"ご理解"の正しい使い方。例文&類語"ご了承"との違い|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2019.02.07
ビジネスメールで目にする敬語、ご理解。上司や先輩など目上の人に使うには丁寧さに欠けると思う人も多い言葉でしょう。今回は、ご理解の意味から「ご理解のほど/ご理解いただき」など使い方別の例文、言い換えできる類語まで解説。"ご了承""ご容赦"との違いも押さえましょう!

「ご理解」の意味とは?

ご協力の類語⑧ご理解の意味とは

「ご理解」とは、上司など目上の相手にこちらの事情を汲んでほしい時に使う敬語です。社内でも社外でも、いろんな場面で言ったり言われたりするので、使い方をしっかりマスターしておきたい言葉でしょう。

「ご理解」に含まれている「理解」は、「物事の意味を知ること」「道理がわかること」「相手の気持ちや立場、事情などをよく把握すること」といった意味を持っています

「理解」に丁寧な表現である接頭語の「ご」をつけることで、相手に対する尊敬の気持ちを示しながらも自分の事情を考慮してほしいという思いを伝える表現となります。

そのため、「ご理解」を含んだ言い回しである「ご理解ください」は、会話の中だけでなく、ビジネスメールや書類の文章でもよく使う表現です。


ビジネスシーンでの「ご理解」の正しい使い方

ご理解の正しい使い方

「ご理解」を含んだ「ご理解ください」は、目上の相手に対して自分の事情や立場などを察してもらいたいという気持ちを示した敬語表現です

尊敬を表す接頭語である「ご」や、丁寧語である「ください」を「理解」と組み合わせていることから、相手を自分よりも上の立場としてとらえ、依頼や懇願の意味で使います。

会話などでの話し言葉としても、メールや書類の文書での書き言葉としても使うシーンは多いでしょう。上司などに対して、自分の事情をわかるよう「察してください」と求める気持ちを婉曲に伝えるには、便利な言葉と言えます。

─「ご理解」を使った例─

  • ご理解のほど
  • ご理解ください
  • ご理解いただき
  • ご理解賜りますよう

【目上◯】「ご理解のほど」の使い方

「ご理解のほど」の使い方

「ご理解」を含んだ言葉でメールでも会話でも使われることが多いのが「ご理解のほど」という言葉です。

「ご理解ください」という言い方は、こちらの事情や立場を察してほしいという気持ちを伝えるには直接的で、理解を強要するニュアンスを感じさせる可能性があります。

特に取引先や顧客など目上の人に対して使うとマイナスな印象を与えてしまいかねません。それを避けるために、「ご理解」の後に断定を避ける表現「〜のほど」を付け加えてやわらかい表現にしたのが「ご理解のほど」です

やや改まった言い方でもありますので、より丁寧さが高まると言えるでしょう。


「ご理解のほど」を使った丁寧な例文

  • こうした事情で明日の会議は欠席いたします。ご理解のほどよろしくお願いいたします。
  • 締切日が迫っておりますため連絡いたしました。何度もメールを差し上げて申し訳ございませんが、ご理解のほどお願い申し上げます。
  • 台風の影響により商品の到着が遅れる可能性があります。ご理解のほど何卒よろしくお願いいたします。
  • 資料はこちらでわかると思います。何卒ご理解のほどよろしくお願いいたします。
  • 弊社の事情で会場を変更させていただきました件、ご理解のほどお願い申し上げます。

「ご理解のほど」という言葉は、例文のように「ご理解ください」という言葉と同じくビジネスシーンでは多用されます。ただし、「ご理解ください」よりもニュアンスがやわらかく、理解を求める気持ちを伝えながらも強要する印象はあまりありません。

「~のほど」がつくことで、事情を汲み取って許しを得る意図をやんわりと、しかし確実に伝える表現となります。

例文からも分かるように「ご理解ください」よりも押し付けるような印象が薄いため、取引先や顧客など、社外の目上の人に対して使うには適切な言葉と言えるでしょう。メールでも多用される便利な表現です。

