"お気遣いなく"の意味/例文。言い換えできる類語付き|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2019.03.05
自分に気を回さなくて良いと伝える敬語、お気遣いなく。幅広いシーンで使われますが、どこか丁寧さに欠けると感じる人も多いでしょう。今回は、お気遣いなくの意味から目上に使えるのかどうか、例文、言い換えできる類語まで徹底解説。上司や取引先に失礼にならないよう要チェック!

「お気遣いなく」の意味とは?

お気遣いなくの意味とは

「お気遣いなく」とは「心配することはないですよ」「気を配ることなく」という意味を持ち、相手が自分のためにしてくれる気遣いや行為を優しく断る敬語です

強く断るような表現ではないため、相手に不快な印象を与えにくいところが特徴。

「気遣い」には「相手が自分のために気を遣ってくれること」という意味があります。これに、接頭語の「お」をつけて丁寧な表現に。さらに、打ち消しの意味がある「なく」を付けることで、「気を遣わなくてもいい」という意味になります。


ビジネスでの「お気遣いなく」の正しい使い方とは?

お気遣いなくの使い方とは

ビジネスシーンで「お気遣いなく」を使うシュチエーションは、多く存在します。

例えば、お土産やお礼の品を断りたい場合に使えます。他にも、相手が自分を気遣ってしてくれた行為や気遣ってかけてくれた言葉に対して「私に気を遣う必要はありませんよ」と伝える使い方をすることも可能です。

また、メールや手紙では相手が自分に気を遣うことを予測して、気を配ることなくても問題ありませんよ、と伝えたいときに用います

一方で「お気遣いなく」を乱用してしまうと、逆に失礼な印象を与えてしまうことも。ここぞというときにだけ使うようにしましょう。


「お気遣いなく」は、目上の人に使える敬語表現なのか?

お気遣いなくを使える相手とは

「お気遣いなく」をビジネスシーンで目上の人や上司、取引先の人に使いたい場合は、「お気遣いなく」とそのまま使ってしまっては、失礼にあたります

「お気遣いなく」は動詞を省略している完結な使い方をしているからです。そのため、同僚や部下、気心が知れた相手にしか使うことができません。

目上の人や上司に使う場合には「お気遣いなく」の後に動詞を用いて使うことがポイント。「お気遣いなさらないでください」や「お気遣いなさいませんよう、よろしくお願いいたします」など、文末表現をプラスすることで丁寧な敬語表現となります。話し言葉やメールなどの書き言葉でも使えます。


「お気遣いなく」を用いた目上に使える例文一覧

なぜ、忖度が流行語になったのか
  • この度はお歳暮をお贈りくださいましてありがとうございます。どうかお気遣いなどなさいませんようお願い申し上げます。
  • どうぞお気遣いなく、先に帰宅してください。
  • 本日はお土産をありがとうございました。私共でおいしくいただきました。どうかお気遣いなさらないようお願いします。
  • 書類作成の件、承知しました。お気遣いなさらないでください。
  • 本日は出張のため途中参加となりますが、お気遣いなく進めてください。
  • 先日は、すてきな手土産ありがとうございました。お気遣いなさいませんようよろしくお願いいたします。

「お気遣いなく」の例文は、大きく2つに分かれます

1つ目は取引先やお客様からお土産などをもらったときに「気を配ることなくても大丈夫ですよ」と伝える使い方です。お土産やお歳暮などのお礼を伝えた後で「お気遣いなく」を続けると、失礼に当たることがありません。文末表現を変えることで、ビジネスメールや手紙にも応用できます。

2つ目は、社内の同僚や部下などに「気を遣わなくても大丈夫ですよ」と伝えたいときに使う方法です。例文では、自分だけ帰りが遅くなる場合や片付けなければならない仕事が増えた場合などに「お気遣いなく」を使うことで、周囲に配慮することができます。

【「例文」で使われている敬語】
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「お気遣いなく」と言い換えできる類語一覧

お気遣いなくの類語① お気になさらず

お気遣いなくの類語①お気になさらず

「お気になさらず」は「お気遣いなく」とほぼ同じ意味を持つ類語になります

「お気遣いなく」と同じように、相手に「気を遣わなくても大丈夫ですよ」「気を配ることなく」という使い方が一般的。

「お気遣いなく」と異なるのは、既に相手が気にしている事柄あるという点です。その点に対して「気を遣う必要はありません」ということを伝えることが可能です。また、「お気遣いなく」のように相手に感謝をするというニュアンスを含んでいないところもポイントです。

