"不徳の致すところ"の意味/使い方。類語&丁寧な例文|ビジネス敬語ガイド

長谷川大輔 2018.09.01
自分の振る舞いによって起こした失敗などを表す表現、不徳の致すところ。敬語を含む表現なため、非常に厳正な場での謝罪で使われる言葉になります。今回は、不徳の致すところの意味から使い方、目上の人に使える例文、言い換えできる類語まで徹底解説。注意点まで確認しておきましょう!

「不徳の致すところ」の意味とは?

不徳の致すところの意味とは

「不徳の致すところ」とは、不徳+引き起こすの意味の「致す」+事柄を表す「ところ」が合わさった表現で、「自分の悪い行動や立ち居振る舞いによって引き起こした事柄」という意味の謙譲語表現です

ビジネスシーンでは、自分の行動によって相手に何か不利益を与えてしまった時など、主に謝罪するシチュエーションで使用されます。


「不徳」の意味とは?

「徳」とは、善い行いや人としてふさわしいふるまいなどを指します。

善い行いをすることを「徳を積む」とも言い、人から信頼を持たれている状態を「人徳がある」、人として歩むべき道やモラル、模範的な行いを「道徳」、という様な使い方もします。

「不徳」とは、徳ではない、つまり善から背いた悪い行いや、人の道から外れた態度をしたことを指します。ビジネスシーンにおける「不徳の致すところ」の指す「不徳」とは、自分自身がしてしまった悪い行いや、人の道に外れたような対応を意味します。


「致すところ」の意味とは?

「致すところ」の「致す」は、「する」の謙譲語「いたす」ではなく、引き起こすという意味の動詞「致す」です。事柄という意味を指す「ところ」が付いています。

つまり「(私が)引き起こしたこと」といった意味になります。「不徳の致すところ」全体で「私の悪い行いが呼んだ事柄」「私のモラルに反した行動が引き起こしたこと」などのニュアンスを含んだ表現になります。

ビジネスシーンの中でも、謝罪とともに反省の意味を込めた気持ちを表現する時に「私の不徳の致すところです」という使い方をします。


「不徳の致すところ」の正しい使い方を解説

不徳の致すところの正しい使い方

「不徳の致すところ」とは、自分自身が行った悪い行動によって、多くの人に迷惑をかけてしまった時に、反省の気持ちを込めて多くの人を対象にお詫びをする際にビジネスシーンで使用されるフレーズです

例えば、政治家が贈収賄などの不道徳な行動を行い、公の場での謝罪会見をする時にも、例文として「私の不徳の致すところです」と使用されます。

「不徳の致すところ」は一語だけで自分自身が悪行を行い、人に迷惑をかけたことを謝罪できるフレーズなため、細かい状況説明のできない公の場や、ビジネスメールや文書でのお詫びの言葉としても良く選ばれているのです。


「不徳の致すところ」の例文とは?

  • この度の不祥事は、全て私の不徳の致すところです。
  • 今回の事件は全て、私の不徳の致すところであります。
  • 政治家でありながら、このようなことを起こしてしまい、不徳の致すところでございます。
  • 全て私の不徳の致すところです。誠に申し訳ございませんでした。
  • 私の不徳の致すところであり、反省しております。
  • 私の不徳の致すところにより、多くの方にご迷惑をおかけしたことを深くお詫び申し上げます。
  • 全て私の不徳の致すところでございます。大変申し訳ありませんでした。

例文は「この度の○○は」と、状況を説明した上で「不徳の致すところ」と謝罪するフレーズとして使用します。

また、「政治家でありながら」「一社会人でありながら」など、自分の立場にふさわしくない悪行をして迷惑をかけたとき、「申し訳ございませんでした」「深くお詫び申し上げます」など、謝罪の気持ちを前面に出したい時はお詫びのフレーズと共に表現する使い方もあります

また、今回の自分の行いについての反省の気持ちを込めたい時は「反省しております」と後に付けられます。

例文の「不徳の致すところであります」「不徳の致すところでございます」と語尾を丁寧語にすることで、より丁寧な気持ちを込めることができますが、ビジネスシーンの状況によっては仰々しく感じられたり、回りくどい印象を与えてしまったりする可能性があるため、使う状況を見極める必要があります。

【「例文」で使われる敬語】
「申し訳ございませんでした」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!

