"不束者"の意味/正しい使い方とは?例文&言い換え類語|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2018.11.01
「気の利かない人」という意味を持つ言葉、不束者(ふつつかもの)。聞いたことはあっても、実際の使い方や語源などを知っている人は少ないでしょう。今回は、不束者の意味から語源、由来、丁寧な例文、言い換えできる類語まで徹底解説。難しい言葉を巧みに使える大人になりましょう。

「不束者」の意味とは?

「不束者」とは、「気の利かない人」「配慮などが行き届いていない人」を意味します

読みは「ふつつかもの」。ビジネスシーンのほかにも、結婚での挨拶で例文として「不束者ですが、宜しくお願いいたします」という表現を聞いたことがある人も多いのではないでしょうか。

現在では、自分または身内の者に対して例文として「気の利かない人ですが」「行き届かないことがありますが」という自分をへりくだって相手を高める、謙譲の気持ちを込めた挨拶として使用されます

日常生活ではあまり登場しないフレーズだからこそ、「不束者」の正しい意味や使い方、語源や類語、文例を覚えておきましょう。


「不束者」の語源や由来を分かりやすく解説!

「不束者」は、現在まで意味や使われ方が変化してきた言葉です。

「不束者」の語源が使われたのは平安時代前後で、その時は「不束」ではなく語源の「太束者(ふとつかもの)」と書き、「まるで柱のように太くて丈夫な人」を指す言葉でした

その後、時代の移り変わりとともに「細い方が美しい」という美意識の変化とともに、語源の「太束者」は「太っていて不格好な人」を指すようになります。

語源から「不束者」の字に変わり、「不格好な人、武骨な人、下品な人」の意味に変遷し、語源である「柱のように太くて丈夫な人」から現在の「気の利かない人」「配慮が行き届かない人」の意味を持つようになりました

今では語源とは離れた意味を持つ言葉として、ビジネスシーンから結婚での挨拶まで敬語とともに使われています。


知らない人は意外と多い?「不束者」の正しい使い方とは?

不束者の正しい使い方とは

「不束者」は、自分や身内を気の利かない人とへりくだって言う言葉です

謙譲の気持ちを込めたフレーズですので、目上の人に対しては使えません。誰かに紹介する時、「課長は不束者ですが」などと言うのは大変失礼ですので使わないようにしましょう。

「不束者ですが、どうぞ宜しくお願いいたします」のフレーズとして、相手のご両親へ結婚での挨拶や、プロポーズを受けた後の返事として使用します

ビジネスシーンでは、新しい部署へ配属になった時に「不束者ですが、どうぞ宜しくお願いいたします」と敬語とともに使うこともありますが、「若輩者」「未熟者」などの類語の方が適している場合もあります。


「不束者」を使った丁寧な例文

重ね重ねは使いすぎない
  • 兄弟そろって先生の元でお世話になれ、すばらしい縁に感謝しております。不束者の弟ですがよろしくお願いいたします。
  • 不束者と言われておりますが、皆様から頂いたご助言をいかし、精一杯努力していく所存でございます。
  • 不束者ではございますが、末永くどうぞ宜しくお願いいたします。
  • 不束者ではありますが、与えられた職務を全うできるように尽力いたします。皆様どうぞ宜しくご指導のほどお願いいたします。
  • 不束者の娘ではございますが、このような良縁に恵まれ親族一同大変安心いたしました。
  • 不束者ですが、ご指導ご鞭撻を賜れますよう宜しくお願い申し上げます。

ビジネスシーンで「不束者」を使用するタイミングは、自分や身内が新しい部署へ異動になった、または入社した際の挨拶として多く使用されます

例文として「不束者と言われますが、ご指導ご鞭撻のほどお願いいたします」なら、「気の利かない人でまだまだ未熟ですが、宜しく指導お願いします」「まだ気の利かない身内ですが、どうぞ宜しくお願いします」などの気持ちがこもっています。

また、結婚での挨拶やプロポーズの返事として、自分や身内は「行き届かない点もあるかもしれませんが、これから宜しくお願いいたします」という意味があります。


「不束者」と言い換えできる類語一覧

不束者の類語① 若輩者

「若輩者」は「年の若い人」と「仕事などの経験が浅く未熟な人」の2つの意味があります。

ビジネスシーンでは、後者の「経験が浅く未熟な人」の意味として多く使われます。「不束者」は、自分や身内を「気の利かない人」と謙遜するフレーズですが、「若輩者」はある程度仕事の経験のある人や、年齢が高い人が自分の力量を謙遜する時に使うフレーズです