【「例文」で使われる敬語】
「よろしくお願いいたします」の意味から正しい使い方までをまとめました

「お願い申し上げます」の使い方|言い換えできる類語から例文まで解説します


【目上△】「ご理解ください」の使い方

ご理解くださいの意味や使い方

「ご理解ください」という言葉はビジネスシーンでよく使われる敬語です。前述した「ご理解のほど」という言葉とともに知られています。

「ご理解ください」は、「ご理解のほど」よりは相手に理解を求めるニュアンスが強く、こちらの事情や立場がわかるよう察してほしいという意図をより直接的にはっきり伝える表現と言えるでしょう。

誤解を生むようなあいまいな状況になることを避けたい場合には特によく使われる言葉です。


「ご理解ください」を使った丁寧な例文

  • 来月1日より営業時間を下記の通り変更いたします。恐れ入りますがご理解ください。
  • 明日から出張のため返信が遅れる場合があります。ご理解くださいますようお願いいたします。
  • この度はご希望に沿うことができず申し訳ございません。ご理解くださいませ。
  • 納品手順を変更しました件、ご理解いただきましてありがとうございます。
  • 外装工事のためご迷惑をおかけしますが。ご理解くださいますようお願いいたします。

「ご理解ください」という言葉は、例文の通り状況の変更や一方的な決定などに対して相手に理解を求める場合によく使われます。

そのまま単独で使うと高圧的な印象を与えかねないため、「ご迷惑をおかけしますが」「恐れ入りますが」などの言葉をあわせて使うことが多いです。

また、例文にもあるように「ご理解ください」の後に「お願いいたします」などのやわらかい依頼の言葉を付け足すことで、直接的な表現をやわらげ理解してほしい気持ちをやさしく伝える表現にすることも少なくありません。

【「例文」で使われる敬語】
「恐れ入りますが」の意味&使い方|類語"差し支えなければ"との違いまで徹底解説


【目上◯】「ご理解いただき」の使い方

ご理解いただきの意味や使い方

「ご理解ください」に似た言葉として「ご理解いただき」という言葉を使うこともよくあります。

「ご理解」にさらに「もらう」の謙譲語となる敬語表現「いただく」を組み合わせることで、より丁寧な表現となる形です。「ご理解ください」よりもニュアンスはやわらかく、わかることをやんわりと求める言い回しとしてビジネス上のメールなどではよく使われます。

理解してもらうよう依頼する言葉なので、後ろにはお礼を伝える言葉を続けることも多いと言えるでしょう。


「ご理解いただき」を使った丁寧な例文

  • システムの仕様変更につきましてご理解いただければ幸いです。
  • 打ち合わせ日時の件、弊社で決定させていただく旨ご理解いただきありがとうございます。
  • 商品搬入の注意事項は以上です。ご理解いただければ助かります。
  • 議事録は×日までに提出します。ご理解いただければ幸いです。
  • 割引率を下記の通りとさせていただきます。ご理解いただければ幸甚に存じます。

「ご理解いただき」という言葉は、「ご理解ください」と同じような状況で使うことが多いです。

ただし「ご理解ください」よりは以来のニュアンスがやわらかく、自分が一歩下がって相手にわかるよう求める姿勢が前面に出た表現と言えます。

理解してもらうよう相手にお願いしたいタイミングで使うため、相手に対する尊敬の気持ちと理解を求める気持ちとの両方を敬語表現によって同時に伝えられるでしょう。後ろに「お願いいたします」などの言葉を付け足すケースが一般的です。

【「例文」で使われる敬語】
「幸いです」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!

「幸甚に存じます」の意味とは?|正しい使い方から類語まで解説します

「弊社」と「当社」の使い分け方|シーン別に使える敬語を解説!


