"させていただく"は間違い敬語?使い方&例文まで解説|ビジネス敬語ガイド
「させていただく」と「させて頂く」との違いとは?
「させていただく」は「する」+補助動詞「もらう」を付けて「~させてもらう」が元の形です。補助動詞としての「もらう」を使う場合、謙譲語に直すときは「いただく」とひらがなで表記します。
よって、「させていただく」は自分に利益がある、または相手に迷惑がかかる行為を行うことに対して許可を求めた意味を含める表現になります。
一方で「させて頂く」は「する」+動詞「もらう」で成り立っています。人から何かを受け取る、迎える、引き受けるなど意味がある動詞として「もらう」を使う場合も謙譲語は「頂く」になりますが、この場合は漢字で「頂く」と表記します。
そのため、「させて頂く」は「~させて、頂く」の構造が正しく「部下に仕事をさせて、私が報酬を頂く」のような使い方になります。
「させていただく」の間違いやすい使い方
注意点① 二重敬語に気をつける
「させていただく」とは、「いただく」が謙譲語になっている敬語表現です。そのため、「拝見する」「拝読する」「承る」などの謙譲語、「お~する」の接頭語を付けた敬語表現と一緒に使うと二重敬語になってしまいます。
例えば、「拝見させていただきます」は二重敬語で間違いですので、正しくは「拝見します」と謙譲語一語で使う、または「読ませていただきます」などの謙譲語ではない一般動詞+させていただく、の形として使うようにしましょう。
注意点② 許可が入らない場合は使わない
ビジネスシーンでも「させていただく」は相手に遠慮がちに許可を求める意味を含めた使い方ができますが、相手からの許可が必要でない行動については使用できません。
例えば、相手に連絡したい時に「○○に連絡させていただきたいのですが、ご都合は宜しいでしょうか?」と許可の意味を入れた敬語の場合は使用できます。
一方で、相手の許可の有無は関係なく、こちらから連絡したい旨を伝える時に「それでは、準備次第連絡させていただきます」と使うのは間違いです。
注意点③ 役職や担当を述べる時は使わない
「させていただきます」は、役職や担当、役目を受ける時にも使用しますが、あくまで「受ける時」のみです。以前より役職や担当に継続して就いている場合の、自己紹介のフレーズとしては使用できません。
例えば、人事発表があった後に「この度新しく○○課課長をつとめさせていただく、○○と申します」と役職や役目に応える時には使用しますが、すでに課長職として勤務している人が「課長をつとめさせていただいております、○○と申します」と言うのは間違いです。
注意点④ 何度も使いすぎない(させていただく症候群)
「させていただく症候群」とは、何でも「させていただく」を付けて表現する現象のことです。
ビジネスシーンでは目上の人に対して丁寧な対応をしたいがために、二重敬語やさせていただく症候群のような、過剰な敬語表現がしばしば使われますが、当然間違いです。
例えば、「○○大学を卒業させていただきました」「××さんにご連絡させていただきました」などは、相手に恩恵もなく、許可も入らない表現に対しても「させていただく」がついているため間違いです。
正しい表現は「○○大学を卒業いたしました」「××さんにご連絡いたしました」です。
注意点⑤ 相手に迷惑をかける場合はNG
「させていただく」は相手に許可を求める時に使用する敬語ですが、相手に迷惑をかける行動に対して「させていただく」というと、一方的で悪い印象となるため使用できません。
例えば、「欠勤させていただきます」「10月末で退職させていただきます」は間違いです。
欠勤や退職は職場に迷惑のかかる行動のため、「欠勤させていただきたいのですが、宜しいでしょうか」や「10月末で退職させていただきたく、お願い申し上げます」のように、許可を求める敬語をプラスするようにしましょう。
注意点⑥ 不自然な「サ入り表現」を避ける。
「させていただく症候群」と同じく、「させていただく」を使う時に注意したいのが不自然な「サ入り表現」です。
サ入り表現とは、過剰な敬語を使おうとして、不自然な「サ」が入ってしまうことです。
例えば、休みの許可をもらう時は「休まさせていただきます」ではなく、「休ませていただきます」が正しい使い方です。
「させていただく」で対応する動詞によって「サ」を入れるかどうか迷った時には、一旦「させていただく」を「させてもらう」に直すと分かりやすいです。
「休ませていただく」なら「休む」+「させてもらう」にして、「休ませてもらう」をそのまま敬語に直して「休ませていただく」にすれば大丈夫です。
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