ビジネスシーンでは、新しい部署に異動した時、昇進した時や役職に就いた時、乾杯の音頭を任された時の挨拶としての使い方があります。

「若輩者」の使い方

  • このような大役を仰せつかり、大変光栄に存じます。まだ若輩者の身ですがよろしくお願いいたします。
  • 若輩者ですが、早く皆様のお役に立てるように尽力いたしますので、ご指導ご鞭撻のほどよろしくお願いいたします。
  • ただいまご紹介にあずかりました○○と申します。若輩者ですが、ここで乾杯の音頭を務めさせていただきます。

不束者の類語② 不届き者

「不届き者」とは、しきたりやルールに反した行動をする者という意味があります。

不届きとは配慮が足りない、気の利かないという意味のほかに、法に背く行動をすることをという使い方もします。

一番目の気の利かない人、という使い方は「不束者」と同じ意味がありますが、ビジネスシーンを含め一般的に「不届き者」というと、二番目の「法に背く、しきたりに反した者」という意味になります

不束者の類語が若輩者など謙遜の気持ちを持つ、どちらかといえば肯定的なニュアンスを持つのに対し、不届き者の類語は無法者、乱暴者などの否定的なニュアンスを持つ言葉になります。

「不届き者」の使い方

  • この度は、不届き者による強盗被害により多くのお客様にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
  • 不届き者のなしたことにより、貴社にご心配をおかけし誠に申し訳なく存じます。
  • 重役会議中の会議室に直訴を求めて乗り込むなど、まさに不届き者のなすことである。

不束者の類語③ 未熟者

「未熟者」とは、熟していない者、つまり仕事などの経験が浅く、技量もまだ身についていない者という意味があります

不束者が気の利かない人と謙遜する表現に対して、未熟者は仕事での技量が未熟である気持ちを込めた言葉です。

また、類語の「若輩者」と比較すると、若輩者は十分に仕事の力量や経験がある人が自分を謙遜するための使い方、「未熟者」は本当に力量が未熟な人が自身を指す使い方をする言葉です。

「未熟者」の使い方

  • この度新しく配属になりました○○です。未熟者ですがよろしくお願いいたします。
  • 未熟者のため、できるだけ早くお役に立てるように精一杯努力いたします。
  • 私はこの分野ではまだ未熟者ですがよろしくお願いいたします。

不束者の類語④ 半人前

「半人前」とは、一人前の半分の力量しかない、つまり未熟者の意味があります。

不束者は気の利かない人という意味がありますが、半人前は技量が未熟である人を指すため、若輩者や未熟者へ言い換えできます

ビジネスシーンよりは、直接的な技量が必要な職人の世界で、弟子を紹介する時に例文として「まだまだ半人前ですがよろしくお願いいたします」などの使い方をします。また、皮肉として「腕は半人前なのに口は一人前」などの使い方もします。

「半人前」の使い方

  • 敬語も知らないなんて、口は一人前なのに社会人としては半人前ですね。
  • ビジネスマンから料理人に転身したため、こちらではまだまだ半人前です。
  • この人はまだ腕は半人前ですが、なかなか見込みがあります。今後ともよろしくお願いいたします。

「不束者」の英語表現

ご査収の程よろしくお願いいたしますの英語表現
  • My brother has no manners at all, but I hope you will make something of him.(不束者の弟ですが、なにとぞ宜しくお願いいたします)
  • I'm not much good at anything, but please be kind to me.(不束者ですが、よろしくお願いいたします)
  • You're rude.(君はなんて不届き者だ)
  • It's rude of me to have kept you waiting.(お待たせしてしまい、大変失礼いたしました)
  • You don't want to be rude.(無礼な振る舞いはやめなさい)
  • She is a kind, considerate person.(彼女は気配りができる優しい人です)

不束者を英語で言いかえると"rude"ですが、これはどちらかといえば不届き者や無法者、というニュアンスがあります。

よって、英語で不束者ですがと言い換えたい場合は、「配慮がない、気が利かない」という意味の"no matter at all"や"be not much good at anything"が使われます。


「不束者」の意味をスラスラ答えられる大人になろう!

不束者の語源やビジネスシーンでの使い方、言い換えや例文、文例をご紹介しました。気の利かない人、という意味を持つ謙遜の気持ちがこもった不束者は、ビジネスシーンから結婚での挨拶まで使われる日本人らしい謙虚な表現です。

ほかの敬語や言い換えできる類語、文例と合わせて押さえておけば、相手にもスマートに謙虚な気持ちを表現できるようになりますよ。

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