「お詫び申し上げます」を使った例文集|言い換えできる類語まで解説します

「申し訳ありませんでした」って目上に使える敬語?正しい使い方を例文付きで解説


【不徳の致すところの注意点】軽々しく使わない。

不徳の致すところを使う注意点

「不徳の致すところ」は、自分自身が人の道やモラルから外れるような行動をした上で、多くの人に迷惑をかけてしまった時のお詫びや反省の気持ちを込めた使い方がされる表現です。

政治家の不祥事やビジネスシーンでも企業の事件など、重大な行動に対して使用されます。そのため、書類上で1ヶ所だけ誤字があったり、日報のデータが少し間違っていたりなど、業務上での小さなミスで簡単に使うのには向いていません

逆に、小さなミスで「不徳の致すところです」と軽々しく使ってしまうと、逆にお詫びや反省の気持ちがないのではないか、と判断される恐れも。「不徳の致すところ」は、非常に丁寧な表現のため、ビジネスシーンでのが正しい使い方を心がけましょう。


「不徳の致すところ」の言い換え類語とは?

不徳の致すところの類語① 私の責任です

不徳の致すところの類語①私の責任です

「不徳の致すところ」の類語に、「私の責任です」があります。自分に非があることを全て認めて、責任の所在を明確にするときに言い換えられます

部下の不祥事に対して、「全て上司である私の責任です」と言う時や、工場でのデータ改ざんや表示偽装が発覚した時に、工場長や社長が「全て私の責任です」と述べるなど、直接の原因が自分自身でない時も「自分のせいである」と主張できます。

公の場で、自分自身の悪行をお詫びや反省の意味を込めて謝罪したい時、「全て私の責任です」という言い回しも使われますが、「不徳の致すところです」よりも、やや軽々しく幼稚な印象を与えてしまいがちですので、事がより重大な場合は使用を控えましょう。


不徳の致すところの類語② 私の責任でございます

不徳の致すところの類語②私の責任でございます

「私の責任です」の語尾をより丁寧な「ございます」に変化させたのが「私の責任でございます」です

「私の責任です」よりも、丁寧な印象を与えられますので、公の場のお詫びの言葉としても言い換えできます。

また、公の場では「不徳の致すところです」ばかりを使うと、回りくどい印象を与えてしまいます。そのため、謝罪が長い時間にわたる時は、類語である「私の責任でございます」を併用するとスマートな印象になります。


不徳の致すところの類語③ 自分の非を認めます

不徳の致すところの類語③自分の非を認めます

「自分の非を認めます」も、「私の責任です」「私の責任でございます」と同じく、自分のせいであることを認める表現です。

「不徳の致すところです」の類語として言い換えできますが、「自分の非を認めます」だけでは、自分の悪行を認めるのみにとどまってしまうため、相手に謝罪と反省の気持ちを伝えるために必ず「申し訳ありませんでした」「深くお詫び申し上げます」などのお詫びのフレーズと一緒に使うようにしましょう

なお、「私の責任でございます」と同じく、類語として「不徳の致すところです」と併用して言い換えも可能です。


「不徳の致すところ」につける謝罪の敬語表現とは?

「不徳の致すところ」は、自分の責任だと伝えられる言葉ではありますが、謝罪の意味が込められている訳ではありません。

そのため、「不徳の致すところ」を使う際は、必ず謝罪をあ笑わす敬語表現を追記しましょう。

  • 大変申し訳ございません
  • お詫び申し上げます/お詫びいたします
  • 謝罪申し上げます/謝罪いたします
  • 陳謝申し上げます/陳謝いたします
  • 反省しております
  • お詫びの言葉もございません

今回は、ビジネスシーンでも多く使われる謝罪の敬語を6つピックアップ。謝る表現にも使って良いタイミングと悪いタイミングがあるため、必ずチェックしておきましょう!