【目上◯】「ご理解賜りますよう」の使い方

「ご理解賜りますよう」の使い方

「ご理解ください」と意味は似ていますが、より丁寧な表現としてビジネスシーンで使われるのが「ご理解賜りますよう」という言葉です。

立場や事情をわかるという意味を持つ「理解」に、「~する」の謙譲語である「~賜る」を付け足すことで、丁寧さが強まる敬語表現となります

相手に対してへりくだりながら理解を求める姿勢を伝える言葉で、目上の人から許可を得たり、クレームや謝罪をするといった場面で使われることが多い言葉です


「ご理解賜りますよう」を使った丁寧な例文

  • 今回の一連の事件につきまして、弊社としては一切の責任を負いかねます。何卒ご理解賜りますようお願いいたします。
  • この度はお手数をおかけする形となりますが、どうぞご理解賜りますようお願い申し上げます。
  • 2月第3週は休暇をいただくことになりました。ご迷惑をおかけいたしますが、ご理解賜りますようお願いいたします。
  • 営業時間の変更は下記の通りでございます。何卒ご理解賜りますようお願い申し上げます。
  • 作業工程をわかるようにまとめてメールで送りました。ご確認の上ご理解賜りますようお願いいたします。

例文からもわかるように、「ご理解ください」よりも丁寧さが強い「ご理解賜りますよう」という言葉は、相手と自分の立場に差がある場合ほどよく使います。

単に事情や立場をわかるようお願いするだけであれば「ご理解ください」でも問題ありませんが、相手のほうが自分よりも強い立場だと、自分がへりくだって理解してもらうようお願いしなければならないからです

例文にもありますが、取引先や顧客といった目上の人に納得してもらいたい、クレームを受けて謝罪し受け入れてもらいたいといった場面では、丁寧な敬語表現である「ご理解賜りますよう」を使うことは多いでしょう。

【「例文」で使われる敬語】
「賜る」の意味/使い方|目上に送るビジネスメールの例文までご紹介!


「ご理解」と「ご了承」との違いとは?

ご協力の類語④ご了承の意味とは

「ご理解」と混同されがちな言葉として「ご了承」という言葉があります

「ご了承」も「ご理解」と同じく、こちらの立場や事情を汲み取ってもらいたいとお願いする場合に会話やメールの中で使いますが、相手からの意見や反論は求めていません。

提案したことや進めていることについて納得してほしい、そのまま受け入れてほしいという気持ちが含まれています。もし相手が違う意見を持っていたとしても、こちらの主張は受け入れてもらいたいという意味が強いです。

また、「ご理解」がすでに起きたことや今進行していることについて理解を求めているのに対し、「ご了承」はこれから始めることに対して理解を求める際に使う言葉でもあります。


「ご了承」を使った例文

  • 以下の通り変更させていただきました。ご了承くださいませ。
  • ご依頼いただいた件は恐縮ながらお受けできません。何卒ご了承くださいませ。
  • 最終回答までに一週間ほどかかる場合がございます。ご了承ください。

【参考記事】「ご了承」の意味や使い方を徹底ガイドします!


「ご理解」と「ご容赦」との違いとは?

「ご理解」と「ご容赦」との違いとは?

「ご容赦」という言葉も、例文からわかる通り「ご理解」と似たような意味合いで使われることが多いです。

「容赦」とは、許す、許して受け入れるという意味を持ちます。「ご理解」よりも許可を求める意味合いが強く、自分に過失があったり相手より不利な立場に立っている場合に使うことが多いでしょう

例文のように、丁寧語「ください」を付け加えて「ご容赦ください」という使い方が一般的で、自分の過失を大目に見てほしい、弱い立場である自分を受け入れてほしいなどの意味を含んで使います。


「ご容赦」を使った例文

  • 先日の工事中止の原因は引き続き調査中です。工事再開までもう少しお時間がかかります点は何卒ご容赦ください。
  • 後日詳しく担当者より説明させていただきますので、本日は何卒ご容赦くださいますようお願いいたします。
  • 私どもで対応できるのはここまでが限度でございます。どうぞご容赦くださいませ。

【参考記事】「ご容赦ください」の意味から正しい使い方までをまとめました


「ご理解」と言い換えできる類語一覧

ご理解の類語① ご了解

ご理解の類語①ご了解の意味とは

「ご理解」の類語として知られているのが「ご了解」という言葉です。読み方は「ごりょうかい」となります

受け入れて理解するという意味を持つ「了解」に、丁寧な敬語表現となる接頭語「ご」を付け加えることで、上司にこちらの立場や事情を汲んで理解してほしい、受け入れてほしいといったケースを含め理解を求める気持ちを会話やメールで伝える際に使います。