「お気になさらず」の例文

  • A:只今、再度資料を作成しております。お待たせして申し訳ございません。
  • B:問題ありません。お気になさらないでください。
  • A:いつも弊社までお越しいただきありがとうございます。
  • B:お気になさらないでください。

【「例文」で使われている敬語】
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お気遣いなくの類語② 大丈夫です

お気遣いなくの類語②大丈夫です

「お気遣いなく」の類語として、「大丈夫です」も知っておくべき言葉になります

「お気遣いなく」と同じように「心配しなくてもいいですよ」「気を配ることなくても問題ありません」と伝えたいときに使います。感謝の気持ちを伝えるニュアンスは含んでいません。

また、「大丈夫ですよ」はYesかNoを答える場面などでも使われることがあり、幅広く使える便利な言葉なので誤用も招きやすいです。

さらに「大丈夫ですよ」はとてもフランクな表現なので、目上の人や上司、取引先の人に使う敬語としては向いていません

「大丈夫です」の例文

  • A:会議の開始が30分遅くなるようです。お待たせして申し訳ございません。
  • B:大丈夫です。こちらで待たせていただきます。
  • A:次回の予約が1ヶ月後となります。お時間をいただきまして誠に申し訳ございません。
  • B:大丈夫です。よろしくお願いいたします。

お気遣いなくの類語③ 結構です

お気遣いなくの類語③結構です

「結構です」は「心配ありません」「気を配ることなくこのままで大丈夫です」という意味のある敬語です

「お気遣いなく」の類語で、相手に配慮をする敬語であるという点では同じです。「結構」には「難点がないこと」「もう十分である様子」という意味があるため、これ以上の状態を望んでいない場合に使います

また、「結構です」は感謝の気持ちを伝える言葉ではなく自分の気持ちだけを表現する言葉となるため、ビジネスシーンでは目上の人や上司、取引先の人に使うと失礼にあたる場合があります。

使い方によっては、少し冷たい印象も与えるため、使い方には注意が必要です


「結構です」の例文

  • A:明日の会議は、どうぞよろしくお願いいたします。
  • B:こちらこそよろしくお願いいたします。なお、電車で参りますが、駅へのお出迎えは結構でございます。
  • A:タイトな納期で製作をお願いしてしまい、大変申し訳ございませんでした。
  • B:とんでもございません。2日もあれば結構です。

【「例文」で使われている敬語】
「結構です」の意味とは?正しい使い方から類語まで解説します

「とんでもございません」は正しい敬語?目上に使える例文まで解説

謝る時の「申し訳ございませんでした」が間違い"と言われてしまう理由とは?


お気遣いなくの類語④ お構いなく

お気遣いなくの類語④お気遣いなく

「お気遣いなく」と似た意味を持つ類語、「お構いなく」。「お気遣いなく」と同じように「構う必要はありません」「気を配ることなくても心配ありません」という意味になります。

また、「お構いなく」も動詞を省略しているため、ビジネスシーンでは上司や目上の人、取引先の人にこのまま使うことはできません

「お構いなく」は話し言葉のみで有功な敬語です。メールや手紙などのビジネス文書にはあまり好ましくないため、書き言葉では「お気遣いなく」を使うといいでしょう。

「お構いなく」の例文

  • A:本日はお越しいただきありがとうございます。ゆっくりとおくつろぎくださいませ。
  • B:ありがとうございます。お構いなさいませんようお願いいたします。
  • A:お時間までこちらで少々お待ちくださいませ。
  • B:ありがとうございます。お構いなく。

お気遣いなくの類語⑤ お気持ちだけ頂戴します

お気遣いなくの類語⑤お気持ちだけ頂戴します

相手への感謝の気持ちを強調したいときには、類語である「お気持ちだけ頂戴します」を使うといいでしょう。

「気を配ることなくても問題ありません」という意味と共に、「気遣いをしてくれる気持ちをありがたく思います」というニュアンスを伝えられます。そのため、目上の人に使っても失礼な印象にはなりにくい敬語です。

柔らかく丁寧な印象を与えられる敬語表現で、上司や取り引き先の人にも使うことが可能です。また、手紙やメールなどのビジネス文書にも取り入れられますよ。

「お気持ちだけ頂戴します」の例文

  • A:よろしければ、来週の日曜日にゴルフをご一緒しませんか?
  • B:申し訳ございません。仕事があり参加できそうにありません。せっかくのご厚意ですが、お気持ちだけ頂戴いたします。
  • A:こちらの会議室は自由にご利用くださいませ。
  • B:ありがとうございます。お気持ちだけ頂戴します。

【「例文」で使われている敬語】
「ご厚意」の正しい使い方|例文から類語"ご好意"との違いまで解説します

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