不徳の致すところに続く謝罪の敬語① 大変申し訳ございません

不徳の致すところに続く謝罪の敬語①大変申し訳ございません

「不徳の致すところ」は、お詫びのフレーズと併用して使うことで、自分の行いによって迷惑を欠けてしまった人に対して、謝罪の気持ちを込められます

「不徳の致すところです。大変申し訳ございません」とつけることで、改めて「自分の悪行によって迷惑を欠けてしまい、本当に申し訳なかった」とお詫びをする表現になります。

口頭での表現のほか、メールや文書で謝罪をする時は「この度の不祥事は弊社の不徳の致すところです。ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません」と、冒頭のフレーズとして使用できます。

「大変申し訳ございません」の使い方

  • 私の不徳の致すところです。大変申し訳ございません。
  • この度の不祥事は、全て上司である私の不徳の致すところです。多大なるご迷惑をおかけし、大変申し訳ございません。
  • 大変申し訳ございません。弊社の不徳の致すところでございます。

【参考記事】「申し訳ございません」の意味から正しい使い方までをまとめました


不徳の致すところに続く謝罪の敬語② お詫び申し上げます/お詫びいたします

申し訳ありませんでしたの類語②お詫びいたします/お詫び申し上げますの意味とは

「不徳の致すところ」に続く謝罪の敬語に「お詫び申し上げます」または「お詫びいたします」があります。

謝罪する意味の動詞「詫びる」に敬語の接頭語「お」を付けて「お詫び」に、謙譲語表現の「申し上げる」または「いたします」がついた表現で、目上の人に対して敬意を表しながら謝罪する使い方をします。そのため、「不徳の致すところにより、深くお詫び申し上げます」と相手に敬意を払いながらも、反省と謝罪の気持ちを込めたい時に使用されます

なお、「お詫び」+「申し上げる」の申し上げるは、「言う」の謙譲語ではなくお詫びする、などの同時に付随する謙譲語のため、二重敬語ではありません。「お詫びいたします」は、「お詫びする」の謙譲語表現です。

「お詫び申し上げます/お詫びいたします」の使い方

  • 問題が予測できなかったのは、私の不徳の致すところです。ご迷惑をおかけし、深くお詫び申し上げます。
  • この度の製品リコールは、弊社の不徳の致すところでございます。お客様には多大なご迷惑をおかけしておりますことを、深くお詫び申し上げます。
  • 私の不徳の致すところにより、貴社業務に多大なる損害を与えてしまいました。謹んでお詫びいたします。

【参考記事】「お詫び申し上げます」の使い方|言い換えできる類語から例文まで解説します


不徳の致すところに続く謝罪の敬語③ 謝罪申し上げます/謝罪いたします

不徳の致すところに続く謝罪の敬語③謝罪申し上げます

「謝罪申し上げます」「謝罪いたします」とは、相手に対して「ぜひ謝らせてほしい」、といった気持ちが込められたお詫びのフレーズです

少しでも相手に不具合をもたらした可能性がある場合には、「誤解を与えてしまったようでしたら、謝罪申し上げます」のように使用します。

「不徳の致すところ」と一緒に使う場合は、「○○でしたら、謝罪いたします」または「○○によってご迷惑をおかけし、謝罪申し上げます」、と謝罪の要因や可能性について言及するフレーズとして使用し、「この度は私の不徳の致すところで、ご迷惑をおかけし誠に申し訳ございません」と、続けます。

「謝罪申し上げます/謝罪いたします」の使い方

  • この度は弊社製品によってご迷惑をおかけしたことを謝罪申し上げます。弊社の不徳の致すところにより、誠に申し訳ございませんでした。
  • 誤解を与えてしまったようでしたら、謝罪いたします。全て私の不徳の致すところです。謹んでお詫び申し上げます。
  • まずはこの度の不祥事について謝罪申し上げます。私の不徳の致すところにより、ご迷惑をおかけし大変申し訳ございません。

不徳の致すところに続く謝罪の敬語④ 陳謝申し上げます/陳謝いたします

不徳の致すところに続く言葉④陳謝申し上げます

「陳謝」とは、ただ謝るのではなく何故こうなったかの具体的な理由を述べて謝ることを指します。

「陳謝する」の表現は、主に文書で「社長が不祥事を陳謝」などの使い方をします。自分で「陳謝申し上げます」または「陳謝いたします」と使うときは、理由をきちんと述べた上で謝罪を行う場のみで使うのが一般的です

プレスリリースやメールなど、不具合や不祥事に至った原因や理由をきちんと述べた上で謝罪する場で、例文として「この度の○○について陳謝いたします」と理由を述べてから「不徳の致すところ」と謝罪のフレーズと一緒に使用します。

