気持ちなんて、これっぽっちも無いんですね。
- 海外のクライアントと日本の担当者との兼ね合いを取るには、やはり一定の英語スキルは必須と言える。
「兼ね合いが難しい」の意味とは?
「難しい」という表現が入っていることから、兼ね合いに対して何かネガティブな要素があることを連想させる敬語です。
よって、兼ね合いが難しいは「(双方の)バランスを取ることが難しい」という意味合いになります。
単純に兼ね合いが難しいという表現を用いることもあれば、口語では「兼ね合い(バランス)を取るのが難しい」などと話すケースもよく聞かれます。
交渉事に臨む場面や、会議でのディスカッションなどでよく使われる敬語のひとつです。
交渉などはビジネスの中で重要なポイントになりますので、以下の例文を見て、いざというときに覚えておくと役立つことでしょう。
「兼ね合いが難しい」の使い方・例文
- 案自体は魅力的だが、実際に通すとなると条例との兼ね合いが難しいだろう。
- 商品開発を行う場合にネックになるのは、価格と品質との兼ね合いが難しいことです。
- 営業部長は明日に本社到着の予定だから、社長のスケジュールとの兼ね合いは難しい。
「兼ね合いを見る」の意味とは?
「兼ね合いを見る」という敬語には、一度状況を確認するという意味合いが含まれており、「バランスが取れているか確認する」という状況で使用できます。
使う状況としては、事を始めるには不確定な要素があるため、事前によく諸々のバランスを確認しておこうという場面で用いられます。
比べる2つの条件・内容などは決まっていても、まだ詳細について情報・知識に乏しい場合に使われるケースが多いようです。
また、相対する内容の溝が深い場合に、どのようにして距離を縮めるかを検討する意味合いで用いられることもあります。この使い方をポイントに、以下の例文を見てみましょう。
「兼ね合いを見る」の使い方・例文
- A社とB社の合併にはお互いの情報が少なすぎるので、双方の兼ね合いを見る必要がある。
- ガスコンロを選ぶ際には、火力と安全性の兼ね合いを見て購入を決めましょう。
- 社長と副社長の意見の相違は大きいが、兼ね合いを見て共通点を提案してみよう。
「兼ね合いをつける」の意味とは?
「兼ね合いをつける」とは、「兼ね合いを取る」以上に事態解決に積極的な表現になります。
交渉の場面などでは、必ずしもお互いが100%納得のいく方針を固めることは難しい場面に遭遇することも少なくありません。そのようなときに「兼ね合いをつける」必要性が生じます。
契約において、条件面で折り合いがつかないといった場合や、新しい施設を建てる際に住民の反対意見を調整する場合などが、利用する場面として想定されます。ビジネスにおける重要な言葉なので、下記の例文のような使い方を参考にしてください。
「兼ね合いをつける」の使い方・例文
- 部長は墓地の建設に強気だが、地域住民との兼ね合いをつけるのは難しいかもしれない。
- 親御さんの要望と子供たちの気持ちとの兼ね合いをつけるには、やはり親御さんに現状を見てもらうしかないだろう。
- 株主と経営陣との兼ね合いをつけたいのなら、今後の展望をアピールする必要がある。
「兼ね合いに出す」の意味とは?
あまり使われませんが「兼ね合いに出す」という表現も、ビジネスシーンでは用いられることがあるようです。
意味合いとしては「引き合いに出す」が近く、兼ね合いをつけるために、何らかの例を出して話をすることを指すことが多いようです。
辞典などでは、「兼ね合いに出す」という表現が例として載っているものを見つけることが難しいため、現代になって生まれた表現の1つだと考えられます。
「兼ね合いに出す」の使い方・例文
- 前回成功したプロジェクトの例を兼ね合いに出し、S社とのやり取りを進めるよう指示した。
- 実際に工事を始める前に、利害関係者の意向を兼ね合いに出して、スケジュールを詰める必要がある。
- 前年度と今年度の実績を兼ね合いに出した結果、バランスが悪い部門について予算を見直す方向性に固まった。
「兼ね合い」の英語表現
- good balance(良いバランス)
- proportion(釣り合い)
- with ~ in mind(~を考慮に入れて)
- on even terms with~(~と対等で)
- balance A with B(AとBのバランスを保つ)
- In view of balancing~(~の兼ね合いからは)
6つの例文の中で、もっとも多く使われている英語は「balance」で、balanceを用いた熟語がより「兼ね合い」の意味に近い表現とされています。また、ビジネスシーンで用いる場合に使い勝手が良いのは、やはり熟語である英語になります。
特に、In view of balancing~ などは、その後に比べる2つの何かを伝えることで、後ろの文章で結論を伝えるタイミングで用いるのに適しています。
英語で話す必要がある場合を備えて、いくつか例文を作っておくと、いざというときに便利かもしれません。
「兼ね合い」の使い方・慣用句は覚えておいて。
兼ね合いという表現は、どのような動詞を付け加えるかによって、ニュアンスが微妙に変わってきます。
日本におけるビジネスシーンであれば、一つひとつの言葉のニュアンスに気を配ってコミュニケーションを取る必要がありますが、英語圏の方と話す際には、結論を意識して話す必要があります。
微細な表現を使い分け、できる限り関係者に好印象を与える使い方を、心がけたいものですね。
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