「ご理解」よりは理解の求め方は浅く、こちらの主張をそのまま受け入れてもらいたい場合に使うことが多いでしょう。

「ご了解」の使い方

  • 調査結果を踏まえて対応いたします。ご了解ください。
  • 来週開催予定だった会議は現場対応のためいったん延期いたします。何卒ご了解くださいませ。
  • 請求書の仕様が下記の通り変更となりました。各社ご了解の上ご対応いただだきますようお願い申し上げます。

【参考記事】「了解」は目上の人に使える?言い換えできる類語もご紹介!


ご理解の類語② ご勘弁

ご理解の類語②ご勘弁の意味とは

「ご理解」の類語のひとつである「ご勘弁」も、ビジネス状の会話やめメールの文章でよく使う言葉でしょう。読み方は「ごかんべん」です。

「勘弁」という言葉は、失敗やそれにともなう不都合を許すという意味が含まれます。「ご理解」が単に自分の立場や事情を汲み取ってほしいという気持ちを伝えるのに対して、「ご勘弁」は許可を求める気持ちがより強い言葉です。

上司など目上の人に対して使うものであり、目下の人には使いません。またメールではあまり使わない傾向にあります。許可を得る言葉としては「ご容赦」よりももっと強い表現で、許可というよりは懇願に近いニュアンスがあることを例文からも確認しておきましょう。

「ご勘弁」の使い方

  • その件につきましては何卒ご勘弁くださいませ。
  • これ以上の取引条件の譲歩は弊社にとって大変厳しいものでございます。何卒ご勘弁のほどお願いいたします。
  • 至急新しい商品と交換いたしますので、どうぞご勘弁ください。

ご理解の類語③ ご承知

ご理解の類語③ご承知の意味とは

「ご理解」の類語として「ご承知」もよく知られている言葉です。読み方は「ごしょうち」です。

「承知」とは「知る」の敬語表現で、認めて覚えておいてほしいというニュアンスが含まれています。納得や理解をしてほしいという意味だけでなく、どちらかというと知っておいてほしい、記憶にとどめておいてほしいという意味合いが強いです。

「ご承知おきください」など、後ろに丁寧語である「ください」をつけた使い方が一般的でしょう。

「ご承知」の使い方

  • 納期の回答は平日のみとなりますことをあらかじめご承知おきください。
  • この件でお手数をおかけすることも多いかと思いますが、何卒ご承知おきくださいますようお願いいたします。
  • 営業時間は午後7時までとなっておりますので、ご承知おきくださいませ。

【参考記事】「ご承知おきください」の使い方ガイド。例文から類語まで分かりやすく解説します


ご理解の類語④ お含みおき

ご理解の類語④お含みおきの意味とは

「ご理解」の類語のひとつである「お含みおき」もビジネスシーンではよく使われる言葉です。

「含みおく」という言葉は、自分の心のうちに秘めておくというニュアンスが強いですが、相手に対して使う場合は「心の中に留めておいてほしい」「事情を察してほしい」というお願いの気持ちを伝える意味が強くなります

また、例文を見てもわかるように、お願いを強く主張して念を押すというニュアンスもあるので、依頼していながらもやや強い言い方と言えるでしょう。

相手に不快感を与えかねないため、上司など社内の人にだけ用いるなど使い方には注意が必要です。また、メールではあまり使わない表現と言えます

「お含みおき」の使い方

  • ご注文後の返品はお受けしかねます。ご含みおきくださいませ。
  • 天候不順のため商品の発送が遅れております。通常より数日納期がかかる可能性があります点をお含みおきください。
  • ご来社の際は部長代理である私が対応させていただく可能性がありますので、お含みおきくださいませ。

【参考記事】「お含みおきください」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!


▷次のページ:「ご理解」の英語表現

よく一緒に読まれる記事

関連する記事