「陳謝申し上げます/陳謝いたします」の使い方

  • 弊社の不徳の致すところにより、この度の事件について改めて陳謝いたします。事件の原因となったのは製造ラインにて改ざんがあったためです。
  • パワハラ問題について陳謝いたします。社長からの会見通り、全て上層部での組織ぐるみによる行動でした。弊社の不徳の致すところでございます。
  • 私の不徳の致すところにより、ご迷惑をおかけし申し訳ありません。この度のシステム障害について改めて陳謝申し上げます。

【参考記事】「陳謝」の使い方ガイド。例文から類語まで分かりやすく解説します


不徳の致すところに続く謝罪の敬語⑤ 反省しております

不徳の致すところに続く謝罪の敬語⑤反省しております

「反省」とは、自分の行動を省みることのほか、自分の行動で悪かった点を振り返り、改善しようとすることを指します。

そのため、「反省しております」は、自分の行った悪行を省みた上で、今後改善していきます、という気持ちを込めたフレーズです

「私の不徳の致すところです。反省しております」で、自分のせいで迷惑や不具合を引き起こしたことを省みて、今後改善していく気持ちを相手に伝えたい時に使用します。

「今後このようなことがないようにいたしますので~」など、具体的な改善策の内容を次に続けます。

「反省しております」の使い方

  • 私の不徳の致すところです、反省しております。
  • 私の管理不足により、今回の不祥事となってしまったことを深く反省しております。全て私の不徳の致すところでございます。
  • この度の不祥事は、チェック体制の甘さによって引き起こされたため、事前に防げた問題と理解し、深く反省しております。弊社の不徳の致すところで、関係各所の皆様に多大なるご迷惑をおかけし、誠に申し訳ございません。

不徳の致すところに続く謝罪の敬語⑥ お詫びの言葉もございません

謝罪の敬語表現④お詫びの言葉もございません

「お詫びの言葉もございません」とは、相手に対して言葉を尽くして謝っても足りないくらい、強く申し訳ない気持ちを持っている状態である気持ちを込めたお詫びのフレーズです。

「申し訳ありません」などのお詫びの類語に比べて、より相手に対する深い申し訳のなさを表したい時に使用します

「不徳の致すところで、お詫びの言葉もございません」の使い方は、自分の悪行のせいで相手に不具合や迷惑をかけた状態で、より深い謝罪の気持ちを込めてお詫びしたい時に使います。

「お詫びの言葉もございません」の使い方

  • 傷害事件によってご子息をけがさせてしまったのは、私の不徳の致すところです。お詫びの言葉もございません。
  • 弊社の不徳の致すところにより、安全性の確認できない製品を出荷してしまい、お詫びの言葉もございません。
  • この度の事件は弊社の不徳の致すところでございます。全くお詫びの言葉もございません。

「不徳の致すところ」の英語表現

「不徳の致すところ」の英語表現
  • It's my fault.(私の責任です)
  • I take full responsibility.(自分のせいです。責任はすべて取ります)
  • The fault lies at my door.(この過失は私に非があります)
  • I am solely to blame for it.(全て私の不徳の致すところです)
  • It is all due to my lack of discretion.(全て私の不徳の致すところです)
  • Everything about me is bad.(私が全て悪いです)

英語の"fault"には「過失」や「責任」という意味があります。"It's my fault."で「自分のせいです」「私の責任です」と日常会話でもビジネスシーンでも、自分の行いを認める使い方ができます。

"It's my all fault."で、「全て私の責任です」と強調する表現や、"The fault is mine."で「責任は私にあります」という使い方も可能です。


「不徳の致すところ」を用いれば、誠意の伝わるお詫びが表現できます。

「不徳の致すところ」の持つ意味や正しい使い方、類語や英語の例文についてご紹介しました。

道徳から外れるような行為をしてしまった場合、政治家なども多用する「不徳の致すところ」ですが、使い方を間違ったり、使う状況を見誤ったりすると、逆に相手に悪い印象を与えることに繋がります。

お詫びのフレーズとして、ビジネスの上で正しい状況で使えるように確認しておきましょう。

【参考記事】「申し訳ありません」の使い方を例文付きで分かりやすく解説!

【参考記事】「申し訳ありません」と「申し訳ございません」の違いとは?

【参考記事】「ご容赦ください」の使い方|言い換えできる類語から例文まで解説します

よく一緒に読まれる記事

関連する記事