感動的すぎる・・・。靴磨きによって強くなる「家族の絆」の物語

Kazuhiro Ikeda 2015.12.20
靴磨きが生み出す感動の情景をご存知ですか。“靴を磨く”という行為には、感謝の気持ちなど人々の素敵な思いが含まれています。今回は靴磨きによってさらに強くなった「家族の絆」の物語をお届けします。珠玉の感動ストーリーを、ぜひお読みください。

出張靴磨き屋の池田和弘です。突然ですが、みなさんは自分以外の誰かの靴を磨いたことはありますか?その経験がないとしたら、ぜひ一度磨いてみることをおすすめします。

連載第6回目の今回は『靴磨きが生んだ感動の情景』のお話です。靴を磨くことで生まれた感動エピソードをご紹介します。

靴磨きで「思い」を伝える

靴磨き

私は普段の靴磨きの仕事と別に、靴磨きを学ぶことのできるワークショップを開催しています。どんな方が参加するかというと、ほとんどは大人の男性です。仕事の靴が汚れているとやる気も出ないですし、男性の靴磨きへの関心はやはり高いみたいですね。

そんな中、毎年一度だけ参加者の顔ぶれが様変わりする回があります。父の日に開催される『お父さんの靴を磨こう』というイベントです。いつも仕事をがんばってるお父さんの靴を磨いて感謝を伝えよう、というもの。

その日だけは女性と子供の参加者のみとなります。家から靴をこっそり持ち出してピカピカに磨いたら、メッセージカードと一緒に元の場所に戻します。

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いつものくたびれた靴が、誰かの手によって丁寧に磨かれている。それは働く男性にとって思いもよらないプレゼントの様なものです。

 

お父さんに感謝の「靴磨き」

とある家族の話をします。

『お父さんの靴を磨こう』に若いお母さんと6歳の男の子が参加してくれました。靴をピカピカにして、お父さんをびっくりさせたいそうです。

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家から持ってきたお父さんの靴はぼろぼろ。いつもは履けなくなったら新しい靴を買うらしく、靴磨きをしているところを見たことがない。私は、この靴をきれいにするのは中々の大仕事だなあ、大丈夫かなと見ていました。

ワークショップが始まり、お母さんも男の子も真剣に靴を磨いています。もくもくとひたすらに手を動かしています。その甲斐あって、靴は予想を越えてきれいに仕上げることができました。磨き終わった2人もとても満足そうな表情です。

そして、最後にメッセージカードを書いておしまいです。喜んでくれると良いねと伝えて、手を振って別れました。

 

靴を磨かれたお父さんの気持ち

靴を磨く

後日のことです。

件のお母さんから私に連絡がありました。わざわざ御礼の電話を掛けてきていただいたのです。お母さんは、きれいな靴をお父さんが見つけたときのことを思い出す様に話してくれました。

「磨かれた靴を見て、主人は信じられないといった様子で笑っていました。でもそのあと息子の書いたメッセージカードを読んで黙りこみ、、やがて泣き出してしまいました。カードにはこう書いてありました」

『いつもお仕事がんばってくれてありがとう』

「自分の汚れた靴を、手を汚してきれいにしてくれた。仕事をがんばっている姿を見ていてくれた。そのことがずいぶん嬉しかった様です。私もなんとも言えない気持ちになって、その場で言葉を尽くして感謝を伝えました」

お父さんは、お母さんと男の子の目を見て「いつもありがとう、これからもがんばるね」と言ったそうです。

 

靴を磨いたお母さんの心境変化

大成功の報告を受けて、私も跳び上がるほど嬉しかったです。

ですが実は、その後にお母さんが話してくれた内容の方が私には印象的でした。

「靴磨きをしていたら、主人がどれだけ仕事をがんばっているか伝わってきました。色んな場所をたくさん歩いたんだなとか、靴を触って気付いたこと、思いを巡らせることが沢山あったんです。主人のことが少し分かった気がしました」

「応援したい、主人の役に立ちたい。磨いていたらそんな気持ちが溢れてきて、自分の中にある愛に気が付いたんです」

照れながら、そんなことを教えてくれました。

靴を磨く

手が汚れる事を顧みず他者の靴を磨くという行為は、靴を通してそのひとを思うこと。そして自らの心を知らず知らず整理整頓することなのです。私はそこに靴磨きの本質を見た様に思いました。靴がきれいになったという結果ではなく、靴を通して自分と相手の繋がりを確認する。

『お父さんの靴を磨こう』というイベントの価値は、磨くひとの方にこそあるのかもしれません。

 

靴磨きが生んだ家族の絆

靴には、その人となりが表れます。靴に触れてみると『こんなひとだったんだ』と、持ち主の意外な一面に気付くことができるかもしれません。そうして対話をすることが、私が他者の靴を磨くことをおすすめする理由です。

 

最後に

ぜひ大切なひとへのギフトとして靴磨きをしてみてください。『あの時はこの靴を履いて一緒にあの場所に行った』など記憶を呼び覚ましてくれることでしょう。きっと言葉や贈り物では表現できないあなたの思いを伝えてくれるはずです。

ところで、男の子は靴を磨きながらどんなことを思っていたんでしょうか。職人の様に寡黙に靴を磨き続けていました。

将来は靴を磨くひとになる、と言っていましたが(笑)

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筆者紹介【池田和弘】


池田和弘

出張専門靴磨きサービス『I.K.D』代表。ワックスを用いずクリームのみで革靴をハイシャインする『すり込み式』の靴磨きによって、月間500〜800足の靴を磨いている。

世界的ファッションブランドとのコラボレーションイベントや靴磨きを通したビジネスセミナーの開催など、従来の靴磨きの枠に捉われない企画を実施。現在は外資系企業においてトップセールスの方々への靴磨きを中心に活動中。社会福祉への靴磨きの活用が関心事。

 

【池田和弘】アーカイブ

連載①「月間500足以上の靴を磨く中で気付いた、ビジネスマンが靴を磨くべき5つの理由

連載②「就活で内定を取るコツは「靴」。就活生が靴を磨くべき3つの理由

連載③「靴磨き屋が教える!誰でも簡単に5分でできる靴の磨き方」

連載④「いい靴を大切に履き続けたい。革靴が長持ちする「5つの習慣」」

連載⑤「もう、雨の日の靴に迷わない。雨の日に履くべき靴&革靴が濡れた時の対処法」

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